3つのデータ

このところの独立党の活動は停滞しているというか、前回記事を書いた時より活動内容にあまり変化がなかったり、藤島利久氏らが起こす不正選挙訴訟については全部終わってから書きたいという気持ちがあるので、大分記事を書かない状態が続いたのだが、ツイッターで書くにはちょっと長そうなネタがあったので記事にしておこうと思う。

今回はリチャード氏のブログ記事『不正選挙:新聞購読者の90%が選挙に行ったとすると….』について。

もうこの話は不正選挙陰謀論についてもいくつか批判記事を書いている坂本英樹氏(@sakamotoh)がブログの記事にもしているのでいまさらの感もあるが、書いておこうと思う。

 

◆リチャード氏の主張

不正選挙:新聞購読者の90%が選挙に行ったとすると….』に書かれたリチャード氏の主張によると、以下のとおりである。

    1. J-MONITOR」の調査によると、新聞購読者の90・0%が当日あるいは期日前に投票している。
    2. 「日本の新聞購読者は、調査によって違うが、だいたい全人口の70%前後」なので、0.7×0.9=0.63となり、国民のおよそ63%が投票を行った計算になる。
    3. 新聞を購読していない人間も投票に行っていることを加味すれば、投票率は63%を超えると考えられる。
    4. しかし公式発表では投票率は59.32%となっている。
    5. 計算が合わない以上、公式発表は偽物だ。

……とまあ、こういう論法である。

確かにリチャード氏の計算自体は間違っていないので(さすがに少数の掛け算を間違えてはいない)、一見すると大発見のように思えるかもしれないが、ここで怪しむべきは「使われている数字が正しいのか?」ということである。

このリチャード氏の説に出てくる3つの数字「公式発表の投票率」、「J-MONITORの調査」、「日本の新聞購読者は、調査によって違うが、だいたい全人口の70%前後」についてそれぞれ考えてみる。

 

◆公式発表の投票率

3つの数字のうち、このデータは最も強固である。
何しろ全国にいる有権者103,959,866 人に対して投票所の入場券を送付し、その結果「投票に来たか/来なかったか」の結果だからである。

「どの政党を支持するか/どの候補者を支持するか」という開票結果は、投票をされた民意しか反映されず、投票されなかった民意を反映することはないので「有権者の総意」とは決して言いきれないが、「投票に来たか/来なかったか」の2択に関して言えば、これは有権者の全数調査を実現しているのである。

世の中の多くのアンケートや世論調査が一定数のサンプルを母集団から抽出し、そこからでた結果から母集団全体の傾向を探ろうとしているのに対して、投票率はまさに有権者全員の意志と行動の結果そのものである。

 

◆J-MONITORの調査

J-MONITORの発表によると、この調査は3,207人の調査対象者から得た結果であるということ。
サンプルの抽出方法はランダムなものではなく、新聞購読者を対象に公募(新聞広告・モニターパネル)を行って集めたものである。

モニターパネルというのは事前に調査会社に登録をしていた個人が調査会社の要請に応じてアンケートに答えるというもので、アンケートに回答することで若干ながら謝礼がもらえるものである。

抽出方法としては偏りが出る可能性があるだろうし、あくまで有権者の中の一部の人間から得た回答なので、全数調査である投票率に比べればいまいち正確さに劣る。

もともとこの「新聞購読者の90.0%が投票に行った」というデータは、「新聞の購読者は投票率が高いので、政党は新聞広告を出せば票がたくさん取れるかもしれませんよ」という営業トークのタネにするくらいしか使い道がないのではなかろうか。
これをわざわざ記事にした新聞各社は商魂たくましいというかなんというか。

 

◆「日本の新聞購読者は、調査によって違うが、だいたい全人口の70%前後」

3つのうち最も信用のならないデータである
なぜならリチャード・コシミズ氏が個人的に設定した数値であり、その根拠はなにも示されていないからだ。

坂本氏の記事『新聞読者の投票率9割なら、新聞読書率は4割程度』で紹介されている日本新聞協会のデータでは1000人当たりの発行部数は459.1部、NHK放送文化研究所の調査結果では新聞の行為者(15分以上新聞を読む)率は41%である。

新聞を購読するのは一人1紙ではなく、一人で複数紙とる場合もあるし、家族で1紙を回読している場合もある。
また、図書館は勿論のこと、病院や美容室や食堂など様々な事業所単位で新聞は購読されていることからも、1000人当たりの発行部数をそのまま全人口における購読者の割合に適用することはできないし、15分以上読む人間の数をそのまま購読者としてカウントするのもできないだろう。
どう頑張っても推測の域から出ることはできないのだが、70%というリチャード氏の単なる印象よりははるかに参考になる。

リチャード氏は「調査によって違うが」と書いているが、果たして70%という割合を示した調査はあったのだろうか?

自分の持っている「印象」の数値と3,207人のサンプルからとった割合とを掛け合わせた結果で全数調査の数値を否定するなど、自分の感覚が何よりも正しいと言わんばかりの、謙虚さのかけらもない話である。

 

「新聞の購読者数」、「J-MONITORの調査結果」、「公式発表の投票率」のうちはっきりと示されている数値は「J-MONITORの調査結果」と「公式発表の投票率」の二つであり、「公式発表の投票率」を「J-MONITORの調査結果」で割れば、「有権者に占める新聞の購読者の割合」の推定の値を出すことはできる。

0.5932÷0.9=0.6591111111111111……≒65.91%

ただしこれは、「投票に来たのは新聞購読者だけ」という仮定の話であり、実際には新聞を購読していない人がいる以上、新聞購読者の割合はこの数値よりも低くなる。
「新聞購読者の割合は多く見積もっても65.91%」あるいは「新聞購読者の割合は65.92%未満」とまでしか言うことはできない(当然これは坂本氏の出した推定と矛盾はしない)。

リチャード氏の書いた『不正選挙:新聞購読者の90%が選挙に行ったとすると….』の記事は所詮、自分の持つ感覚と現実との間に相違があることを一切顧慮せずに、「自分の想像と現実が違う」というだけのことを数字を使ってもっともらしく見せかけているだけにすぎないのだ。

 


《参考記事》
主要6紙調査:「新聞読者の9割が投票に行った。それにもかかわらず投票率は59.32%(小選挙区)」
不正選挙:新聞購読者の90%が選挙に行ったとすると….
richardkoshimizu’s blogより)

新聞読者の投票率9割なら、新聞読書率は4割程度
坂本英樹の繋いで稼ぐBtoBマーケティング:ITmedia オルタナティブ・ブログ

2010年国民生活時間調査報告書』(NHK放送文化研究所

新聞購読率減退中、増えているのは高齢者のみ』(Garbagenews.com

8紙共同「選挙行動に関する調査」結果』(J-MONITOR

各国別日刊紙の発行部数,成人人口1,000人あたり部数,発行紙数』(日本新聞協会

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