素人として、またいくらか書く気になったので

この記事では専門的な知識を抜きに、常識的な知識(+インターネット検索で調べられて、理解できたこと)の範囲でリチャード氏のツッコミどころにツッコんでおくものである。なぜなら専門知識は持っていないから。

◆四角が人工地震の証?

リチャード氏は『富士山を囲む正方形の「震源」。人工地震の明確な証拠です。』において、ブログによせられたコメントより、4つの地震の震源の座標を合わせると富士山を囲んだ正方形になると書いている。

書かれた座標は以下の4つ

静岡東部
35.3 138.7
35.3 138.8
山梨南部
35.4 138.7
35.4 138.8

これはもう「四角くなって当たり前だ」としか言いようがない。
緯度と経度がきっかり±0.1度ずつズレた4つの点があれば、それは四角形になって当たり前である。
メルカトル図法の世界地図では20度くらいの間隔で緯線と経線が格子状に引かれているが、それを0.1度間隔のサイズまで小さくしただけと考えればいいことだ。

では、この緯度と経度を基にした座標はどのくらいの誤差が含まれているか、ここに注目してみる。

件の記事に書かれた震源の座標は見ての通り緯度と経度を小数点以下1桁までの値。
つまり、小数点以下2桁以降の数値は切り捨てるか四捨五入しているということになる。
これは相当にアバウトな数値である。

たとえば小数点以下2桁目で四捨五入しているとする。
すると震源の座標が「35.3 138.7」ならば、「北緯35.2500000000000~35.3499999999999 東経138.6500000000000~138.7499999999999の範囲内のどこか」で地震が起きたということになる(『地球探検の旅』を利用すると、GoogleMapsでは緯度・経度が小数点以下13桁くらいまで出てくる)。
この誤差の範囲はどのくらいの広さかというと、「東西約9㎞×南北約11㎞」(日本のあたりだと経度は0.1度につき約9㎞、緯度は世界中どこでも0.1度につき約11㎞の間隔がある)。
面積にして約99平方㎞という相当広い範囲だ。
すなわち「35.3 138.7」を中心とした約99平方㎞の四角形の範囲内のどこで地震が起きても、データ上は「35.3 138.7」で発生したことになると考えるべきだ。

視覚で理解したければ、リチャード氏が提示した4つの震源の地図を見ればいい。
あの4つの震源を結んでできる四角形(正方形ではない)の広さが、それぞれの震源の持つ誤差の範囲なのである。

残りの3つの震源も同様に実際の震源とデータ上の震源にはかなりの差があると考えられる。
実際の震源4つの位置を調べて結んでみても、直角のみで構成された「人為的に見える」正方形や長方形にならない可能性が非常に高いだろう。

かなり大雑把に処理されたデータ上の値を4つ拾ってきて「これは絶対に自然の地震ではありません」だの「悪魔の正体見えたりぃ!」だの高らかに叫んでも恥ずかしいだけである。

 

◆過去の計画

リチャード氏は過去にあった二つの計画を持ち出してきて、今回の地震が人工地震であると主張している。

一つは1957年に核兵器による人工地震を使って地球内部について探ろうとした計画の話。
もう一つは「プロジェクト・シール」と呼ばれた爆発物によって津波を引き起こそうという実験。

1957年の人工地震は、地震そのものを兵器として使うようなものではない。
リチャード氏自身が引用してきた新聞記事にも学術的なものと書かれている。
調べてみると1957年にはネバダだけで29回にものぼる核実験が行われており、そういった核実験で発生する震動(つまり人工地震)を利用して地球の内部を探ろうというものではないのだろうか。
この「核兵器による人工地震」は攻撃目的ではないのは明らかだ(ただしその核実験は、核爆弾を運用するための貴重な知見をもたらしただろう。「地球の内部を探る」がオマケにすぎない可能性はある)。

プロジェクト・シールはニュージーランド、ファンガパラオア(Whangaparaoa)沖で行われた実験で、爆発物を使って津波を起こそうというもの。
多くの日本語のサイトで引用されている新潮45の記事では「30mの津波の発生に成功した」と語られているらしいのだが、Wikipedia英語版の記事やそこからリンクされている記事などを読むとそこまで目覚ましい成果を上げたような記述は見られない。新潮45の記事は大げさに書かれている可能性がある。

リチャード氏や他の人工地震説支持者はこれらのエピソードを「東北関東大震災が人工地震であった」という主張の補強材料として挙げているつもりのようだが、残念ながらそうはならない。

「東北関東大震災が人工的に引き起こされた地震である」ということを証明するよう求められているのであって、「この世に人工地震と呼ばれるものが存在する」ことを証明しろなどとは求められていないのだ。

過去の地震攻撃計画書や津波爆弾実験、人工地震の話をいくら持ち出してきても、東北関東大震災そのものが人工的に引き起こされたものであるということを少しも証明できないのである。

 

◆気象庁まで陰謀に

もともと、「金融ユダヤ人のしわざ」で始まった陰謀論も、今や東京電力と気象庁のふたつの組織も加えられることとなった。

東京電力が加えられた理由は、計画停電が純粋水爆の起爆に利用されているという、これまでの純粋水爆の設定を覆す陰謀論が出たためである。
純粋水爆の起爆が常温核融合からレーザー起爆式に変更された説明は特になく、リチャード氏に「計画停電になんて面倒だ、もっと好きに電気を使わせろ、そうだ!陰謀ってことにして反対しよう!」という思いつきがあったんじゃないのかと邪推したくなる。
計画停電が4・5月には実施されない情報を受け、「311地震テロ:東電、計画停電がネタばれしたので、原則廃止。」などと言っているが、4月に入っても大きい余震は既に起きているし、これからも頻発するだろう。
それらについてはあくまで「自然由来」としてシラを切るつもりなのだろうか。

そして最近では気象庁も陰謀組織に加担していることになってしまった。
理由はリチャード氏の自説を否定するデータを提示しているからである。

3月11日14時46分の大地震は最初の発表の段階ではマグニチュード7.9、震源の深さ10㎞であった。
この深さ10㎞に注目したリチャード氏は地球深部探査船「ちきゅう」が掘ったと主張していたが、現在では震源の深さは24㎞であったと判明している(マグニチュードは9.0に修正)。

これによってリチャード氏の「311人工地震説」は成立しなくなってしまった。
3月11日の地震以後の余震について唱えられていた「定点反復人工地震説」も精度の高いデータに更新された結果、同じ場所で繰り返し地震が起きたとは到底言えなくなってしまったことは、前回の記事で紹介したとおりである。

精度の低い段階のデータに飛びついて、常識と大きくかけ離れたセンセーショナルな説をぶち上げたものの、最新データの公開によって自説が維持できなくなくなってしまったため、陰謀認定しているに過ぎない。
地震が発生した直後には正直なデータを申告していたのに、あとになってあからさまなウソのデータを出すなんてあるだろうか?
ウソをつくつもりなら最初から震源の深さも震源の位置もデタラメな値を出してそのままにしておけばいいだけの話ではないか。
自分が誤っていたことを認められず、都合が悪い話を全部陰謀のせいにしてしまっている。
陰謀論者の悪癖ここに極まれりである。

自分の説を否定するデータ修正を行った気象庁をどうにか見下してやりたい気持ちで前後不覚になったのだろうか、4月13日付のリチャード氏のブログ記事『大キショーチョー:『自然地震M8なら100KM深度。311地震は人工ゆえ24KM(実は10KM?)』』では、「M8の地震では岩盤のずれが100㎞の範囲に及ぶ」という気象庁の説明を「M8の地震は震源の深さ100㎞でおきる」と豪快に誤読し、「M9.0で深さ24キロ(後で訂正された数字)っていうのは?はい、人工地震だからです。」などと上から目線で大ボケをかましている。
恥の上塗りもいいところである。

 

◆最後に、危険な遊びに警告を

天災というものは至極理不尽な偶然である。

もちろん地震と津波の発生にはメカニズムが存在して、天災が起こったのは必然であったことがのちの研究で明らかにされるのだとはおもう。

しかし、人の生死には偶然があったのだと思う。

地震が起きた時、津波が押し寄せた時にその人がどこにいたかという偶然で明暗が分けられた。

この理不尽な偶然によって多くの人間が命を落としたし、生きながらえたとしても仕事や財産や住む場所、大切な人間をなくした人間の数はその何十倍もいるだろう。

2011年3月11日14時46分。
この時間を境に多くの人間が具体的で強い悲しみ・絶望・喪失感・不安・怒りを抱くことになってしまった。
これらはいずれもやり場のない感情だ。

しかし、リチャード氏やほかの陰謀論者たち主張は、これらやり場のない感情をやり場のある感情へと矯正しようとするものである。

とても危険な行為だ。

ありもしない罪状で他者をやり場のない感情のはけ口にしようと誘っているのだから。

もうすでに陰謀論の世界に肩までに浸かってしまっている人間より、今回の震災を機に陰謀論者の言うような「世界の真の姿」があるのかもしれない、と思いはじめている人に警告しておきたい。

陰謀史観とも呼ばれるその「世界の真の姿」を事実として受け入れるということは、陰謀を企んだとされる人間を罪人とみなして憎悪の対象にすることでもある。

「世界の真の姿」が的外れなものであった時、あなたは愚かな人と周りに嗤われるだけでなく、陰謀論者の共犯という加害者であったということにもなるのだ。


《参考記事》
富士山を囲む正方形の「震源」。人工地震の明確な証拠です。
人工地震情報、ありがとうございます。
311地震テロ初心者の方へ
新刊序文より:人工地震兵器は陳腐で旧式の大量破壊兵器
あなたの頭の方が心配ですよ。現実を見てください。
311地震テロ:東電、計画停電がネタばれしたので、原則廃止。
大キショーチョー:『自然地震M8なら100KM深度。311地震は人工ゆえ24KM(実は10KM?)』
richardkoshimizu’s blogより)

経度・緯度の指定によるGoogle Earth/Google Maps/地図の起動』(「地球探検の旅」HPより)

核実験の一覧
プラムボブ作戦
Project Sael
(Wikipediaより 『Project Seal』は英語版ページ)

"Tsunami bomb NZ’s devastating war secret"
"Devastating tsunami bomb viable, say experts"
(New Zealand Herald, Eugene Bingham氏の記事より)

地震について』(気象庁HPより)

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