維新新進党と「博士」

「『近いうち』ってなんだよ、お父さんの『遊園地はまた今度な』っていう口約束とどっちが信憑性あるんだよ」という心境の今日この頃。

解散になって選挙となったあかつきには、出馬するかもしれない維新新進党の面白さを紹介。

 

◆鈴木誠司という人

維新新進党を主宰している(党首にあたるのだろうか?)鈴木誠司氏について、当方は「行動力が非常に高いものの、思慮分別に欠ける」と評価をしている。

元々音楽活動をやっていたようだが、2011年3月の東日本大震災で人工地震兵器説にどっぷりとつかり、そのまま政治活動に入り維新新進党を立ち上げている。

人工地震説にまんまと躍らせれて「ちきゅう」号に突撃取材(フェンス越し)を敢行し、その様子をYOUTUBEで公開したり、永久機関の研究に手を出したり、年収1億円を稼ぐノウハウが学べるという情報商材の紹介をしたり(現在では当該の記事は削除されている。何があったのだろう)と、普通の人なら二の足の踏みそうなことをガンガンやってのけている。

問題はどれも「そこにシビれる憧れるゥ!」とはならないことであることだ。

 

「ちきゅう」号については地震発生当時に青森の八戸港で大勢の小学生を乗せており、宮城県の三陸沖で地震を発生させたと考えるには無理がある。
また、人工地震論者が取り上げる「ちきゅう号関係者が人工地震について言及」したことは間違いのない事実であるが、その人工地震の揺れはほとんど人の感じることができないレベルのものである。大地震とは程遠い。

永久機関についてはあまり言えることはないが、この概念は自然科学の法則を無視しているアイデアのため、実現するとは思えないし、実際に特許庁で特許を取ることはできない。

1億円を稼ぐというのは……自然法則に反してはいないかもしれないが、そんなうまい話があるとは思えないし、そんなビジネス手法を学べる講座が1万円ちょっとで学べるというのも信じがたい(年収1億とは程遠い職業の専門学校や資格の講座だってもっと受講料がかかるぞ)。

そんな鈴木氏は、リチャード氏のような発信する側の人間というよりは受信する側の人間で、泉パウロ氏のように何でもかんでもとにかくなんとなく信じている、という感じがうかがえる。

そんな鈴木氏のブログ「維新新進党公式ブログ・維新新進の心」にたびたび登場する佐野千遥という人物がまた輪をかけて、面白いのである。

 

◆佐野千遥「博士」

鈴木氏はリチャードコシミズやベンジャミンフルフォードといった陰謀論者から影響を受けているが、それ以上に佐野千遥という人物の影響を受けている。
鈴木氏のリチャード氏やベンジャミン氏に対する接触は、大体の場合において何らかのメディアを介しているが(リチャード氏の講演会に顔を出したことはあるようだ)、佐野千遥氏とは一緒に動画を撮ったり、彼のやっている「フリーエージェント大学」というものに参加したりと、現実にかなり深い交流があるようだ。

では佐野千遥という人は一体どういう人物なのか。
佐野氏の公式ブログ「フリーエージェント世界革命を提唱するフリーエージェント大学ロシアの有名人・ドクター佐野千遥教授」(「ロシアの有名人」という自称はなんなのだ)にある自己紹介文には以下のように書かれている。

世界史的数学難問4問解く、2012年3月太陽表面から新惑星誕生を科学的に予言、12年3月NASA発表で実現、誤謬数学分野論証、反エントロピー全新厳密自然人文社会科学体系創出、永久磁石永久機関モーター実験、資本主義主力株式会社を覆すフリーエージェントによる世界革命提唱、社会正義実現の為、軍事まで含め世界革命戦略手順を提起

なんだかすごく、よくわからない言葉にあふれている。

「ロシア科学アカデミースミルノフ学派」という物理学の学派に属してもいるようだが(といっても他にそんな学派に属している人が見当たらない)、「フリーエージェントビジネス」というビジネスモデルや惑星の誕生など専門外と思われるものに手を出しているほか、専門分野のはずの物理学でも永久機関に手を出すという無茶をやってのけている。

率直に言って「怪しい人」である。

こうなってくると、当然ながら彼の経歴や専門性を疑ってかかるべきだという考えが持ち上がってくる。

そんな「怪しい」佐野氏の専門家としての経歴は以下のとおりである。

2002年 (至現在)セント・クレメンツ国際大学 物理学教授
2001年 英国系セント・クレメンツ大学で数理物理学の博士号取得
2002年 ロシア科学アカデミー・スミルンフ物理学派論文審査員となる
1999年 英国系ウィットフィールド大学でコンピュータ科学人工知能の博士号取得
1991年 (~1993年)University of California、 Irvine人工知能研究所で確率論批判・学習システムの研究
1988年 (~1991年)世界の認知科学の権威ロージャー・シャンクのCognitive Systemsのデータベース研究所IBSで自然言語処理研究
1986年 (~1988年)欧州先端科学研究プロジェクトESPRITにESPRITディレクターとして仏Telemecanique研究所より参加(生産ラインへの人工知能導入の研究)
1985年 西独ジーメンスのミュンヘン研究所で生産ラインへの人工知能導入の研究
1982年 (~1985年)[仏国]世界一速い列車TGVのメーカーAlsthom社の知能ロボット研究所
1981年 (~1982年)[仏国]グルノーブル大学院、ソルボンヌ大学院で通訳の国家免状取得
1980年 (~1981年)[スペイン]マドリード大学院で言語学履修 西国政府給費留学生
1971年 東京大学基礎科学科卒業(数学・物理学専攻
講演依頼.com 佐野千遥氏プロフィールのページ より)

1971年に東大を出てから1999年に博士号を取得するまで28年かかっている。
博士号は博士課程在学中に学位審査に合格して授与される課程博士と、在学しないまま(課程修了後?)授与される論文博士とあるようだが、いずれにしたって28年は並はずれて時間が空いているように思える。
博士号を持っていない状態でいろいろな研究に携わっているようだが、どれほど重要な役割を任せてもらえるのか、疑問である。

上記経歴では博士号取得は1999年のウィットフィールド大学だけしか記載されていないが、別の経歴について書かれたページを読むと、2001年にセントクレメンツ大学で物理学の博士号を取得したと書かれている。スミルノフ学派云々はこちらの博士号からきているようだ。

 

ここで注目すべきは佐野氏が学位を取得した学校になるが、結論から言うと「ウィットフィールド大学」と「セントクレメンツ大学」の二校は、非認定校である
ウィットフィールド大学(Wittfield University)、セントクレメンツ大学(Saint Clements University)はいずれもオレゴン州やメーン州の制作した非認定校リストに名前が載っている。
メーン州が出した非認定校リストではセントクレメンツ大学は「Degree mill.」とコメントされており、この学校がいわゆる学位商法の学校であるとされている。
ウィットフィールド大学についてはすでに閉校となっており、この世に存在していない。

こういう大学で取得した学位というものは、公には認められておらず、取得した人間が専門性を持った人間であることをなんら証明しない。

佐野千遥氏は「博士」を名乗っているが、それは公式な肩書ではなく自称の領域を出ないということである。
もちろんそんな学位商法の大学で教授を務めているからといって、一般的な大学教授とは天と地ほどの開きがある。

 

自分好みの話であれば何でもかんでも安易に信じる傾向にある党首と、ハリボテの学位と教授職の肩書をぶら下げている「博士」によって支えられている維新新進党。
これからもちょっと目が離せない物件だ。

とりあえずは「フリーエージェントビジネス」とやらで衆院選出馬に必要な供託金300万円を稼ぎ出していただきたいものである。

 


《参考サイト》

維新新進党公式ブログ・維新新進の心

フリーエージェント世界革命を提唱するフリーエージェント大学ロシアの有名人・ドクター佐野千遥教授

世界を変える!佐野千遥博士の永久磁石永久機関モーターを完成させよう!

フリーエージェント大学・ロシアの有名人・佐野千遥博士

《参考記事》
年収1億円プログラム

講師詳細プロフィール』(講演依頼.com より)

オレゴン州非認定校リスト

メーン州非認定校リスト

“維新新進党と「博士」” への 4 件のフィードバック

  1. 初めまして。鈴木誠司です。

    ツイッターでこの記事を教えて下さった方がおりましたので拝見させて頂きました。

    人工地震説や国際金融資本、TPP問題や消費税増税、原発問題についての知識や見解をネットや書籍だけでなく、実際にどれくらいの方からどの位の反応が頂けるかと、私なりに会報としてまとめ、まずは一市民として市議会議員をされている方々に直接お会いし意見を頂いたりしておりました。

    そうしているうちに蓄えも減り、政治活動はネットだけにならざるを得なくなった時に佐野千遥博士からコンタクトがあり、思想的な観点から共感出来る事を確認し、新しい形の安全かつ非常に清潔な電力供給の可能性を求め、現在のテーマに取り組みさせて頂き、お陰様でいい所まで到達しております。

    この取り組みや政治活動の糧になるようにと、当初はお断りさせて頂いておりましたアフィリエイトにも取り組みましたが、これは複数名の登録があったにも関わらず、その半分にも満たない数しか報酬対象としないやり方にさすがに労力は割けず、佐野博士と相談した上でこれ以上関わるのは辞めさせて頂きました。

    佐野博士の学位については先程この記事を見てもらうと同時に少しお話しを聞かせて頂きましたが、セントクレメンツ大学側も反論を呈しているとの事で、色々あるかとは思いますが、私は現在主流である物理学や社会学よりも、社会を良くする可能性を感じ、佐野千遥博士とは懇意にさせて頂いております。

    貴方のように匿名で尚且つ斜め上からしか物を書けない事情や背景もお察し致しますが、本当に国や社会、世界の平和と明るい未来のために情熱を持って応援して下さる方々も少なくありません。

    そういった方々のためにも、時間はかかるかも知れませんが、少しずつでも一つずつ、きちんと目に見える形で私達の取り組みの成果を発表出来る日を楽しみにしております。

    輿水氏に対しては私も思う所がございますが、あまり上げ足を取る様な事に終始せず、そこから貴方様にとって有益かつ参考にされるような所を見出して戴けましたらこれ幸いに思います。

    難しいかとは思いますが、ご検討下さいましたら大変嬉しく思います。

    では乱文失礼致しました。

    維新新進党 エスプロジェクト
    代表 鈴木誠司 より

    1. コメントありがとうございました。

      「現時点で佐野千遥氏が掲げている学歴には公式には何の意味もない」ということが判明してもなお、鈴木さんが “ 個人的な判断 ” として佐野氏を「専門家」として信頼し続けることには異存はありませんし、永久機関の研究を個人的に続けるのにも異存はありません。
      他の人から見て正しいとは思えない判断でも、選択する自由はあるからです。

      ただしその自由もあくまで、他人に害を及ぼしたりしない限りにおいてです。
      もしこの「博士」の肩書で他人を信用させて、「フリーエージェント大学」を卒業すれば一般的な大学と同じような学位が得られると思わせたりするようなことがあれば、大いに問題ありです。
      鈴木さんも今回初めて聞いた話のようですから、佐野氏は、現在自分の学位に世間一般で認識されるような「博士」としてのような重みや価値がないことについて、特に公表してこなかったのでしょう。

      そういう行為は事実に対して誠実な行為とは思えませんし、世界に正義を求めて活動しているという人が、目の前の人間のちょっと調べればすぐに明らかにできるような欺瞞に気づかずにいるという様子がたちの悪いジョークのようでしたので、今回の記事と相成りました。

      かなり辛辣な書き方をしましたので気分を害されたとは思いますが、丁寧な書き方をしていただけて、それだけで鈴木さんという方が真面目な方であるのは間違いないかと思います。
      でも、「真面目である」「真面目な態度で物事に臨んでいる」ということが、「やっていることが間違いなく正しい」という保証にはならないのです。

      くわえて申し上げておきたいことは、私はインターネット上で本名を名乗らず、あくまでハンドルネームを使用して記事を書き続けていますが、それでも事実に対して誠実であるということは無視していただきたくないということです。
      今回私が書いたことはオレゴン州やメーン州のだしている公的な情報を根拠にしているのであって、匿名の立場で根も葉もないことを言っているのではありません。ソースも明示しています。
      本名で活動していようが、匿名であろうが、発している情報が事実に対して誠実かどうかにはかかわりがないのです。

      「セントクレメンツ大学やウィットフィールド大学は行政機関から認可をうけておらず、したがって同大学で学位を取得したことやあるいは教授職に就いているといっても、それは公には何の意味を持たないことである。」という事実は、たとえ口にする人間が私のようなネット上の匿名の人物であっても、鈴木さんのように本名で活動している人であっても変わりはありません。

      佐野氏はこれまで、自分の持つ学位が非公式なものであることを伏せてきました。
      これは事実に対して誠実な行為でしょうか?
      私はそのことを公式な、行政機関の作成したリストに基づいて指摘したのです。
      今回の指摘に対して鈴木さんや佐野氏がどういう対応を取るかどうかで、さらにお二人が信用するに値する人間であるかどうかが試されることでしょう。
      ましてや「大学」を運営して人からお金をもらおうというのであればなおさらです。

      お二人が誠実な対応を取ることに期待をさせていただきます。

      1. zingoroh氏へ

        佐野博士よりご回答を頂いていたので私のブログにまとめましたので、一度ご覧下さい。

        http://ameblo.jp/chlorohead/entry-11340403905.html

        セントクレメンツ大学、ウットフィールド大学について佐野博士の御意見を要約すると

        ・皆さんよく勘違いするのですがセント・クレメンツ大学はヴァーチャル大学ではありません。私のセント・クレメンツ大学は名門校では有りませんが、アラブ諸国を初めとした第3世界の国々や中国でそれぞれの国の文部省が認定したそれぞれの国にキャンパスを持つ、真面目に真の教育を学生に対し実施している大学が寄り集まって出来ている英連邦を起点とする国際大学です。

        ・セント・クレメンツ大学をdegree millsのヴァーチャル大学と勘違いしてなじったウェブサイトもインターネット上には存在しますが、セント・クレメンツ大学自身の他にも第三者で「セント・クレメンツ大学は違うよ!そうではないよ!」と発言しているサイトも幾つも有りますので、御覧下さい。

        ・zingoroh鉄人堂妄語録氏はセント・クレメンツ大学、ウィットフィールド大学は「非認定校だ!」と宣もうていらっしゃいますが、貴方は「非認定」とは何処の国の文部省が認定していないという意味なのか御存知ですか?!「非認定」とはアメリカの文部省、アメリカの州の文部係りが認定していない、という意味でしかありません。

        ・セント・クレメンツ大学には現在、アメリカ分校は有りません。よってアメリカで非認定になっているのは当然であり、又アメリカで「非認定」になっているから怪しい大学であるという論は全く成り立ちません。

        という事です。

        「ちきゅう」と人工地震のzingoroh氏の見解への御意見は前回書き損じてしまいましたが、

        ・「ちきゅう」号については地震発生当時に青森の八戸港で大勢の小学生を乗せており、宮城県の三陸沖で地震を発生させたと考えるには無理がある。

        ・また、人工地震論者が取り上げる「ちきゅう号関係者が人工地震について言及」したことは間違いのない事実であるが、その人工地震の揺れはほとんど人の感じることができないレベルのものである。大地震とは程遠い。

        と述べておりますが、「大勢の小学生を乗せているから深海で工作を施すのは無理」と考える方が無理がありますし、この考えは「あの人は政治家の大先生だから、賄賂など貰った事がないだろうし、犯罪に手を染めるような人では無い。」というある種権威主義的な盲信に近い物を感じますし、「人工地震の揺れはほとんど人の感じることができないレベルのものである。」というのも大きな間違いで、1984年3月11日の神奈川県小田原市で行った人工地震の実験一つをとってみても「震度1の予定が4~5になってしまい、新幹線のダイヤが乱れた」と翌日の読売新聞の朝刊の新聞記事にもなっております。

        http://ameblo.jp/chuuli/entry-11130960158.html

        震度4~5の地震はほとんどの人が感じるレベルのものですし、技術は日々進歩します。

        というのが私の意見です。

        もしご参考にして頂けましたら幸いに思います。

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