用務員さん

わしが持っているギャグ漫画で「燃える!お兄さん」という作品がある。
週刊少年ジャンプで連載されていた漫画で、当時かなり人気があった。
内容としては、常識はないがパワーのある「おにーさん」こと、国宝憲一が巻き起こす日常を書いたギャグ漫画である。
終盤がめちゃくちゃになってしまったり、単行本の作者のコメントがなんだかものすごく上からの目線で書かれていたりするのが玉に瑕だが、ポキール星人やダック君や父ちゃんなど、脇を固めるキャラクターの面白さが秀逸であった。
ただ現在、インターネットの情報のみでこの漫画を語ろうとすると(あるいは作品に関する知識が漫画そのものではなくネット上の情報に偏っていると)、あるひとつの事件に収束する。
それが「少年ジャンプ回収騒ぎ」である。
 
この事件は「燃える!お兄さん」の「サイボーグ用務員さん」の回で「用務員」という職業に対して職業差別的な表現がされたという事件である。
マスコミにも広く報道されたらしく(わしが漫画を集めたのはこの事件よりもずっと後で、事件のことを知ったのは結構最近)、ジャンプが自主回収するほど大きな反響を呼んだためネット上ではこの事件を取り上げているサイトも多い。
この事件を語るサイトが、漫画の面白さを語っているサイトよりも多いような具合なので、ネットだけでこの漫画について知ろうとするとどうしてもこの事件のことばかりクローズアップされ、「差別漫画」とか「ひどい漫画」という印象を持つことになってしまうだろう。まあ、差別とは別の意味で過激な漫画なので、まともに読んでどう意見を持つかは微妙なところではあるが。
 
事件のことについて触れているサイトはいくつかあるが、その中で一番よいと思ったのはザッツ・学校用務員というサイトである。
このサイトでは問題となった「燃える!お兄さん」の回をpdfで読むことが出来る。実際の作品を読んでどこに問題があったのかを考えることが出来るのだ。
 
わしが実際に作品を読んでみて感じたのは、実際の漫画と批判記事のギャップである。
もちろん漫画の内容としては「用務員」という仕事を「教師」よりも下においた表現に問題はある。(校長の「すまんが用務員でもやっててくれたまえ」という発言や「なんでこんなことしなきゃならねーんだ ちきしょー」という発言。)
ただ、批判記事で見かける「用務員になった早見先生をおにーさんが罵倒するシーン」のコマが「用務員差別」といっていいのかには疑問がある。
これは文脈の問題である。
当のコマだけ見れば「用務員を一方的に罵倒している」という風に見ることが出来るが、正確には「教師でなくなった早見 元先生を罵倒する」シーンである。
 
これには前もって漫画内での人間関係に関する知識が必要だと思うので適当に解説。
 用務員になった早見先生はもともと教師である。
それも単なる教師ではなく、日本トップクラスの問題児である国宝憲一(主人公。通称 おにーさん)を矯正するたにサイボーグ化された教師で、矯正は基本的に強力な体罰をもって行っている、という設定である(登場当時はおにーさんに対して互角以上の強さを見せた)。
で、普段から暴力がなくともガミガミとうるさい立場(漫画内では副担任という肩書きだったが、生活指導に近い。)で、恨みのある相手の早見先生がその「教師」という肩書きと権威を失ったため、お兄さんに復讐されているのである。
別におにーさんが「用務員」に対して差別的な感情を持っているわけではないことは、3ページ目を読んでみればわかる。用務員さんが早見先生と知らないときには好意的に朝の挨拶をしているのだ(ある意味おにーさんが権威や肩書きに弱いということにはなる)。引用されたコマは「個人に対する攻撃」であって、「職業に対する蔑視」などではない。
 
確かに作品内に職業差別的表現は見られたが、多くの批判記事で引用された箇所がそれを正確に伝えていないこともまた事実である。
批判内容が正当でさえあれば、意図的な印象操作も正当になる、という考えはいただけないなあ、と思う今日この頃でした。
 
おまけ――
ちなみにこの早見先生、かなり人格に問題がある。登場当初はそこまで問題のある人間ではなかったのだが、おにーさんとの対立を過激に表現していく流れの中でだんだんと危険人物化していってしまったようである。ピンチの生徒を助けに行ったりしてたのになあ・・・・・・。
あ、おにーさんが対立する教師に凄まじい仕打ちをしていくのは初期設定の頃と変わっていない。おにーさんが中学生時のときの副担任のすぱるたん先生は、生身の人間ながらおにーさんと互角に渡り合った数少ない人間である(あらゆる手を尽くしたという感はあるが)。
ちなみにおにーさんは暴力を振るわない相手には基本的に無害なので、シリーズ終盤出でてきたごく普通の教師である清田先生が、普通の教師として至極当たり前の接し方をしたのが、おにーさんに対する最高の有効策であったのは実に皮肉である。
 
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