御嶽山とノーベル賞

2014年9月27日、長野県と岐阜県にまたがる火山である御嶽山が7年ぶりの噴火をした。

現時点で56名の人が亡くなっており、戦後最悪の火山災害となっている。

この事態に対して、インターネットジャーナリスト リチャード・コシミズ氏は相も変わらず陰謀論を展開。
最新の情報技術を駆使して、呪術的思考を喧伝するのに邁進している。

今回は御嶽山の噴火と2014年ノーベル賞に対するリチャード氏の言動について紹介する。

 

◆御嶽山噴火

地震・雷・火事・親父、すべてを陰謀論で説明しかねない高みに到達しているリチャード氏。

御嶽山噴火が報じられるや否や、『御嶽山噴火情報を求めます』と情報収集を開始した。
なんで「ジャーナリスト」を名乗る人が、一般のユーザー(それも現場で被災した人とかではない)から情報を募るのか全く意味不明である。
集まるのはメディアが発信した情報と、それをもとに妄想を膨らませたような書き込みくらいだろう。

リチャード氏の積極的だか受動的だかよくわからない情報収集の結果として書かれた記事が『「(噴火時に)戦車のキャタピラみたいな音がして、重機か何かが入ったと思った。 』という記事。
「戦車のキャタピラみたいな音がした」という比喩表現ひとつで自衛隊が火山に何かしてしまったのではないかという展開になるのだからたまらない。
もちろんこれは「音」に関する証言のみで、現場で戦車を見たとか写真に撮ったとかいう話ではないし、そもそも戦車があったとしてどうやって噴火させたのか一切不明である。

リチャード氏はこの後軌道修正をし、『噴火の前日から、自衛隊車両が現地に向かっていたのかどうか? 』の記事では「戦車が噴火を起こしたとは毛頭思っていません」などと書いている。
本当に「毛頭思っていない」のなら、そもそも「もしかして陸自さん、何かやらかしましたか?」なんて文章を書いていないだろうから、やはり容疑者扱いしていたのだろう。
その後有力な情報が入らなかったか、戦車から噴火をうまくつなげられなかったかしたため方針を変更し、「自衛隊が噴火を起こした」から「自衛隊が噴火を事前に知っていた」という話に替えたと思われる。

この後も噴火に関するRK理論はおなじみの核兵器万能論へと移行していく。
9.27御嶽山噴火の数日前に御嶽山周辺の市町村の放射線量が上昇しているようです。』では、放射線量が上がったという話を持ち出しているが、それを噴火とどう因果関係を結びつけたいのかをぼかした書き方である。
おなじみ「核兵器で噴火を促した」といいたいのだろうか。
核兵器で噴火を起こすメカニズムについて全く説明がないし(人工地震説レベルのインチキ理論さえなし)、そもそも放射線量が上がったというのが噴火の数日前
核兵器が使われた結果噴火が起こったのなら、むしろ噴火当日以降に放射線量が上がっていなければおかしいように思えるのだが、そんなことはおくびにも出さず、陰謀の実行犯へと話がシフトさせていった。

御嶽山:「死亡者の半数近くが邪教統一教会関係者だったらしいです」』の記事では、統一教会の信者が「変な爆弾の設置作業」をやっていたのではないかという疑惑を取り上げ、『●御嶽山噴火、保険金を全額支払い』の記事では、火山被害の犠牲者に保険金が満額支払われることを挙げて、統一教会が保険金を目当てにしていたかのようなことを書いている(個人の生命保険で回収できるほど安い陰謀なんだろうか?)。

この、「被災者の半数近くが統一教会関係者だったらしい」という話のもとになった「井口さんのブログ」というのはおそらく井口和基氏の書いた『「御嶽山が怒った!?」:「山登り」は勝ち組の証明!?統一教会が結界を壊す!』という記事を指しているのではないかと思われるが、この記事は実にひどい内容である。
このブログ記事では人工噴火説を取り上げたりはしていないが、被害者の方々が有名企業に勤めていたことや、被害にあった少女が統一教会信者ことを挙げて、「怒りとして霊峰御嶽山が噴火した」などと書いており、その心の貧しさに愕然とさせられる。

統一教会の信者がなにがしかの組織的な犯罪に加担したとしても、それは人の定めた法律によって罰せられるべきだろう。
くわえて、少女がなにがしかの組織犯罪に加担したとは考えにくく、また統一教会の信者であることを自らの意志で選んだ可能性すら低い。
そんな少女の身に降りかかった不幸を「天罰」で片づけており、「統一教会信者=悪」という単純な二元論をこじらせて、まっとうにものを考えられなくなっているのではないだろうか。

リチャード氏はその一歩手前でどうにか踏みとどまっているらしく、「子供に罪はない。冥福を祈ります」(『御岳山で死んだ少女、合同結婚式で生まれた子みたいですね 』)という一文を書いている。
だがそれでも「天罰だった」という発想それ自体は捨てることはできず、「邪教の異常者が16匹も山頂で朝鮮太鼓叩いて変質者踊りをやったので、山の神がお怒りになったのでしょう」などと結んでいる。
もちろん、「統一教会信者が山頂で太鼓をたたいて変な儀式をしていた」という根拠はリチャード氏のブログにも、リンク先の記事にも存在していない。

「子供に罪はない」としながらも、この災害を天罰だなんだという発想と結びつけるのをやめられないというのは、彼ら陰謀論者があらゆる物事を何者かの意思によるものと解釈してしまうためだろう。
噴火を起こしたのが「金融ユダヤ人」か「山の神」か、主語が入れ替わっても言っていることはほぼ変わらない。
神話も陰謀論も、根源にあるのは同じものであるということがよくわかるケースである。

 

◆2014年ノーベル賞

2014年、ノーベル物理学賞を日本人が受賞することとなった。

あの青色LEDを発明した天野浩氏、赤崎勇氏の2名と、現在米国籍となっている中村修二氏である。

2012年に受賞した山中伸弥氏のiPS細胞と同じくらい、どれだけすごいものを作ったかが明白で、しかもiPS細胞の実用化がもうちょっと先なことになりそうなのに対して、LEDはすでに実用品として世界中で活躍しているのである。

こんなにわかりやすくてすごい日本の技術開発について、病的なまでの愛国者であるリチャード氏はというと、非常に反応が薄い

受賞を賛美するような記事はなく、『ノーベル賞便乗の安倍首相 研究者の意欲削ぐ「特許改革」画策』でちょっと触れた程度である。
このほか『「日本国民」が、ノーベル平和賞の受賞予測下馬評の一位になっていたわけですが….』と『村上春樹氏がノーベル文学賞受賞を逃した理由については、2012.10.16のRK記事を参照下さい。』、『5秒で忘れるニュース』の3つの記事でノーベル賞に触れており、一番関心が強かった(それでも2記事)のが「憲法9条を守る日本国民」であったことがわかる。

リチャード氏によれば、「憲法9条を守る日本国民」が受賞を逃したのは、平和賞を受賞したら日本が戦争をできなくなるからだという。
また、マララさんが平和賞を受賞することで、イスラム過激派を攻撃することを正当化するためだという。
今年のノーベル平和賞が決定する前から、2009年にノーベル平和賞をもらったオバマ大統領がイスラム国を攻撃しているんだが、その辺は全く気にしていないようである。

そして村上春樹氏については、明らかに記事の使い回しである。
書くことが特に思いつかなかったけど、毎年この話題には触れておきたいということなのだろうか。

 

◆御嶽山噴火のおまけ

御嶽山噴火について流れた陰謀論の一つで、リチャード氏も取り上げたものに『ミゾーユー君が、御嶽山噴火で亡くなった方々に対して「激励申し上げます」と発言。』というのがある。
NHKのニュース番組に出た麻生太郎氏が、御嶽山噴火で亡くなった方々に対して「激励申し上げます」と発言していたという。

これについてはすでに検証がされており、デマであったことがわかっている。

麻生太郎が「噴火で亡くなった方に激励申し上げます」と発言?ネットで話題に~実際の発言はこうだった(1分11秒)

麻生氏が激励申し上げたのはあくまで「被害にあわれた方」全般を対象にしたものであり、その直前には「亡くなられた方に本当にお悔やみ申し上げる」と言っているのである。
リチャード氏は漢字の読み間違いをしつこく取り上げ、「未曽有」という単語が出てくるたびにわざわざ「未曽有(みぞーゆー)」などと読み仮名を振って揶揄しているが、このレベルのデマに乗せられ、ばら撒くというチョンボを年がら年中やっていることを反省したほうがいいだろう。

 

◆ノーベル賞のおまけ

リチャード氏以外もかなりの度合いで沸いた「憲法9条を守る日本国民」。
期待しすぎるあまりに、平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんに失礼な表現をする人さえいた。
そこまで期待する人が出てしまった原因の一つにオスロ国際平和研究所の受賞予測があったことは間違いない。
しかし実際のところ、オスロ国際平和研究所の予想的中率は良くないのである。

共同通信によれば、この研究所で平和賞の予想が的中したのは、過去10年間では1度きり、アル・ゴアの受賞だけであるという。
このオスロ国際平和研究所の予想をちょっと調べてみたが、過去の予想とその結果はこんな感じである。(参考:PRIO and the Nobel Peace Prize – PRIO

オスロ国際平和研究所の予想 結果
2002 リチャード・ルーガー、サム・ナン ジミー・カーター
2003 リチャード・ルーガー、サム・ナン シーリーン・エバーディー
2004 IAEA、モハメド・エルバラダイ ワンガリ・マータイ
2005 リチャード・ルーガー、サム・ナン IAEA、モハメド・エルバラダイ
2006 マルッティ・アハティサーリ グラミン銀行、ムハンマド・ユヌス
2007 アル・ゴア 気候変動に関する政府間パネル、アル・ゴア
2008 胡佳、高智晟 マルッティ・アハティサーリ
2009 ピエダ・コルドバ バラク・オバマ
2010 シマ・サマル 劉曉波
2011 イスラーウ・アブドル・ファッターハ エレン・ジョンソン・サーリーフ、
レイマ・ボウィ、タワックル・カルマン
2012 ジーン・シャープ EU
2013 マララ・ユスフザイ 化学兵器禁止機関

今年も含めると的中率は13分の1(約7.7%)と、あまり芳しくない。
この的中率を無視して予想の1位に上がったと報じたメディア各紙は軽率だったと思うし、それに乗って期待を膨らませた人たちも拙速だっただろう。

ちなみに3度も予想に挙げられているリチャード・ルーガーとサム・ナンとは、米ロの大量破壊兵器を削減するための協調的脅威削減計画(通称ナン=ルーガー法、ナン・ルーガー計画とも)を成立させたアメリカの政治家とのこと。

 


《参考記事》

御嶽山噴火情報を求めます
御嶽山噴火惨事なのですが、担当の防災大臣が
カルデラ湖の十和田湖、1日で地震800回
「(噴火時に)戦車のキャタピラみたいな音がして、重機か何かが入ったと思った。
なんだか変だな、御嶽山
ミゾーユー君が、御嶽山噴火で亡くなった方々に対して「激励申し上げます」と発言。
噴火の前日から、自衛隊車両が現地に向かっていたのかどうか?
9.27御嶽山噴火の数日前に御嶽山周辺の市町村の放射線量が上昇しているようです。
前触れ】 箱根、大涌谷の噴煙が見たこともないほど激しくなっているらしい…
御嶽山:「死亡者の半数近くが邪教統一教会関係者だったらしいです」
御岳山で死んだ少女、合同結婚式で生まれた子みたいですね

ノーベル賞便乗の安倍首相 研究者の意欲削ぐ「特許改革」画策
「日本国民」が、ノーベル平和賞の受賞予測下馬評の一位になっていたわけですが….
村上春樹氏がノーベル文学賞受賞を逃した理由については、2012.10.16のRK記事を参照下さい。
5秒で忘れるニュース
(以上 richardkoshimizu’s blog より)

PRIO and the Nobel Peace Prize – PRIO

麻生太郎が「噴火で亡くなった方に激励申し上げます」と発言?ネットで話題に~実際の発言はこうだった(1分11秒)(buzz news jaoan)

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