カテゴリー別アーカイブ: 妄語

都知事選挙がはっじまーるよー!

都知事選挙が1月23日公示され、2月9日に投票となる。
立候補者は以下の16名。

  1. ひめじけんじ
  2. 宇都宮健児
  3. ドクター・中松
  4. 田母神俊雄
  5. 鈴木達夫
  6. 中川智晴
  7. 舛添要一
  8. 細川護熙
  9. マック赤坂
  10. 家入一真
  11. 内藤久遠
  12. 金子博
  13. 五十嵐政一
  14. 酒向英一
  15. 松山親憲
  16. 根上隆
    (届け出順)

リチャード・コシミズウォッチャーとしても一応見てはいるものの、昨年2013年の衆議院選挙ほどリチャード氏が熱心にかかわろうとする姿勢も見せていないので、こちらも同じようにあまりそういう方向からは熱心に見られていない。

しかしそれはそれとして、インディーズ候補を見るのも好きなため、都知事選には独立党外の楽しみも期待したいと思う。

 

◆現時点での独立党と都知事選

今回の記事でメインにはならないものの、独立党と都知事選についても書いておこうと思う。

今回のリチャード・コシミズ独立党が最も押しているのが宇都宮健児氏。
一人しか当選できない都知事選で「最も」というのもおかしいのだが、リチャード氏は宇都宮氏のほか、立候補を辞退した吉田重信氏の辞退を『こんな主張の都知事候補者もいました。』の記事で惜しみ、『東京都知事選について』の記事ではインディーズ候補の一人にカウントされる鈴木達夫氏に対しても好意を見せている。

同じような政見を持つ候補者が多数立候補すると票が分散し、望ましいと思った候補者が両方倒れて、結果的に望ましくない候補者が漁夫の利を得る可能性があるため、歓迎するところではないと思うのだが、リチャード氏はあまりそのあたりを気にしていないようである。

宇都宮氏をどう応援していくのかは少し興味深いが、昨年の小沢氏に匹敵するレベルで宇都宮氏に惚れこんでいるとは思えないので、あまり派手な応援(街頭演説など)は期待できそうにない。
独立党員やリチャード氏の影響下にある人間が個々に宇都宮氏の選挙運動を応援するために馳せ参じることくらいはありそうだが、リチャード氏自身が動くような予兆は見られない。

そしてリチャード氏が最も敵視しているのが田母神俊雄氏である。
田母神氏の歴史認識は、中韓の反発感情をあおるものであり、反米にして極東アジア経済圏(ロシア含む)の連携を理想とするリチャード氏にとって分かりやすく敵である。
そのうえ、リチャード氏が嫌っている石原慎太郎やデヴィ夫人が田母神氏の応援に駆け付けていることも、リチャード氏の敵愾心に火をつける要因になっている。

ユダヤ朝鮮裏社会がマジに田母神を不正選挙で当選させようとしているようです。』ではインターネットホームページで取られたアンケートの結果で田母神氏の支持者が8割もいるという、夕刊フジの記事を真に受けて過剰反応
調査結果をねつ造だと主張している。
ネットアンケートはサンプルが偏るので、結果は世論を正確に反映しているとは言えない」という指摘は、もう2012年末の選挙のころからさんざんされてきているのだが、いまだにリチャード氏の耳には入っていないようである。
都合のいい結果は「真実」とし、都合の悪い結果は「陰謀」として処理するという、程度の低い駄々をこねるしかないところが実に痛々しい。

 

◆都知事選のインディーズ候補たち

まだ政見放送なども流れていない状態だが、IWJやニコニコ動画での公開討論など、インディーズ候補に関する情報はいろいろと増えた。いい時代である。

そんな中、私が見た範囲でよりマイナーなインディーズ候補たちを紹介。

五十嵐 政一(セリ―マレーシア協会副理事長)

マレーシアでの生活長いのか、少々日本語のイントネーションに訛りがあったり、発言する際の単語の選び方につたなさを感じさせる候補である。
この喋り方もかなり印象深いが、なによりの五十嵐氏の特徴は「カジノ推し」であること。
五十嵐氏の主張をまとめると、カジノで日本の人口に匹敵する外国人観光客を呼び込み、その経済効果によって国を豊かにしたいということのようである。

ニコニコ動画で公開されていた『畠山理仁チャンネル主催 東京都知事選挙2014 公開討論会2.0』(以下「公開討論会2.0」と表記)では、「知事になったら継承していきたいもの、変えていきたいもの」「2020東京オリンピックについて」「少子高齢化が進んでいるがどう考えるか」「経済・雇用・福祉について」「2020東京オリンピック後に望まれる東京の姿」といった多種の質問に対して「カジノ!カジノ!カジノ!」と、やたらめったらに強いカジノに対する意気込みを見せ、その強引な論理展開とワンパターンさに他の出席者から失笑が漏れてしまうほどであった。
たしかにカジノは経済効果が期待できるのだが、その一方でギャンブル依存などの社会問題を引き起こすリスクが明白であり、出席者同士の討論では集中砲火を浴びる羽目になっていた。

鈴木達夫(弁護士)

リチャード氏も注目していた鈴木達夫氏。
「公開討論会2.0」の他のメンツの濃さから考えるとおとなしく、普通すぎてかえって浮いている感が否めなかった候補である。

「人権派弁護士」という雰囲気の強い候補者で、主張で最も目立ったのは労働者の権利を守るために、労働組合による団結を求めているところである。
一応原発反対、五輪返上というスタンスなので、リチャード氏にとって悪くない候補ではあるのだが、あくまで労働者の権利に重点を置いた候補であり、それほどあまりマッチしていない気がする。

根上隆(革命家)

革命家である。
もう、これだけでなんだか「合格!」という感じなのだが、「公開討論会2.0」の開始直前まで会場で内職をしているというつつましさと、討論会さなか動き回る大胆さを併せ持った自由人。

かつて殺人未遂で逮捕されたこともあり、その様子がYouTubeにて全世界に公開されているという、なかなかレアな人物である。

↑白いワゴン車を運転しているのが根上隆氏

「公開討論会2.0」では、「五輪に関わるハコモノや除染作業などの大型事業が利権の温床になっている」、「選挙が利権集団にとってのセレモニーになっている」、「自給自足が人の生活の基本である」といった主張をしており、現在の経済を優先する社会に対する強い不満を見せている。
そのためか、五十嵐氏の経済効果を重視したカジノ政策に対して強く反発していた。

内藤久遠(元派遣社員)

「公開討論会2.0」はおそらく最も積極的に発言した候補者。
浮いた発言がすくないことや保守寄りの発言が多かったことからか、視聴者から一番受けが良かった候補者だったと思う。
他の候補予定者たちが、独自のこだわり(五十嵐氏のカジノが特に顕著だった)に絞っているためか、うまく回答できないような分野の質問があるのに比べて、かなりいろんな分野で回答できていたようにも思える。

自分の学歴や肩書をひけらかすのに具体的な政策についてろくに語れていないドクター中松や山口節生の姿と、「元派遣社員」という華やかさのない肩書だが堅実に政見を述べる内藤氏の姿は、視聴者にとって「人間、学歴がすべてではない」という好例に映ったのではないだろうか。

中川智晴(一級建築士)

「公開討論会2.0」に出席していない候補者だが、この人物の記者会見とマニフェストのホームページには目を通した。
おそらく今回のインディーズ候補の中で最大のカオスさに満ちた候補者である。

肩書は一級建築士となっているのだが、記者会見での「現在収入を得ている仕事は?」という質問に対して歯切れが悪く、「財テク」という珍解答で乗り切ろうとしていた。
一級建築士の資格は持っているものの、一級建築士としての仕事はなく、別途ソフトウェアなど開発をして収入を得ているのではないのか、というのが私の推測である。

記者会見では「要するに…」という言葉で発言をつなげる傾向があるものの、聞いていてもさっぱり言ってることが頭に入ってこない、という状態で、彼の政見について知りたければホームページのマニフェストを読んだ方がよいように思える。

しかしながらこのマニフェストもかなりの曲者。
彼のマニフェストのサイトでその全文を読むことができるが、長い。
長いうえにかなり支離滅裂な内容なので読んでいてつらい。

彼の政策を超ざっくりとまとめると、こんな感じである。

自分が都知事になったら、9つのミッションを都に課す。
都庁職員の年棒は2000万、議員の年棒は5000万でスタートするが、一回失敗するたびに年棒はそれぞれ2000万円、5000万円ずつ引かれる。
つまり一回の失敗で年棒は0になり、2回以上失敗すると都に負債(それぞれ2000万、5000万ずつ)が増えていくという仕組み。全部成功すれば年棒が倍になる。
逆に都知事の年棒は5000万からスタートし、ミッションが失敗するたびに100億円をもらえる。
ミッションは「どんぶり勘定政策」「東京リゾート計画」「都市再生法案」「東京都学童再生顧問」「東京都ファンタジープラン」「酔拳議会」「僕らは、かわいそうじゃない、普通なんだ」「清水の次郎長政策」「スマッシュ政策」など。
各政策すべてを紹介するのはさけるが、たとえば「どんぶり勘定政策」では、都民に年収800万を与えることで生活水準を底上げる。
しかし都民には継続的な勉強や「伸びること」が義務付けられ、それができなければ年棒はなし。
「壊す人」に至っては財産をマイナス100億円にされてしまう(「壊す人」というのが何を指すのかわかりませんでした)。

都民、職員、議員がそれぞれ800万、2000万、5000万でスタートして、失敗していくと巨額の負債を抱える羽目になるという、全然乗りたい気にさせてくれない非常にリスキーな政策である。
それに対して知事は随分といい待遇である。
何しろ基本報酬が5000万からスタートして、全ミッションが失敗した場合には、中川氏は900億という巨万の富を得るというのである。
しかも知事の収入がマイナスになるということはないらしい。
明らかに不公平なのだが、「私は、全世界の人が愛してくれた、世界を統一した国の本物の国王です」ということだから、もうなんだか納得するしかないなという感じである。

ちなみにマニフェストのページは全部で5つのページで構成されているが、残りのページは1ページ目ほど難解な印象はないので、そちらを見たほうがいいかもしれない。

 

◆番外編–山口節生

伝説的インディーズ候補、山口節生については都知事選とは別に書かなくてはならない。
なぜなら、彼は「公開討論会2.0」に出席してかなり好き放題喋っていたものの、都知事選には出ないからである。

そんな山口節生だが、触れないわけにはいかないと思う。
それほど面白かったのである。

都知事選にまつわる彼の行動を書くと以下のとおりである。

1月8日 東京都知事選挙に出る決意を表明し、記者会見を行う。
1月9日 資金不足を理由に都知事選を辞退する。
1月18日 なぜか「公開討論会2.0」に出席
1月19日 深谷市長選挙公示日。山口節生が出馬することが判明する。
1月20日 山口節生に実刑判決(懲役8ヶ月)がくだる。

怒涛の展開である。
これだけで、まるで海外の連続ドラマシリーズの最終話だけを立て続けに見ているようではないか。
たった1日で立候補を辞退というのも何なんだという感じだが、ラストは実刑判決というどんでん返しが待っていた。
個人的には「超展開の男」とさえ呼びたいくらいである。

実刑判決になった罪状は公文書毀棄で、駐車違反の際の供述調書を破り捨てたとのことである。
立候補を表明した記者会見の場、あるいは「公開討論会2.0」にて、彼は度々「演説をしていたら警察に逮捕された。表現の自由の侵害だ」という旨の発言をしていたが、演説の内容と罪状は無関係そうである。

ちなみに、現在上告中で刑が確定していないため、市長選を戦うことは法的に可能だという。
もちろん、法的に戦えるということと、勝てるということは別である。

 

「公開討論会2.0」のあとも立候補の意思を示す人は現れ続け、最終的にすべての立候補者は16名という大所帯になった。
都政の行く末を占ううえで注目するべき候補者はそのうちのごく一部に限られているかもしれないが、やはり少しでも多くの候補者を見ていくことも大切である。楽しいから。

【2014/01/27 一部記入が漏れていた箇所を直しました】


《参考記事》

本来当選するべき候補が名乗りを上げたようです。
キチガイユダヤ朝鮮裏社会は、本気でダボハゼを不正都知事にするつもりですか?
統一CIA・北朝鮮協会の合同演説会ですか?
RK独立党員による宇都宮事務所探訪記・参考記事です。
こんな主張の都知事候補者もいました。
東京都知事選について
ユダヤ朝鮮裏社会がマジに田母神を不正選挙で当選させようとしているようです。
richardkoshimizu’s blogより)

畠山理仁チャンネル主催 東京都知事選挙2014 公開討論会2.0

中川智晴のマニフェスト

山口節生、2014年東京都知事選に立候補表明!
山口節生、やっぱり2014年東京都知事選立候補取りやめ!
山口節生、深谷市長選に立候補!
山口節生、実刑判決を受け上告!
Experiments of Actinより)

古きをたずねる

先日、安田浩一著『ネットと愛国』を読みました。

この本を読んでて思ったのは、「この手の嫌韓デモやってる人って陰謀論者に分類できそうだな」ということ。

在特会らが主張する「在日特権」の中にはリアルに存在する権利(特権というほどかは怪しい)もあるのだが、同時に完全に途方もない話(光熱費や水道代の免除や「採用試験の在日枠」など)も存在していおり、現実に存在しない陰謀を語る「陰謀論」の領域に踏み込んでいるように思える。

インターネット上では「○○は在日に乗っ取られている」という主張が多数見受けられ、「パチンコ業界」のような比較的マシな主張もあるが、メディアに「在日枠」があるといった珍説もはばをきかせている。
「在日」の部分を「ユダヤ人」や「イルミナティ」、「レプティリアン」、「イエズス会」、「フリーメーソン」などと置き換えれば十分陰謀論の説の一つとして通用しそうな勢いである。

2011年にはフジテレビ抗議デモなんてあったが、彼等の主張には「『笑っていいとも』のクイズに使用されたランキングでキムチ鍋が1位だった」(出典のランキングが完全に嘘だと判明しているとかいった根拠がないなら、事実として受け止めるしかないだろう)とか「ドラマに一瞬だけ映る小道具に反日的な文言や親韓的な文言が使われている」(そういったものが全体のうちどのくらいを占めるのかを全く調べず、ただそういうケースに当てはまると解釈できるのだけ集めても意味がない)とか、酷いものになると「『すぽると』のロゴマークは韓国の国旗のサブリミナル」といった主張まであった。
活動を健全に保つためにはこのようなトンデモな主張は排除するべきだと思うのだが、小道具や『すぽると』については主催者が作成したビラにまで書かれていた。
主催者自らこんなこと主張しているようでは話にならない。

 

◆輝号(かがやきごう)

こういう変な方向に走った「愛国」は現代特有ではなく、過去にもきっといくつもあったのだと思う。
私自身が知っている最もインパクトが強い「愛国」系トンデモは「ブラジル勝ち組事件」である。
最初にこの話を読んだのはASIOSの『陰謀論はどこまで真実か』であったが、あまりのぶっ飛び具合に心奪われてしまった。

勝ち組-Wikipedia

これは太平洋戦争が終わった後、情報不足ゆえに日本がアメリカに勝利した(戦時中の彼らの情報源は、大本営発表の嘘にまみれたラジオ・トウキョウだった)と信じた人たちが日系ブラジル移民社会に大勢おり、日本が戦争に負けたと主張する人たち(地元のポルトガル語の新聞などを読むことが出来た教養のある人たちが中心)と対立した事件である。

日本が勝ったと信じる「勝ち組(信念派)」と日本の敗北を主張する「負け組(認識派)」の対立はやがて抗争へと発展し、死者も出ている(勝ち組が負け組を殺害するケースが圧倒的に多かったようだが、勝ち組にも死者が出ている)。

この勝ち組は戦後10年ほど活動をつづけており、その間(1949~1953年)雑誌を発行していた。
それが「輝号」である。

不二出版で出された『十五年戦争重要文献シリーズ 補集3 輝号〔ブラジル「勝ち組」広報誌〕』では、輝号の創刊号全頁と各号の目次と編集後記が収録されている。

当時の「勝ち組」の雑誌がどのようなことを考えていたのかを知る史料となると思うのだが、そういった高尚な目的は抜きにどういうことを書いていたのかを紹介(一部旧漢字・仮名遣いをなおしています)。

若し凡ゆる報道を信ずるなら、我々の頭脳は空虚になるであらう。それ程報道は信用を失ったのである。矛盾を突くは、各種デマ宣伝を拉して辛辣な批判を加へ、原子弾を手玉にとって翻弄している。それで何等怪我をしなかったなら原子弾も危険な物質ではないといふことになる。
(昭和24年8月号 「矛盾を突く」は同誌連載記事「突き当たる矛盾」の誤りと思われる)

突き当たる矛盾、ラヂオ月評の二編は、如何に各種報道が自己撞着に陥っているかを、事実をあげて述べている。今月号は原子弾をマ将軍に、最後の断定を下し、その実在を否定している。
(昭和24年9月号)

最近の新聞は、無条件降伏をしたといふ日独に関して、理解しがたい現象を報道している。凡ゆる報道を、無批判にそのまま信ずる時は、我々の頭脳は飽和されて空白になるであらう。突き当たる矛盾はそれ等報道の撞着を、皮肉な筆を以って嘲笑し続けている。
(昭和24年10月号)

今次大戦は原子爆弾によって終局を結んだといはれているが、原子爆弾とは世に宣伝されているやうなものではないことは、誰でも気づいている。太郎冠者氏の「原子爆弾」は、米誌に掲げられてた記事からその正体をあばいている。
(昭和25年2月号)

また――突き当たる矛盾にはソ連が日本と戦闘を交えなかったことや、原子、水素爆弾の謎を暴いている。
(昭和25年3月号)

「もしあらゆる報道を信じるなら」という留保はおいているものの、基本的にマスコミの言うことを信じたくない、という気持ちにみちた文章である。昨今も似たような文章をそこかしこで見受けられる。

驚くのは原爆非実在説とでも呼ぶべきものがかなり真剣に唱えられていること。
ラジオ・トウキョウの大本営発表しか知らないのならば、本土が毎日のように空襲されていたり、硫黄島や沖縄での玉砕など知る由もないだろうから、有利に戦局を進めていたはずの日本が突然たった2発の新型爆弾だけで負けたと聞かされたようなものなのだろう。
確かに信じるのは難しいのかもしれない。

 

訪日者達の話しは、平穏に戻りつつある邦人社会に一石を投じた。森田氏に訊く、街頭珍話、訪日講演会等の記事を読まれたなら、読者は、彼らの談話の中に、すだれを通して向ふを見るやうな、被ふべくもない曖昧さを感じられると思ふ。よく批判を加えられ、真相を推断されたい
(昭和24年9月号)

水泳選手は、「日本から来た」といふ点で、時局に結びつけ、興味を以て見られている。しかし我々は――彼らは純然たる運動選手の資格で来たことを忘れてはならぬ。何等時局とは関係がないのである。もし何か継がりがあるとすれば、彼らの世話をやいているのは認識者達である――という点である。しかもこれは非常に大きな意味を示すに違ひない。
(昭和25年3月号)

日本から来るといはれる雑誌は沢山あるが、孰れも日本の敗戦を物哀れに宣伝しているか、さうでなかったら羞恥なくしては他人の前では開かれないやうなものばかりである。若し事実日本から来るのであったら、たとへ敗戦したと仮定しても、少しは良心的なものがあっても好いはずである。
(昭和25年6月)

どうもこの当時、日本へ行ってきた人や日本からやってきた人たちから当時の日本の状況について話を聞く機会が設けられていたようだが、勝ち組の人たちはその話をかなり疑ってかかっていたようである。
日本から来た水泳選手については「彼らの世話をやいているのは認識者達である」ということで、何やら負け組の人たちが勝ち組の人たちをだますために何やら糸を引いているのかもしれないと訝しんでいるようである。
ASIOSによれば「現代の架空戦記も真っ青な、アマゾン奥地に作られた「新日本」などという話をでっち上げて日本の敗戦を信じようとしなかったのである」(『陰謀論はどこまで真実か』 131ページ)ということだから筋金入りである(とはいえそこまでの陰謀論を唱えて敗戦を拒否する人は勝ち組の中でもさすがに少なかっただろうが)。

 

当時の日系ブラジル移民社会と現代の日本では、情報の入手しやすさにおいて雲泥の差があるのだが、なんだか言っていることは大して変わりがない。
人がトンデモな領域に足を踏み入れるか否かにおいて重要なのは情報量ではなく、どのような情報を信ずるに足ると判断するかにかかっているのだと思う。

 

おまけ

ちなみにこんなのもある。

ユダヤ民族を無視して、地球上のあらゆる現象を論ずることは出来ない。それ程ユダヤ人の政治的経済的勢力は絶大である。「ユダヤ民族運動概観」は彼等の目標と政治的、経済的、軍事的奇怪な活動を暴露している。
(昭和25年7月号)

「ユダヤ民族運動概観」に述べられた事は、多くの読者に意外なことばかりだったと思ふ。彼らの運動は大掛かりであるにも拘らず、殆ど世に知られていない。それ程巧妙なのである。我々の世界観には一つの変動を起こさせるに足る記事である。
(昭和25年8月号)

ユダヤ民族に関する著作は沢山あるが、「ユダヤ民族運動概観」の如く、理屈を抜きにしてこれほど赤裸々に述べたものは少い。これを読んで、戦りつを覚えたのは編しゅう者だけではないと思ふ。祖国を失った人々もいつかはかうした苦しみを体験しなければならないであらう。
(昭和25年9月号)

こんなところにもユダヤ陰謀論が顔を出している(引用した3つの号の目次を参照すると、「シオン賢者の議定書」を邦訳したことで知られている四王天延孝の「ユダヤ民族運動概観」という記事が掲載されている )。
まあ、戦時中ユダヤ陰謀論はある程度日本に浸透していたらしいので、戦時中の価値観を引きずり続けた勝ち組の人たちが信じていてもさほど不思議でもないかもしれない。

 


《参考図書》

 

十五年戦争重要文献シリーズ 補集3 輝号〔ブラジル「勝ち組」広報誌〕

1243

いやびっくりしました。
7日の朝に見たら、突然PV数が増加してました。

理由は当ブログへのリンクを載せたツイートがリチャード氏のブログに転載されたためのようです。

その日の結果として、1243のPVがありました。

それまでの最高PV数は160ちょっとで、今年の3月くらいだったと思います。

その後は勢いも落ち着き30くらいで推移していたんですけど、突然の1243。

PVのグラフにバベルの塔が建立されていました。
その後は猛スピードで崩れています。

いやー、人気ブログにリンクが張られると違うなあ。

2011年東京都知事選挙政見放送の話

今回はリチャード・コシミズから離れた話題に。

都民ではないのだけれど、都知事選挙には興味をもっていました。

候補者と結果は以下の通り

名前 党派 職業 票数
石原 慎太郎 無所属 現職 2,615,120
東国原 英夫 無所属 無職 1,690,669
わたなべ 美樹 無所属 会社経営 1,013,132
小池 あきら 無所属 政党役員 623,913
ドクター・ 中松 無所属 国際創造学者 48,672
谷山 ゆうじろう 無所属 映画監督 10,300
ふるかわ 圭吾 無所属 会社役員 6,389
杉田 健 新しい日本 政治団体代表幹事 5,475
マック 赤坂 スマイル党 財団法人会長 4,598
おがみ おさむ 東京維新の会 僧侶 3,793
姫治 けんじ 平和党核兵器廃絶平和運動 建物管理業 3,278

「天罰」発言はあったものの、現職の石原慎太郎が大量得票して当選という結果。

もちろん、興味の方向性は通常の都民とは異なり、基本的には政見放送を楽しもうという根性である。
と、いうことで内容的に普通な政見放送だった人たちについてはここで話題にはあげないのであしからず。

今回は候補者の中でも政見放送が印象に残った3名、「ドクター・中松」「マック赤坂」「杉田健」について書いておこうと思う。

◆ドクター・中松

今回は「完全無所属」とのこと。
参議院選挙で幸福実現党から出馬したことを後悔したのだろうか。

先だっての地震に便乗するような形で「地震・津波・原子力・新エネルギーのプロ」を自称。

東京大学で地球システム工学を学んだ地震のプロらしい。
でも卒業したのは東大工学部でも石油工学科らしい。本当に地震のプロを名乗って大丈夫なのだろうか?

戦時中海軍で津波を研究した津波のプロらしい。
1928年に生まれたドクターは17歳で終戦を迎えているはずなんだが、そんな若さで研究者だったとはさすが天才は違う。

原子力については、1956年に日本で初めて原子力事業株式会社を立ち上げたからプロらしい。
「したがって、どうやって汚染を防止するかということはよくわかっております」というが、株式会社を立ち上げただけで汚染防止がよくわかっているといわれてもねえ……。

1950年に世界初のソーラーの発明をした、すなわち新エネルギーのプロらしい。
どんな発明をしたのか全く不明だ。
「ソーラー」を太陽光発電と理解していいものかも疑わしい。
話の通りなら、1950年にソーラーの発明をしたけど、その6年後には原子力事業の方に手を付けていることになる。
「ソーラーの発明はだめだった」ってことじゃないのか?

水で走る車も作っており、新エネルギーのプロ度が高いらしい。

ハーバード大学で「アイジ―ノーベル賞」(なんでイグノーベル賞って言わないんだろう?)を受賞し、同大学より「世界で最もかしこい人(The Great thinker)」に選ばれたという。
探してみてもドクター中松自身の発信以外の情報ではそんな事実がどうにも見つけられない。
彼を取ったドキュメンタリ映画の紹介記事で「great thinker」の単語は見つかるが、「ハーバード大でThe Great Thinkerに選ばれた」(そもそもハーバード大はそんなことやってるのだろうか)とか書いてあるわけではないようだ。
ハーバード大から受けた称号としてではなく、ごく一般的な「偉大な思想家」といった意味の単語として、変人を皮肉交じりに指した言葉として使われてるようにしか見えない。

◆マック赤坂

相も変わらずのマック節。
基本的には「言い方やないか!!」とツッコまれそうなスピーチとアクション・顔芸で迫ってくる。
話の内容は主にスマイルセラピーを都でやるということ。
そして、「歌える東京都知事」「踊れる東京都知事」「スマイルができる東京都知事」としてマック赤坂をアピール。
大地震間もなくで(間もなくじゃなくても)誰もそんなものを求めてないだろうに。

ラストには「私には後がありません」といつもよりも切実なお願いが飛び出していたが、その割には落選してきたこれまでと特に変わらない内容とパフォーマンスの政見放送(締めもお約束の「スマイル!」)。
この人には本当に勝つ気があるのか疑わしい。

ちなみに今回の都知事選の政見放送で東北関東大震災に触れなかったのはマック赤坂とふるかわ圭吾候補の2名。

とはいえ、ふるかわ氏は政見放送内で2020年のオリンピックを東京ではなく仙台に招致するべきだという趣旨の発言をしており、それは震災後の復興を意識していたためと思われる。

それに比べるとマック赤坂は完全に触れていない状態。
なんという神経の太さだろう。

ちなみに手話については、正真正銘マック赤坂だけがつけていなかった。
手話の人がマック氏と一緒になってアクションしてたら面白かったのになあ。

◆杉田健

今回注目していなかったがために、もっとも驚かされた候補者。

一言でいえばホラーである。

頻繁に原稿へ目を落としながら淡々と話す杉田氏。
丁寧に、聴衆が聞き取りやすいよう話すことに神経を使っていることがわかる話し方で、話す内容はごく普通。

あたりさわりのない内容で、悪く言えば印象に残らない話であり、最初この人の政見放送を見てる間「良くも悪くも特徴のない候補者だな」くらいに思っていた。

ところが、政見放送のラストにこの印象がガラッと変わってしまう。

「そして最後に、掲示されたポスターの中のコンパス・方位磁針の写真は、人体を蝕む強力な電磁波の実際の姿です。
これを発生させる装置が、東京の街中に数十年来埋まっています。
わたくしたちはこれをどのようにすべきなのでしょうか?
日本に、この東京の街に、このような愚かで恥ずかしい装置はもういりません。
すべてを明らかにし、廃棄すべきです。
まずは公開の場で大いに議論をしていただきたいと存じます。
外圧には決して頼らない、日本自身の問題の解決。
自立と活力。わたくしはこれを求めているのです。
東京都の将来、日本の将来、そして人類の未来はわたくしたち一人ひとりの行動に託されています。」

これを最初に聞いた時、何か自分に落ち度があるのではないか、と思ってしまった。

杉田氏は常識からはかけ離れた、それまで聞いたこともないような話(少なくとも自分にとって)をしているのにもかかわらず、具体的な説明もないまま東京都の電磁波装置(それがコンパスの写真とどう関係あるのかも全く分からない)について滔々と語り続けているのである。
改めて説明するまでもないような、常識的な話題であるかのように。

「誰も知らなかった真実」を知らせようというテンションではなく、「タブーとなっているがみんなに知られている政治の話」について語っているかのようなテンションである。

まるでこの話についていけていない方が悪いかのような、「常識的な知識の不足ゆえの疎外感」さえ味わってしまった。

ハローバイバイの関暁夫が勿体つけてしゃべる都市伝説を聞いても特にどうとも感じない(フリーメーソン陰謀論とか馬鹿じゃないかとは思う)。

リチャード氏が陰謀論を大きい声、強い口調で語っているのも、本能に訴えるものは少ない(デタラメなユダヤ陰謀論で馬鹿じゃないかとは思う)。

ドクター中松やマック赤坂の政見放送は何もかもがおかし過ぎて単純に面白い領域に収まっている。

が、この杉田氏の政見放送にはゾッとしてしまった。
ほんの少し、ほんのわずかなボタンのかけ違いだが、他のものがごく当たり前であるだけにその一箇所の異常さがどうしようもなく際立って、不気味に印象付けられるのだ。

普通にしゃべり続けるだけなのにもかかわらず、圧倒的なまでの異常さを感じさせた杉田氏。
得票数5,475は彼の異常な話をごく当たり前な話として受け取っている人の人数なのかもしれない。

おまけ

東国原英夫、「無職」って! 確かにそうだけど!
おがみおさむ氏は過去に「神田川 銀河系宇宙人の地球日本研究」って本書いてるらしいんだけど、どんな本!?
今回の選挙で党派に所属してるのは泡沫候補ばっかり!
政見放送をみたい人はYouTubeにアップされてると思うのでそちらでどうぞ!

以上!

いまさら選挙

ちょひさしぶりなこうしんでありんす。

この間何もなかったわけではなく、まあ書くのが面倒だったりなんだよね。毎回バカみたいに長 文になってしまうので。
やっぱりこの空白期間で一番大きかったイベントは選挙ですね、
世間的に
わし個人のウォッチングとしてはほかにもあるわけだけど、とりあえずこのことかいておこうと 思います。

選挙で注目したのは二つ。
ひとつはまあ
「幸福実現党」ですよ。順当に。
自衛隊の皆さんで
金正日を拉致るとか、党に参加しているDr中松の「ミサイルをUターンさせる発明」(詳細不明。なぜか都知事選でもこの発明の話してたよ、あの人)を本気で使う気らしか ったり、日本の人口を3億にまで増やして年金問題解決とか、本当に楽しい公約の目白押しであっ た(単純に産めや増やせやではなく、移民とかの受け入れとかも行っての達成らしいが、それに しても人口2.5倍って・・・・・・何年かけるつもりだったんだろう?人口が増えたらそれはそれで問題 が起きるだろうし)。

しかし金正日拉致ってすごいね!
軍事が好きな人がしていた指摘で、言われてみればもっともな話なんだけど、自衛隊は専守防衛 なので(機能的なレベルで)他国に攻め入るための兵器を持ってないということなのだが、どうやるのやら。
何よりすごいのは、
これを提唱しているのが宗教指導者って所だよね。幸福の科学の人たちはな んとも思わんのだろうか。
そんな素敵公約のおかげか、結局一人も当選せず、没収された供託金は11億に上るとか。
でも今度は
学校も作るらしいし、映画も公開するしで少しも衰えみたいなものは感じないね。

まあ、幸福実現党についてはそんな感じ。みんなも注目してたと思うし、これ以上はいいかなと 。

  そしてわしが注目してた「もうひとつ」が小林興起議員(民主党)。
この人はもともと自民党の議員さんだったけど、郵政民営化に反対したことで党の公認からはずされた挙句に刺客を送り込まれて落選してしまったという人。
このたびは民主党で出馬し、小池百合子の小選挙区での再選を阻止、自らも小選挙区では駄目だったけど、比例区で復活当選だとか。

何でこの人に注目してたかというと、まあリチャード・コシミズがらみなのである。
今回の選挙で大苦戦を予想してたのだろう、少しでも多くの支持者を集めるための草の根運動だ ったと思われるのだが、小林議員(当時は候補か)はリチャード氏の講演会にゲスト出演し、そこで講演までしているのだ。

しかし、もうちょっと相手をよく調べてから出演すべきだったろう。
リチャード氏は確かに郵政民営化に反対しているんだけど、それは
「ユダヤ陰謀論」の一部であるということはわかったうえでのことなのだろうか。

リチャード氏の「ユダヤ陰謀史観」は非常に広範で、9.11同時多発テロや北朝鮮。統一協会に創価 学会、似非右翼に「国会議員隠れ在日朝鮮人説」と、ありとあらゆるものがひとつにつながっている。
リチャード氏のいう「郵政民営化」とはそういう(現実とリンクしてる部分もあるものの、妄想の類といっていい)代物であり、世間一般がしている定義とは大きくかけ離れているのだ。実際、リ チャード氏は「郵政ユダヤ化」というオリジナルなワードを発明している。
当然ながら、小林議員が出席した講演会(テーマは「郵政民営化」)でも陰謀論を展開。
小泉純一郎が陰謀集団の手先で、マスコミがそれに加担していたという「独自の視点」で論を展開していた(この会では言及してなかったが、普段小泉純一郎は隠れ在日であるとかいった話もしている)。
リチャード氏の講演に続いてゲストとして話をした小林議員の話の内容は残念ながら(?)ユダヤ 陰謀論の一環としての郵政民営化ではなく、ごくごく普通の視点からのもので、もしかしたら当日講演会場にきてから自分を招いた人間がどんな人物なのか理解したのではないだろうか。

この「小林興起が陰謀論者の講演会に出席して話もした」という事実は選挙期間中、まったくと いっていいほど話題にならなかったし、おそらく露見したところで比例区で当選しただろうから 、まったくといっていいほど選挙に影響を残さなかった出来事だとは思う。

だが今後何かの流れで小林議員個人にとって世間の風当たりが悪い方向で強まったとき、このと きのことが取りざたされる可能性が高いことは想像に難くない。
小林興起先生の無事を願うばかりである。

――おまけ
具体的な話はまたいずれ書く予定だけれど、リチャードは最近右翼系の団体「主権回復を目指す
会」&「そよ風」とトラブルを起こしており、彼の自宅にまで両団体のメンバーが押しかけて大騒ぎをする事態に。
もしこのトラブルが選挙期間中に起きていたら、どうなっていたことやら。

起源

相当前になるんだけど、このブログで「万葉集は韓国語で読める」っていう本があったって話を紹介したことがありますな。

いわゆる「韓国起源説」。

例の本は確か90年代の頭ごろの本じゃなかったか、まだ「韓国起源説」って名称はなかったんだと思う(名称っていうほど練られた名前でもないけど)。

先日チャットで「韓国起源説」が話題になったのでちょっとググってみたりした。

あるねえ。沢山。

剣道や折り紙、じゃんけんあたりは聞いたことあるんだけど、氷山の一角ですな。日本にも「義経=ジンギスカン説」や「日ユ同祖論」、「竹内文書」などの説はあるけど、こまごまとした文化の一コンテンツにまで及んでいるものはあまり見かけない(「トンデモ本の世界」では自動炊飯器やエレキギターなどが古代世界の発明であるというの本が紹介されてたな。でも日本起源説ではないね、これは)。

で、これを種に韓国を批判する流れがあるんだけど、わしとしてはトンデモ話をそれそのものを楽しむために収集するので、別に韓国の批判とかどうでもいいのである。そもそも各説がどの程度韓国で浸透しているかもわからないので、「これだから韓国人は」と韓国人一般を揶揄する気も起きない。

たとえばDr中松一人の言ってることを代表的な日本人の認識として拡大解釈させたら、「フロッピー日本起源説」になるし「日本人はミサイルをUターンさせる技術があると主張している」ってことになってしまう。それはちゃうよね。

Wikiでは出所が判明している、ソースが韓国国内の著名人や団体、メディアからとわかっている起源説が紹介されているんだけど「韓国国内外における、説の認知度・浸透度は問題としない。」と但し書きがついているので、やはりメジャー度合いは不明。

もちろん、日本でのトンデモ話が認知が低いものがほとんどなわけで、わし個人の楽しみの視点からすればそんなことは些細な問題。メジャーである必要は特になし。

でも見過ごせない問題として「捏造」がある。

なんでも中国や台湾発の「韓国起源説」というものがあるとか。政治的な思惑で作られたものだろか。

トンデモ話は「本気度」が重要なのに、ウソで作られた説まであるとなるとちょっと迷惑な話である。「起源説偽装」だね、これは。

中国やらなにやら(中には日本人の一部の人間がものもあるかもね)のデマに乗ってやる義理はないので、すぐさま飛びつくわけには行かない感じだ。類似品に注意である。

チャットをしてて残念に感じたんだけど、チャット相手のみんながこの「捏造問題」にほとんど頓着しなかったこと。「韓国起源説」に関して詳しい人は「これだから韓国は・・・・・・」という流れの人が多かったんだけど、「ウソで作られた話があるんだってよ!」ってことにはあまり関心がなかった。

韓国批判が目的の人にとっては韓国批判につなげられそうならそれがデマでもかまわないのだろうか?

それでは韓国の文化的優位性を主張したくて起源説をぶち上げた連中とかわらなくなってしまう。

 

おまけ――

文化的優位性を目的として起源説を主張しているという人もいれば、そう主張していると商売上儲かるだろうという目論見からそう主張している人もいそうで、さらにこれは篩にかける必要があるかもしれない。商売目的で主張している人は当然本気じゃないだろうから、いまいち面白みにかけてしまう。やっぱり本気が面白いのだ。

獣と人

まあ前回の記事とは打って変わってアニメの話なんだけど、最近見ているアニメに「獣の奏者エリン」というのがある。局はNHK教育。

ワシ個人的評価は非常に高いのだけれど、周囲にこれを見てる人は残念ながらいないのである。いい作品だと思うのだが。

原作者は昨年ワシを熱くさせた「精霊の守人」という作品と同じ上橋菜穂子さん。守人シリーズは現在「虚空の旅人」まで読破。文庫版で早く続き出ないかね?

というわけで今回は獣の奏者エリンについて語る。みんなも見てくださいな。

大体のストーリー

主人公のエリンは10歳の少女で、母親であるソヨンと二人きりで暮らしている。母親の仕事は闘蛇と呼ばれる戦に使われる獣(巨大なトカゲのような感じ)の医術師。もともとソヨンは「霧の民」と呼ばれる異能(といっても文化が、というレベル。超能力者とかじゃないよ)のマイノリティ出身で、人によってはそのことにつっかかってくるような少々肩身の狭い思いをする立場。しかしながらそれに屈することなく有能な医術師として活躍するソヨンを見て育ったエリンは、自分も闘蛇の医術師になることを夢見る。獣の医術師としての現実を知るソヨンは、エリンが持つ危うい憧れを諭しながらも、エリンの持つ才能を伸ばす手助けをする・・・・・・・・しかし!

というのが前半のあらすじ。興味がある人はぜひ本編を。NHKだからすぐ再放送やると思います。

 

この作品がワシを魅了したのは、何よりもそのストイックさである。

少女と動物、という組み合わせであれば、普通はやっぱりハートフルというか、動物と人間の関係性にものすごいフィクションが存在する話になるものだと思う。まあ媒体にもよるんだろうけど、少女マンガやアニメ原作の話なら「動物に対する乙女の愛が!奇跡を!」みたいな話になるんじゃないだろか。角川映画あたりでもそうか。

「エリン」にはそういう甘い幻想がない。ファンタジーなのにある意味ファンタジーではない。闘蛇は所詮獣で、後に出てくる神々しさを兼ね備えた王獣と呼ばれるもやはり獣なのだ。それらは「音なし笛」と呼ばれる特殊な道具によって人間に使役される立場にあり、もし「音なし笛」がなければそのヒエラルキーは簡単に逆転する。物語中では人間のコントロール下を離れた獣たちが如何に危険であるか、というエピソードがふんだんに出てくる。

獣たちが危険、という話だけではなく、獣とそれを使役する人間との立場の優位性を保つために、人がどのようなっことを獣に施すか、というエピソードも出てくる。このあたりは猛獣とも愛情があれば万事OK!と考えちゃう子供たちや、子供じみた幻想に憑かれた大人にはちょっと重い展開ではある。だが、そういう人と獣の間に確かにある壁を正面から描いてるところが何よりの魅力だと思うのだ。

このストイックさというか厳しさは「風の谷のナウシカ」で見せ付けられるやさしさとは真逆だとおもう。姫姉さまは超巨大生物である王蟲と念話して分かり合っちゃったり、金色の野に降り立っちゃったりしているわけだが、エリンにはそういう展開はない。もちろん動物の世話をするものとして愛情は持つのだけれど、相手が自然には人の統制下に入るような生き物ではないために、確実な隔たりがある。

動物と接するのに愛情は必要なものの、それだけでは不十分で、人と動物の間のルールというのがあると思う。そこにしっかりと光を当てているのが「エリン」だと思う。

動物と人の間の距離感を物語に盛り込んだこの作品は、残酷さを感じさせるハードな展開もあるけれど、それでも子供が見る番組としてふさわしい作品だと思うのです。

おまけ――

こんな風に買いといて終盤の超展開によりエリンが姫姉さまよりの超常的なこと起こしちゃったらどうしよう・・・。すごいがっかりするだろうなあ。

1と10

トンデモな人を見続けていると、そのジャンルはともかくなんというか一つの傾向が見受けられる。
それは「1がいいと思ったから、10を支持する」である。
 
トンデモな人は、その珍説・奇説に「よい思想」というものを絡めてくることがある。
特にニセ科学関連では道徳観の成就を科学(っぽいもの)で解決しよう、説明しようという考えが多く、根源が「善意」であることが伺えるものが結構ある。
で、だ。
ニセ科学的なものやオカルトを信じちゃう人には、そういう「善意」の部分が好きだから、その説のほかの部分がどんなに破綻していても支持してしまっている人が多いように思える。
先日、本も読んでみた「水は答えを知っている」にamazonで星を多くつけている人の中には、これが科学的に証明されていない話であるということをわかった上で、支持している人がいる。
それは詰まり、この本で書かれている「ありがとう」という言葉は「良い」だの、「クラシック音楽は良くて、ロックは悪い」だのといった(突き詰めれば「きれい」だと感じる外見のものは良いという領域まで達する。ブスは悪なのかね?)思想が自分にとって良いと思うから、これを支持してしまうのだ。
 
ニセ科学関連じゃなくオカルトで例を挙げれば、最近日本でメディア露出の高いジュセリーノ
結局のところ彼の与太話を信じる人間も、その予言が外れまくってることや、予言してる本人が外れても開き直るさまを見せ付けられても信じることをやめずに、「未来へ警告している」ことが重要だから、と論点をずらしていってしまう。
未来に対して危機感を抱くということに、普通は予言なぞいらないわけで、当然「デタラメな予言をいってる迷惑な人」が垂れる説教じみた警告なぞ聞く気にはなれない。
 
同時多発テロ自作自演説を旗印に平和運動をやっているきくちゆみというひとは、人がとってしまうそういった行動を極端にしたような人だと思う。
もともと反体制的というか、現在まかり通っているものに対して「それでいいのだろうか?」というような疑問を持った人なのだと思う。
それ自体は決して悪いことではないんだけど、だからといって現体制を批判するもの、現在広く知られている、支持されているものに反対さえしていれば何でもウェルカムというような態度をとってしまっているのは問題だ。
 
9.11自作自演説でいえば、とにかく反アメリカ、反ブッシュ的なスタンスであればその信憑性に対してなにも疑問を抱かずに無邪気に信じている。
彼女が紹介してきた複数の自作自演説は、結局のところどれが本当かわからない。
それぞれが矛盾するような複数の説をとにかく紹介していて、一貫しているとはいえない(ビルが如何に破壊されたかについてだって、ミサイルや爆弾、公式発表どおり飛行機だけどそれはあくまで米政府主導による、など意見が分かれている上にそれぞれの説を決定付ける証拠は無い)。
だが、おおむねのところでアメリカの現在の体制への批判になっているからOKとしているように思える。
 
彼女を支持する人もそうだ。
おそらく多くの人が自作自演説を声高に叫んでいるから、という理由で彼女を支持しているだろうが、「若くしてなくなった後、意識体となったマシュー君が銀河艦隊司令官ハトンの声を伝えてきた結果、同時多発テロは陰謀であるとわかった」(これはきくちゆみという人を悪く言うためにわしが作った創作電波話ではない。彼女が信じている話の一つで、この話がきくちゆみの同時多発テロ自作自演説の根拠の一つである)といった話をどれだけ信じているのやら。
もしわしが同時多発テロ自作自演説に染まった人間だとしても、こんな電波系の話も信じちゃってる人を支持しようという気にはならないだろう。
 
完璧に考えが自分とマッチする人などまずいない。
「この人はAについての考えでは根拠や論理展開は筋が通っているし、賛成できるが、別の事柄Bについて考えでは賛成できない」というのは往々にしてあって、それが当たり前なんだと思う。
だが、「この人のAについての結論が好き。しかし結論に至るまでの過程や根拠は意味不明だ。」のであれば、それは支持するべきではないと思う。
 
地球温暖化を憂う人がいて、その人が温暖化の原因が「猫の暖かさ」にあると論じたときはどうだろう?
当然却下である。
地球温暖化が問題だという意識を支持するとしても、猫のせいだと考えている相手なら、対処法について同意に至ることは無いだろう。
今後この人と対話をするというのなら、それは「猫のせいじゃないと思います」というところから延々と話していくことだろう。
 
くだらないたとえ話でいえば、そういうこと。
 
おまけ――
こんなきくちゆみが一部の高校や大学で講演をしているというのだからたまらない。
「判断するのはあなた達です」といいながら、偏った情報しか授けないのは明らかに誤りである。
果たして彼女は講演先で「マシュー君」の電波話まで包み隠さず話しているだろうか?
そこまで話しているなら逆に安心なんだが。
それにしても銀河艦隊って何
地球に偉そうに説教電波を発しているわりに、艦隊という軍事組織を手放せないところを見ると、それほどたいしたやつらではあるまい。

スーパー系

いわゆる「ロボット物」には「スーパー系」と「リアル系」がある。

テレビゲームとして長くファンの支持を集めている「スーパーロボット大戦」シリーズによって区別されるようになったという。

定義が明確にされているわけではないが、スーパー系はロボットが敵に有効に対抗できる唯一の手段であったり、ちょっとやそっとではへこたれない頑丈さ、必殺技がある、操縦者が技名を絶叫しながら攻撃(作品によっては脳波コントロールや音声認識システムなどといった理由付けがなされている)、物理法則を無視した動き、大きさなどが特徴として挙げられる。
対するリアル系は、ロボット(作品ごとの一般的な呼称が違う)がごく一般的な兵器の一つとして存在する世界観、量産型で大量に同型機が存在したり、数発被弾すれば壊れてしまうくらいの強度であったりする。「リアル系」の走りといわれる「機動戦士ガンダム」では、主人公の搭乗機が修理中で出撃できなかったり、ほかの人が勝手に操縦したり、時限爆弾で破壊されそうになったりと、単にスペックというだけでなく、作品中の扱いも「乗り物」としての性格が強かった。
「装甲騎兵ボトムズ」では、ロボット(作中ではAT<アーマード・トルーパー>と呼称)は主人公の乗機を含めて完全な大量生産品であり、主人公キリコは乗っては壊しを繰り返す。この作品ではロボットに特異性は見られず、その代わりに主人公が猛烈に特異な存在となっていた。

科学考証に力を入れているという点でリアルロボット物は高尚なイメージ、あるいは頭よさげな雰囲気みたいなものはあるが、そもそも人型の巨大兵器が無理だし、ロボットはあくまで物語の舞台装置なので、どっちが高級ということはないだろう。

実際のところ、リアルロボットとスーパーロボットの明確な境はなく、演出を派手にした結果、あるいは登場人物と乗機を徹底して一致させた結果、主人公機の無敵さ加減を表した結果として「スーパー系のようなリアルロボット」というものも少なくない。
それは「ガンダム」シリーズなどにおいても「W」や「G」、「00」などで主人公機が固定になっているし、「新世紀エヴァンゲリオン」や「機動戦艦ナデシコ」では機体を防御する「ATフィールド」や「ディストーション・フィールド」などバリアの役目を果たす存在が「機体自体は常識的な強度だが、作中で簡単にはぶっ壊れない」設定として活きている。
特にエヴァンゲリオンにおいてはスーパー/リアルの位置づけをあいまいにさせていると思う。

で、それが一体何の話かというと、別にロボット物の魅力について語るのが本題ではない
ただ、リアル/スーパーという概念は、あいまいなものであり、あえて分けるとするなら、作品として考証と演出や見せ方の重心の置き方にあると思う。
作品として主人公を際立たせたり、壮大なテーマを追いかけていけば、自然とスーパー系によっていくと思うし、物語を登場人物の等身大な人間像のドラマにしていけばリアル系になっていくように思える。

見せ方にこだわって、考証に目をつぶっていけばスーパー系よりになるとおもうのである。
これはなにもロボット物に限らないと思う。
物語をドラマチックにしたくて(あるいは単に取材不足か)考証に指摘されるところが多かった「恋空」(読んでない)は「スーパー系ラブストーリー」だろう。

このような(強引な)解釈をしていくと、とあるシリーズはスーパー系になる。

「空想科学読本」シリーズである。
特撮やアニメ、映画、昔話などで描かれた現象を科学的に突っ込むというこのシリーズ。一通りのメジャー作品をネタにしたためか、いまでは歌の歌詞や随筆など、明らかに人文学的な、自然科学の範疇外ものまでネタにひっぱっているようだ。
SF作家の山本弘氏によって資料のいい加減さや、映像の解釈の強引さなどが指摘されているが、これはおそらくこのシリーズがスーパー系であるためなのだろう。

読み物としての面白さを追求するため、あるいは本が「ツッコミ」ものとして成立するために、正確さに目をつぶっているのである。
実際、その様に「空想科学読本」シリーズを擁護する意見も散見される。
面白さが重要なので、不正確さに目くじらを立てるのはいかがなものか、と。
もちろん「科学的に突っ込みを入れる」というコンセプト自体が普通に考えると、正確さが重要なリアル系なので、矛盾がある。
特撮やアニメに詳しい人だからこそ、この不正確さに気づいたわけだが、かのシリーズはそうでない読者が大半であろう(だからこそ先に挙げたような擁護意見がでてくるのだろうが)。
そういう不正確さに気づかない人にとっては、「空想科学読本」の情報がすべてだろうし、その検証が妥当だと考えてしまう可能性が高いので、気をつけなくてはいけない。
空想科学読本は、「リアル系」ではなく「スーパー系」科学読本なのだ。
どのくらいスーパーなのかは諸説別れると思うが、グレンラガンくらいじゃないかなあ。

おまけ――
「天元突破グレンラガン」は名作である。
「あえて」リアルさを排除していき、その排除した分の何倍もの「熱さ」と「ドラマ」をみせている。
あの熱さが女性に伝わるものかはわからないが、男には間違いなくお勧めである。

真相究明

やっぱり自分のに正直に生きるのって大切ね!
わし、トンデモについての記事を書くのをためらうのをやめにする!
 
・・・・・・とまあ宣言はおいといて。
なんでも11月1日、11月3日に「9.11真相究明フォーラム」「第2回 真相究明国際会議」なる集会が開催されているとのこと。
タイトル的に結論ありきな雰囲気が実に香ばしい。
ま、前者は結構まともなプログラムが組んであるそうだ(後者はそうではない、時間配分が不平等で陰謀肯定論者寄りであったため、否定論者として呼ばれた人が参加を辞退してしまった)。
11月1日は大阪で、11月3日は東京で、とのこと。
この二つのイベントに出てきているのがきくちゆみとデヴィッド・レイ・グリフィン博士。
デヴィッド・レイ・グリフィンについては、言及した日本語記事があまりないのでいえることは少ないが、この博士が神学の博士であることを考えれば、(ビルの崩壊やらなにやらについて)ほかのド素人と大差はない
かつて常温核融合で世間を騒がせた核物理学者のスティーヴン・ジョーンズのほうがまだ(肩書き的に)マシだろう。
 
この博士、なんでもこないだのノーベル平和賞にノミネートされたとか何とか。
受賞されたならマジで深刻な事件だが、多々いる候補者のなかに一人位どうしようもないのがいたって、まあいいと思う。
ノーベル平和賞の候補者を推薦できるのはノルウェー国会議員のようなので、藤田幸久みたいな痛い議員がノルウェーにもいたのだ、ということであろう。
ちなみにノーベル賞の選出理由や候補者名などといったものは、50年後になるまで公開されない規則。
今回のノミネートの情報は、「われわれが候補者に推薦しました!」という団体の声明によるものであり、公式な情報とはいえない
 
そしてきくちゆみ
日本語で911陰謀論を流布している人なので、日本人的にはこっちの人のほうが問題だろう。
以前にもちょっと触れた(『牛乳はモー毒!?』とかいうアレな食育冊子に関して)が、「自然食、自給自足で健康万歳! 911陰謀論で平和運動やってます!」な人である。
健康を目指すことも平和運動もそれ自体はいいことだと思うが、このひとは健康に関しては妙な夢風船という"造水機"(しかもかなり高価)平和に関しては陰謀論と、オンパレードな人である。
 
このひとは自分の思想に味方するような言説には無批判でウェルカムなのだ
現在このひとがわっしょいしてる人に、マシュー・ワードという人がいる。
かれは1980年に17歳で既に亡くなっており、彼の母親にチャネリングでメッセージを送ってきている意識体なのだそうだ。
 
この紹介だけでも、もはやその言葉は聞くに値しないとわしは考えるわけだが、高次元の意識体(なにそれ?)だからこそ内容に真実味がある、と考える人もいるのだから、世の中は実に広い。
この霊界通信(のおばさん)がのたまう「世界を裏で支配するイルミナティ」とか「優しい地球外生命体」とかを真に受けているようで、ブログでちょくちょく紹介しているし、マシュー君(の母親)の書いた本の日本語版を出版するべく精力的に活動している。
どうして信じられるんだか、はっきり言って理解の範疇を超えている。
 
こんなひとの911陰謀論は、まあどうしようもない。
 
911陰謀論に対して最も根本的な疑問に、
これだけの大規模な謀略(FBIやらCIA、軍などアメリカの公的な機関が暗躍して飛行機と同時に巡航ミサイルを撃ち込んだり、飛行機をビルに突撃させると同時にビル爆破をして3000人もの自国民の命を奪うような自作自演)があったのなら、それにかかわった人間の数は膨大であるはずだが、自作自演について内部告発するような人間が一人も出てきていないのはなぜか?
という問いがある。
よく陰謀論者は「ビルが爆破っぽい」とか「崩れ方が変」といった印象感想を出発点に、映像をこまごま計算して「これは変だ」と主張するパターンが多い(それに対する反論を行っている人もちゃんといる)。
だが、実のところそれらはいわば「重箱の隅をつつく」作業である。
先にあげた根本的な疑問に答えることができないから、そういった素人には簡単に反論できそうにない議論に(同様の素人が)もっていくのである。
今では事件から7年が経過。
時間が経てば経つほど先ほどの根本的な疑問は効力を増していく。
いつまでたっても白状する人や内部告発する人間は出てこない。
 
こういった「内部告発者0な件」について、きくちゆみは「もし911事件が内部犯行なら内部告発者がいないのはおかしい」なる記事Patriots Question 9/11というサイトを紹介し、多くの内部告発者がいると反論している。
だがこのサイト、ぜんぜん内部告発などではない
このサイトに書かれた文章は、せいぜい公的機関の関係者がNISTなど政府公式発表などに納得できないといった個人的な記事(ブログ)やコメントを引っ張って来ただけの代物だ。
先にあげた「根本的な疑問」での内部告発というのは、事件に直接かかわった人間が、ほかの加担者や具体的な方法、自作自演の手順、自分がかかわった部分などについて告発することである。
「ルース・チェンジ」や「ボーイングはどこへ行った?」などの翻訳を手がけるほど(一部誤訳があるとの指摘はあるが)、英語に通じている彼女が、かのサイトの内容を読み違えるというのはちょっとおかしい。
日本語が不自由なのか、あるいは英語が読めない人を騙すために嘘をついているのかのどちらかだ。
わしの方は英語に堪能な人にお願いして、このページに書かれていることの大体ところ(分量が多いので、とても「全部訳して」などといえないわ)をおしえてもらった。
自分でも何人かぶんの記事は読んだ(下手な英語力で)けど、やっぱり内部告発ではなかった。
 
こんないい加減でしかも怪しげな人が先頭に立っていることは、まっとうな平和運動家にとっては害悪でしかないだろう。
平和を希求し、戦争をおっぱじめたジョージ・ブッシュが気に食わないのには同感だが、だからといってこんな沸いたことを言っても何にもならない。
むしろこの手の陰謀論者が平和運動の声を上げればあげるほど、まともな平和運動の人々がトンデモと同列に見られる事態になってしまうだろう。
平和運動をやっている方々は、これらトンデモを追っ払う努力をする必要があるだろう。
 
おまけ――
先にあげたきくちゆみ氏の記事を読んだら、件の部分が変更されていた。
 変更前
「内部告発者、たくさんいますよ。昨日のブログで紹介したサイト「Patriots Question」に名前を連ねている140人以上が米軍関係者です。中にはかなり階級の上の人もいます。よくごらんください。」
 変更後
「厳密な意味での内部告発者はシベル・エドモンズぐらいでしょうが、政府関係者、軍関係者、パイロット、建築家、エンジニア1600人ぐらいが政府公式説に疑問をなげかけていますよ。昨日のブログで紹介したサイト「Patriots Question」に名前を連ねている140人い以上が米軍関係者です。中にはかなり階級の上の人もいますのでよくごらんください。」
どうやら同様の指摘を行った人がいたらしい。
まあ、あからさまだから誰でも気づくといえばそうだからねえ。
かの記事は10月4日のものなので、ひと月も経ってから話題にしたわしが遅かったのね。
 
ちなみに変更後の記事に書かれている内部告発者のシベル・エドモンズが行った内部告発というのは、2002年に彼女が「米連邦政府は、アルカイダが航空機を使ったテロを計画しているという事実を9・11事件以前に知っていた」という証言であり、結果、国家機密特権を侵したとして解雇されたのである。
彼女の行った内部告発は政府の危機管理の甘さを糾弾するものであり、内容的にも自作自演説とは全く無関係(というかアルカイダの犯行という前提なので逆の立場)である。
 
政府公式見解と一致するの内容の内部告発を、自作自演説を裏付ける内部告発であるかのようにさらっと書いてるあたり、実にタチが悪い。