血統

年末年始にやった超常現象系の番組について書こうかとも思ってたのですが、あまりパッとしなかったのでやっぱりやめました。個人的にはいまさらノストラダムスの予言を取り上げたやつがばかばかしくてよかったです。

今回書こうと思ったのは、09年11月に公開されたリチャード・コシミズの動画について。テーマは「日本」というタイトルでした。内容はというと主に「日ユ同祖論」でした。

日ユ同祖論というのは、日本人とユダヤ人が共通の先祖をもっているとする考え方。ふだんから反ユダヤ的な陰謀論を唱えているリチャード氏の思想とは相容れないもので、この動画ではリチャード氏が日ユ同祖論を徹底的に批判するのかと、そう思っていました。

が、そんな個人的な予想に反して、リチャード氏は日ユ同祖論をがっちり支持。日本人とユダヤ人は遠いながらも血縁があるという話を展開しているのである。「トンデモ本の世界」などでユダヤ陰謀論を唱えながら日ユ同祖論をあわせて信じている人が結構いるという記述は確かにあったが、ここにも同様なお方が一人、である。

動画内でリチャード氏はあくまで仮説に過ぎないことを強調。講演中も「かもしれない」や「可能性がある」といった表現を多用している。しかし本人はかなり強い確信をもって主張しており、「この話は必ず猛烈に反論してくる人間がいる。彼らは利害があって反論してくる」、「仮説の領域を出ないが、優れた仮説はすべてを合理的に説明する」とも発言している。

では、どのような根拠をもって日本とユダヤの間に共通の先祖があると考えているのか、箇条書きになるが、示しておく

  1. 祇園祭に出てくる山鉾のタペストリーに旧約聖書にまつわるものがある。祇園祭り=シオン祭りだ。八坂神社はアショカ神社だ。
  2. 御柱祭とおなじまつりが古代ユダヤにある
  3. 御頭祭とアブラハムの伝説(自分の息子を神にささげるよう求められる話)はおなじ
  4. 諏訪大社の近くにある守屋山。イスラエルのある場所のことをモリヤ山という。おなじだ!
  5. おみこしはアークを模したもの
  6. 剣山の麓の神社の紋様がユダヤの燭台とおなじ
  7. 神社は最初手水場で手を洗う。ユダヤ教も水で清める
  8. ユダヤ教の幕屋は赤白の縞模様。日本のお祝いのときの赤白の垂れ幕といっしょ
  9. 山伏とユダヤの神官は似てる(頭に似たようなもの乗せてる。新館は角笛、山伏はホラ貝を吹く)
  10. 菊の十六家紋にそっくりなものがイスラエルのヘロデ門にある。
  11. 天皇家の紋章とそっくりなものがイスラエルの観光ガイドブックの表紙に載っている。
  12. 塩はユダヤでも清めの道具。ユダヤでは水行で清める。
  13. 帝とは「カド族の王」という意味だという説がある。
  14. ユダヤ人は過越の祭りでは酵母のないパンを食べる。日本人は正月に酵母のない餅を食べる
  15. マナのツボと仁徳天皇陵がそっくり
  16. キリストは実は今のイメージにあるような白人系でなく、むしろアジア系、縄文人的な顔つきである
  17. ユダヤ教には門を赤く塗ってユダヤ教徒とそれ以外を神が見分けられるようにしたエピソードがある。赤く塗られた門とは鳥居である
  18. ヘブライ文字とカタカナには類似したものがある
  19. 輿水の輿はアークを指し、水は川を意味する。すなわち自分の名前は「アーク、ヨルダン川を渡る」(そういう逸話があるらしい)を意味する。輿水とは由緒正しいユダヤの名前で、NYのえせユダヤ人がかなうはずがない

……以上。この中の最初のいくつかのもの(1~6)については、かつてテレビ東京で放送された「新説!?日本ミステリー」の前身であった、みのもんたが司会を務める2時間SP番組(数回放送)で紹介されていたものであると記憶している。

2,3年前の番組だし、見ていない放送分もあるので、もしかしたらもっと多くの項がその番組からの引用されているかもしれない。19については冗談めかして言っているので、一番最後におまけとして付けておきました。実際この講演でもTVの映像が紹介されていたが、何とも安易である。部分部分で似たような箇所があると感じさせるものもあるが、だからと言ってこれで日本人とユダヤ人が同じ祖先といわれても、説得力に欠けてしまう。ヘブライ文字とカタカナが似ているといわれても、それは見た目の問題。ヘブライ文字も表音文字で、対応する音が同じというならまだいいが、見た感じに終始してしまうのなら「同じ」とは言い難い。中には1415のような、無理やりすぎる説まである。米と小麦の食物を「酵母を使っていない」の一言で共通するものとみなすのはいくらなんでもだし、お墓と壺の形状を関連付けるのも相当強引である。

神社の鳥居やいくつかの宗教的な逸話や紋様の類似も挙げられているが、宗教そのもので見れば一神教のユダヤ教と多神教の神道では似ても似つかない。ユダヤ人の定義は「ユダヤ教を信じている人、あるいは親がユダヤ人」とされるので、宗教が似ていないというのは致命的だと思う。

そしてこの動画は日ユ同祖論にとどまらず、さらに別の要素を加えてくる。

それが「日本と朝鮮の関係」である。

リチャード氏によると日本史は7世紀ごろから「何かおかしい」ものであるとのこと(「何か」って……)。そしてリチャード氏がネットで調べた結果、「天武天皇は朝鮮人であることがわかった」とのこと。律令国家の確立、仏教信仰による肉食の禁止などの改革は外国人(である天武天皇)によって行われたというのである。

動画の中で「これらの大改革をやったのが外国人だったら?」とリチャードは聴衆に問いかけるが、まあそんなこと言われても「ふーん」としか言いようがないんだが。

リチャード氏が天武天皇に投げかける疑問点は2点存在し、「律令制が突然生まれた」「古事記に突然登場する」といった点において天武天皇が海外からやってきた人間ではないかと主張している。律令制に関しては遣隋使や遣唐使のような海外へ行った人、あるいは海外から来た人から教わる機会があったと考えられるし、古事記は神代から第33代推古天皇までの記録なので、第40代天武天皇の記述がなくても何も不思議ではないと思う。というか、そもそも天武天皇(大海人皇子)は古事記にほんの少しでも出てくるのだろうか……。

そして天武天皇が朝鮮人だとする根拠として「万葉集が朝鮮語で読める」という奇説を持ち出してくる。これは藤村由加とか李寧煕といった人たちが出した著作で主張されていることであり、かつて李寧煕の書いた「フシギな日本語」を読んだことがあるが、万葉集の歌を強引に朝鮮語で解読して性的な内容に解釈するというものであった。日本語とほかの言語が一致するという奇説は昔からいろんな言語のバリエーションで存在し、そのたびに言語学者から批判されてきた、伝統のあるトンデモである。

ともあれ、これらを根拠に天皇家には朝鮮人の血が混じっていると主張している。このような説を主張すると右翼から批判されるが、それはみな「北朝鮮系ニセ右翼」であり、朝鮮の人々が天皇家に同じ血が通っていることを知ると親近感を覚えてしまうため、それを阻止したい朝鮮総連の上部の人間が妨害してくる、のだそうである。

と、まあこの2つの説が今回の動画で語られているのだが、この動画の真骨頂はリチャード氏が動画の中で見せる民族主義的な考え方である。

冒頭にも書いたが、ユダヤ陰謀論を唱えて反ユダヤ主義を主張する一方で、日ユ同祖論を支持するということは一見して矛盾しているようにみえる。しかし、リチャード氏の話を聞いていると、そこには矛盾がないどころか、そうである必要性のようなものさえ伺えるのである。

日ユ同祖論がなぜ必要なのか?それは日本人とユダヤ人の間に序列をつけるためだろう。

リチャード氏は現在のユダヤ人に正統性はなく、天皇にこそ正統性があると主張している。ユダヤ人も日本人も長い歴史の中で混血しているが、象徴としての天皇はユダヤのコアな部分を受け継いでいるので正統性が高いとのこと。まったくもって意味不明である。「象徴としての天皇はユダヤのコアな部分を受け継いでいる」という言葉がどういう意味なのか、さっぱりである。別にユダヤ教を信仰してるわけでもなし。

また「アインシュタインの予言」を紹介。ユダヤ人であるアインシュタインが日本人を褒め称えていると大喜びしている。これについてはWikiなどでも解説されているが、田中智学という人がローレンツ・フォン・シュタイン博士の言葉として紹介したものである。さらにシュタイン博士の言葉自体が創作されたものであるだろうとの指摘もあり、日本発の自画自賛コメントである可能性が非常に高い。さらに、デービッド・ロックフェラーが来日した際に、天皇へ謁見している事実を紹介、これは正当なユダヤの血統である天皇に表敬したということらしい。

このようにアインシュタインやロックフェラーが正統なユダヤである天皇家(変な形容……)へ敬意を示す一方で、ユダヤの権威を独占したいと考えるユダヤ人がおり、そういう人が日ユ同祖論に対して攻撃を加えるのだという。ちなみにわしはユダヤ人ではないし、そういう知り合いもいない。また、第二次大戦中の京都へ原爆攻撃を仕掛ける計画が日本にあるであろうユダヤの「正統な遺産」を物理的に消すために企てられたものの、ユダヤ人内部の宗教的なわだかまりから回避されたということである。この辺に関してはこれまでの話以上に根拠は存在していない

それほどまでに日本(というか天皇家)にはユダヤの血統における「権威」が存在しており、われわれ日本人こそが正しいユダヤなのだ、そうである。リチャード氏によると四国の剣山には「聖櫃(アーク)」が眠っていることが直感的に分かっているとのこと(剣山をおとずれた時にそう感じたそうです)。そして、たとえ(すごく遠いとはいえ)血縁関係にあっても、ユダヤ人たちの陰謀は許されるべきことではなく、「正しいユダヤ」である日本人がその間違いを正す、と正義感を発揮。「聖櫃(アーク)」を剣山から掘り起こし、それを示すことでニセのユダヤ人たちを従わせ、謀略を辞めさせるのだという。

この話が本当だと、原爆使ってまで「権威」をこの世から消そうと思った連中が、「聖櫃(アーク)」を突き付けられただけでひれ伏すようである。うーん、水戸黄門みたいだな。

ちなみにリチャード氏、仏教、イスラム教、キリスト教がすべてユダヤと関係し、派生したという説もあると紹介し、こんな熱弁も振るっている。

「ユダヤの源流の源流を日本人が押えてるとしたら、やっぱりこれは世界の覇者と言ってもいいんじゃないかな」

やっぱりこの人、ユダヤになり代わって世界を支配したいんじゃないかなあ。

おまけ――

動画の中ではこんなことも言っていました

「これ(日ユ同祖論)が一番すんなりと、しっくりとくる。しっくりと来るものってのは往々にして真実に近い。特にリチャードコシミズの場合はそういった真実をかぎわける嗅覚に優れている、という風に自負しております。おそらく僕よりもそういった力をもっているひとはあまりいないと思う。」

う、う~ん。自分にとってしっくり来るものを探すのは得意そうだが、真実とはなあ……。

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