カテゴリー別アーカイブ: 東日本大震災陰謀論

2011年3月11日に起こった東日本大震災をリチャード・コシミズはユダヤ人の陰謀だと主張しています。それにかかわる記事です。

2011年の名著

2012年6月9日に『トンデモ本大賞2012』が開催されました。

ここ数年参加していたのですが、今年はチケットがすぐに売り切れとなってしまったため、ニコニコ生放送で視聴することとなりました。

毎年本を出版するおかげで、リチャード氏の本も候補作として毎年カウントはされているのでしょうが、『小説911』でのノミネート以来、残念ながらトンデモ本大賞の会場で紹介されることはありませんでした。

そして今年。
昨年の地震に関連して、いわゆる「人工地震モノ」の多数出たわけですが、同じジャンルで何作もノミネートされる可能性は低いため(基準が設けられているわけではありませんが、心情的に)、このジャンルからは1作しか出ないだろうなと踏んでいました。

そうなると(トンデモ本としての)他のジャンルに比べると、ライバルが少し多いわけで、「人工地震モノ」の中でも群を抜いてバカな内容でなくてはいけないわけです。

その結果か、『311同時多発人工地震テロ』はノミネートされませんでした。残念。

 

人工地震をネタにした本でノミネートされたのはこちらの本。

会場とニコ生視聴者から高い支持を受け、2012年のトンデモ本大賞をかっさらってしまいました。
おめでとう!

 

内容はというと、リチャード氏をはるかに超えるバカバカしさ。
「ACは公共広告機構の略ではなく、アンチ・キリストの略」だとか「ターミネーターの映画のワンシーンに911の日付がある(実際には車両の高さ制限の数値)」とか、「ペ・ヨンジュンと水の飲み方が同じなので、菅直人は韓国人」だとか、抱腹絶倒な奇説が詰め込まれた一冊となっているようです。
とくに眼鏡市場の眼鏡の一式価格15,750円の数字を分解して足すと、1+5+7+5+0=18 つまり666になる」は最高でした。
この手の数字遊びがいかに無意味なものかよくわかります。

ただ、これがすべて泉パウロ氏のオリジナルな主張かというとそれは疑わしく、「『読まずに』検証!本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証本の件」で指摘されている通り、検索エンジン使って見つけてきたネタを節操なく鵜呑みしたものがかなりの部分を占めているようにも思われます。

しかし、その節操のなさがむしろトンデモ本としての評価を高め(正直リチャード氏がまともに思えてくるほどです)、結果としてリチャード・コシミズ、ベンジャミン・フルフォードなどおなじみの面々を抑えてのノミネートにつながったのでしょう。

まあ、機会があったら読んでみようと思います。このブログで話題に上げるかはわかりません。

 

2012年6月20日に発刊予定の新作『リチャード・コシミズの新しい歴史教科書』は、果たして来年ノミネートされるでしょうか。
うーん、むずかしそう。

 


トンデモ本大賞2012のほかの候補作は、以下の通り。

エル・カンターレを2年連続ノミネートに導いたこの本は、大川親子の漫才風のやり取りがなんだか微笑ましい内容の一冊。
ちなみに大川総裁は、2009年11月23日から2010年11月10日までの1年間52冊の書籍を発刊したため、ギネス世界記録を取得しています。
週刊誌でも合併号などがあるため、年間に50冊くらいしか出てないんですけど。

 

本文がすべて短歌調(しかも字数があまり守れていない)で書かれているという一大叙事詩。
アブダクション(誘拐)によって記憶が1日単位で消えてるせいで、学校に持っていく教科書を間違えたり、タイムカードがおされてなかったりするそうです。
でも宇宙人にさらわれてその程度の害で済むならいいような気もします。

 

ノストラダムス本の中で最多ページ数を更新するほど分厚く、定価4,300円もするという高価な書籍。
日本のノストラダムス研究者としては珍しく、フランス語が読めるという稀有な人材ですが、この手の研究にありがちな超強引な解釈と、原文から大きくかけ離れた和訳で予言書の解釈を連発しています。

関係があればいいってものでもない

なぜかはよくわからないが、リチャード氏によるとマグナBSP社は裏社会にとって一番触れてほしくない部分らしい(ただし「外国人官邸常駐」と同率首位のようだ)。

マグナBSP社と原子力発電所との関係についての情報はインターネット上ですらほとんどソースをみつけることはできない。
見つけることができるのは、せいぜいHAARETZ紙の記事JERUSALEM POST紙の記事くらいなものである。
リチャード氏が『「マグナBSPなんて、福島原発と無関係だ!」』で挙げている「週刊現代経済の死角」は読む限り、上記2紙の記事を和訳して専門家のコメントを付け足した程度のものである。

 

◆マグナBSPと原発の関係

これらのソースから読み取れることは何かといえば、「福島原発ではマグナBSP社の作ったセキュリティシステムが導入されている」という程度のことである。
ところがこれが陰謀論者の手にかかると「マグナBSP社が原発の安全管理を担当している」ということになってしまうのだからたまらない。
「security system」を誤訳した結果の「安全管理」と思われるが、日本語の上では大いに誤解を生む訳だろう。
「安全管理」という単語で訳してしまうと、さも「原子炉の安全な運用を管理するための業務」を行っているような印象を受けてしまうが、実際にはセキュリティシステムのを作ったというだけで、現場の警備スタッフでさえマグナBSP社の人間ではないだろう。
リチャード氏やほかの陰謀論者はこの誤解に付け込んで「疑惑」を盛り上げているのだ。

 

◆陰謀論的クレーマー

「security system」を「安全管理」と誤解することで、マグナBSP社が怪しいと思わせるような主張が出てくる。
それが「原発が事故を起こしたにもかかわらず、原発の安全管理を請け負ったマグナBSP社に対して政府は一切責任を追及しようとしない」という主張である。

だが、先にも書いたとおりマグナBSP社は警備システムを作ったというだけであって、今回の原子炉で起きた事故そのものに対して特に責任を負うようなものではないだろう。

もしも今回のことが原発内にテロリストが侵入して破壊活動を行ったという事件であれば、警備上の問題であるので、マグナBSP社に対してセキュリティシステムに不備や弱点がなかったかなどを調査するという対応はあって当然だろう。
だが今回の福島原発の事故は、大地震とそれに起因する津波によって外部電源の喪失や冷却システムの破壊が引き起こされたという天災である。
天災が引き起こしたことについて警備システムの製造元が責任を問われるというのであれば、むしろそっちの方が不自然だろう。

たとえばパソコンが地震の揺れで転倒し、壊れてしまったとする。
その責任はどこにあるだろうか?
転倒防止の対策が不十分だった持ち主か、それともパソコンを丈夫に作らなかったメーカーか、せいぜいその二者だろう。
だがリチャ―ド氏ら陰謀論者の主張では、パソコンにインストールされているウイルス対策ソフトのメーカーの責任を追及しないのはおかしい、ということになる。

 

もしリチャード氏らが主張するようにマグナBSP社の責任を問うようなことがあれば、それは外国籍企業に見当違いな責任をとらせようという頓珍漢なクレーマー行為でしかないのだ。

 


《参考記事》
日本の全ての原発の安全管理を行う契約を請け負っている会社が、イスラエル企業だった?本当ですか?
「米国人官邸常駐」と「イスラエルマグナBSP社の安全管理」が一番触られたくない部分でしょう
「マグナBSPなんて、福島原発と無関係だ!」
richardkoshimizu’s blog より)

Israeli firm which secured Japan nuclear plant says workers there ‘putting their lives on the line’』(HAARETZより)

Israeli firm’s cameras recording Japanese nuclear core』(JERUSALEM POSTより)

福島第一原子力発電所事故』(Wikipediaより)

Project “SEAL” を読もう

じきに1周年を迎える東日本大震災に関する陰謀論で、なんとなく棚上げになってる感じが個人的にはしていたProject”SEAL”の表紙と概要の部分を今回は紹介します。

これはWikipedia英語版の「Project Seal」の項にあったリンク先で配布されていたプロジェクト・シールの最終報告書のPDFファイルから文字を起こしたものです。
Wikiからのリンク先は現在リンク切れですが、以下のリンク先で同様のものが見られるようです(ファイルサイズが大きいので注意してください)。

http://www.wanttoknow.info/documents/project_seal.pdf

うまく邦訳できればよかったのですが、翻訳エンジンに毛が生えたレベルの和訳しかできずにみっともなかったのと、正確さに不安があったため原文のみとします。

また、配布されていたPDFファイルには最終報告書のすべてが記載されていなかったのと、概要を読めれば必要なことはわかるだろうということで、表紙と概要の部分だけ掲載します。


DEPARTMENT OF SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH WELLINGTON, NEW ZEALAMD

The FINAL REPORT of PROJECT “SEAL”

by Professor T.D.J.LEECH
SCHOOL OF ENGINEERING AUCKLAND UNIVERCITY COLLEGE ARDMORE, NEW ZEALAND
18th December,1950



SUMMARY.

The project “SEAL” had its origin in a request of the Commander South Pacific Area (COMSOPAC) during April 1944, to the New Zealand Government for an investigation into the potentialities of offensive inundation by waves generated by means of explosives.

During the period from February to April 1944 exploratory trials in New Caledonia indicated that there were reasonable prospects of developing techniques for favourable sites.
The request incorporated two phases – the development of techniques, and the application of these to a trial upon an operational scale.
Owing to changes in policy at a later date, the second part was cancelled.

The work was carried out by the 24th Army Troops Company, New Zealand Engenieers with the co-operation of the Royal New Zealand Air Force, The U.S. Navy and the Royal New Zealand Navy between the 6th June, 1944, and the 8th January 1945.
Some 3,700 experiments were carried out with charges ranging from 0.06 lb. to 600 lb. in weight.
T.N.T was used generally, although O.E., nitoro-starch and geliginite were used in some cases,

On the 25th July 1946, the second atom bomb trial took place at Bikini Atoll, under conditions permitting of direct comparisons with forecasts based upon the work of the “SEAL” Unit.
these forecast were verified within the limits of experimental error.

The investigations lead to the conclusion that offensive inundation is possible under favourable circumstances.
Given low lying forshores and a shelving bottom off-shore, wave amplitudes of the order of those for recorded tidal waves, which have been disastrouces, can be obtained.
While T.N.T or other explosives can be used, the engineering work especially involved introduces difficulties of considerable magnitude.
The use of atomic bomb as multiple charges may be more practicable.
The following matters of detail havebeen established:

(a) There is an improvement in the amount of energy transferred from the explosive to the water in the form of wave motion with increasing sizes of charges (paragraph 11.7).

(b) The use of explosives at the upper critical depth adjacent to the water surface offers the advantages of higher performance and convenience as compared with deeply submerged charges (paragraph 6.2).

(c) The use of multiple charge arrangements imparts directional properties to the wave pattern, and produces markedly increased wave amplitudes along the axis of symmetry of the charge positions (paragraph 12.81).

(d) Single charges are impracticable (paragraph 15.3).

(e) Compared with recorded tidal waves, the wave lengths of the waves generated by explosives are smaller for given amplitudes.

(f) The ratio of the depth of water to the wave length at the charges is important, because for depths less than one-half the wave length, the energy efficiency falls rapidly with decrease in depth (paragraph 7.1).

(g) Hydraulic model studies are imperative before an assessment of the effect of inundation can be made, and for the determination of the beat arrangement and position of charges (paragraph 15.6).

(h) For single charges, the empirical relationships have been confirmed by the observations made during 25th July 1946 (paragraph 15.4).

much work has yet to be done before all phases of the problem can be considered to be in a satisfactory position.

※原書と比較してスペルミス等ありましたらコメント欄にてご指摘お願いします。


1950年に書かれた最終報告書の段階で兵器として成果が上がっているとは言えないことや、そもそも地震とは無関係であることなどがわかります。

この報告書を基にアメリカが人工大地震&大津波を起こしたというのはあまりに飛躍が過ぎますね。
1950年のこの最終報告書より後に研究が再開して発展を遂げたというのなら、まずはそのことから証明していく必要があるでしょう。

リチャード氏の講演会やブログでは、この最終報告書の表紙の画像が再三使われていることから、リチャード氏がこの文書のPDFを入手してるのはほぼ確実なんですけど、いまだに人工地震説の補強材料に使っていますね。

「誠実さ」あるいは「情報分析力」のいずれかに瑕疵があるものとみなされても仕方ないでしょう。

Project "SEAL" を読もう

じきに1周年を迎える東日本大震災に関する陰謀論で、なんとなく棚上げになってる感じが個人的にはしていたProject”SEAL”の表紙と概要の部分を今回は紹介します。

これはWikipedia英語版の「Project Seal」の項にあったリンク先で配布されていたプロジェクト・シールの最終報告書のPDFファイルから文字を起こしたものです。
Wikiからのリンク先は現在リンク切れですが、以下のリンク先で同様のものが見られるようです(ファイルサイズが大きいので注意してください)。

http://www.wanttoknow.info/documents/project_seal.pdf

うまく邦訳できればよかったのですが、翻訳エンジンに毛が生えたレベルの和訳しかできずにみっともなかったのと、正確さに不安があったため原文のみとします。

また、配布されていたPDFファイルには最終報告書のすべてが記載されていなかったのと、概要を読めれば必要なことはわかるだろうということで、表紙と概要の部分だけ掲載します。


DEPARTMENT OF SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH WELLINGTON, NEW ZEALAMD

The FINAL REPORT of PROJECT “SEAL”

by Professor T.D.J.LEECH
SCHOOL OF ENGINEERING AUCKLAND UNIVERCITY COLLEGE ARDMORE, NEW ZEALAND
18th December,1950



SUMMARY.

The project “SEAL” had its origin in a request of the Commander South Pacific Area (COMSOPAC) during April 1944, to the New Zealand Government for an investigation into the potentialities of offensive inundation by waves generated by means of explosives.

During the period from February to April 1944 exploratory trials in New Caledonia indicated that there were reasonable prospects of developing techniques for favourable sites.
The request incorporated two phases – the development of techniques, and the application of these to a trial upon an operational scale.
Owing to changes in policy at a later date, the second part was cancelled.

The work was carried out by the 24th Army Troops Company, New Zealand Engenieers with the co-operation of the Royal New Zealand Air Force, The U.S. Navy and the Royal New Zealand Navy between the 6th June, 1944, and the 8th January 1945.
Some 3,700 experiments were carried out with charges ranging from 0.06 lb. to 600 lb. in weight.
T.N.T was used generally, although O.E., nitoro-starch and geliginite were used in some cases,

On the 25th July 1946, the second atom bomb trial took place at Bikini Atoll, under conditions permitting of direct comparisons with forecasts based upon the work of the “SEAL” Unit.
these forecast were verified within the limits of experimental error.

The investigations lead to the conclusion that offensive inundation is possible under favourable circumstances.
Given low lying forshores and a shelving bottom off-shore, wave amplitudes of the order of those for recorded tidal waves, which have been disastrouces, can be obtained.
While T.N.T or other explosives can be used, the engineering work especially involved introduces difficulties of considerable magnitude.
The use of atomic bomb as multiple charges may be more practicable.
The following matters of detail havebeen established:

(a) There is an improvement in the amount of energy transferred from the explosive to the water in the form of wave motion with increasing sizes of charges (paragraph 11.7).

(b) The use of explosives at the upper critical depth adjacent to the water surface offers the advantages of higher performance and convenience as compared with deeply submerged charges (paragraph 6.2).

(c) The use of multiple charge arrangements imparts directional properties to the wave pattern, and produces markedly increased wave amplitudes along the axis of symmetry of the charge positions (paragraph 12.81).

(d) Single charges are impracticable (paragraph 15.3).

(e) Compared with recorded tidal waves, the wave lengths of the waves generated by explosives are smaller for given amplitudes.

(f) The ratio of the depth of water to the wave length at the charges is important, because for depths less than one-half the wave length, the energy efficiency falls rapidly with decrease in depth (paragraph 7.1).

(g) Hydraulic model studies are imperative before an assessment of the effect of inundation can be made, and for the determination of the beat arrangement and position of charges (paragraph 15.6).

(h) For single charges, the empirical relationships have been confirmed by the observations made during 25th July 1946 (paragraph 15.4).

much work has yet to be done before all phases of the problem can be considered to be in a satisfactory position.

※原書と比較してスペルミス等ありましたらコメント欄にてご指摘お願いします。


1950年に書かれた最終報告書の段階で兵器として成果が上がっているとは言えないことや、そもそも地震とは無関係であることなどがわかります。

この報告書を基にアメリカが人工大地震&大津波を起こしたというのはあまりに飛躍が過ぎますね。
1950年のこの最終報告書より後に研究が再開して発展を遂げたというのなら、まずはそのことから証明していく必要があるでしょう。

リチャード氏の講演会やブログでは、この最終報告書の表紙の画像が再三使われていることから、リチャード氏がこの文書のPDFを入手してるのはほぼ確実なんですけど、いまだに人工地震説の補強材料に使っていますね。

「誠実さ」あるいは「情報分析力」のいずれかに瑕疵があるものとみなされても仕方ないでしょう。

東日本大震災混乱支援ボランティア

今回の記事も『2012年やってくるのはユダ金の崩壊だ!』からテーマを絞って書かせていただく。

テーマは最近のリチャード氏のブログ記事でも話題に上がった伝単とOSSの対日心理作戦について。

◆伝単と心理作戦

「B-29が来てビラを配っていった、ビラを配るじゃない。ビラを落とした。そのビラを見たら『地震の次は何をお見舞いしましょうか』と書いてあったと。これをどう解釈するか?それはアメリカ軍が地震をやったんだよと。だから次もあるんだよといってる」
(動画05/09 05:17)

……と、いうことでリチャード氏はアメリカの撒いた伝単(敵国民あるいは兵士の戦意を削ぐためのビラ)を字義通り真実であるとして話を進め、最近の記事『1944-45年の米国による対日人工地震攻撃:「米國式地震を注目せよ」』『原爆による人工地震をにおわすB29散布ビラ発見』『伝単です。ご自由にご利用ください。』などで「アメリカが戦時中に人工地震を起こした」と主張している。

伝単の目的は敵の戦意を削ぐことにあるので、そこに書かれている内容は必ずしもウソである必要がない(米国が優勢だったわけだし)が、事実とも限らない。

とくに『原爆による人工地震をにおわすB29散布ビラ発見』では伝単だけでなく、OSSの対日心理作戦にまで言及している。

しかしこれがアメリカが地震を起こせた証拠になりえるだろうか?

OSSの「日本本土に対する地震心理戦計画」については検証ブログ「人工地震説の嘘とデマ:3.11人工地震テロ説・地震兵器説の証拠を検証」の『アメリカによって捏造された人工地震説の証拠の一つを見つけた件』の記事にてすでに検証済みとなっているので、あまりこちらで書くことはない。

要は「アメリカが地震を起こせるのかもしれない」と日本国民を怖がらせて戦意を奪うことが目的なのである。

実際に大地震が起こせるめどが立っているなら「心理作戦」なんてセコい規模に抑えず、攻撃計画として進めればいい話である。

そもそもリチャード氏が持ってきた伝単の内容はあまりにも派手で現実離れしている

原爆による人工地震をにおわすB29散布ビラ発見』で画像が紹介されている伝単には以下のように書かれている。

「一九二三年諸君の国に大損害を及ぼした彼の大地震を記憶しているか、米国はこれに千倍する損害を生ぜしめる地震を作り得る。
かくの如き地震は2トン半乃至4トンの包みにしてもって来られる。これらの包みはいづれも数年間をかけた苦心惨憺の賜物を二、三秒間内に破壊し得るのである。
米国式地震を注目してこの威力が放たれた際に大地の震動を感知せよ。諸君の家屋は崩壊し、工場は消失し、諸君の家族は死滅するのである。
米国式地震を注目せよ―諸君はそれが発生するときを知るであろう」
(仮名遣いや旧漢字は修正しました)

ここの分の頭にある「一九二三年」の「大地震」とは1923年の関東大震災を指しているのだろう。

この地震のマグニチュードは7.9。

この文書が示すところの「これに千倍する損害」というのは一体何を指しているのか、もしもこれがマグニチュードだというならマグニチュード9.9の地震が起こせる、ということになる。

これはいくらなんでも出鱈目だ。

戦時中アメリカの撒いた伝単には「次はここを爆撃します」というような予告があり、実際にその通りに爆撃したこともあるという。予告されてもなお空襲を防衛できないという事実は、制空権が敵によって完全に握られていること意味し、日本国民の心を打ちのめしたことだろう。

もし米国が自在に地震が起こせるのなら、このような地震攻撃予告があったほうがのちのちの心理戦において効果てきめんだっただろう。

また、戦時中に「自分たちが地震を起こした/地震をおこせる」と喧伝するようなビラをばらまいておきながら、戦後にその地震兵器の存在を隠ぺいしているというのもかなり無理がある。

◆人工地震兵器の可能性について

引用されている機密文書「日本本土に対する地震心理戦計画」の中では、爆弾を引き金(トリガー)として地震を誘発させるということが書かれている。

ただ、機密文書内では実際にどのように発生させるかについての記述が乏しいため、「爆弾で断層を破壊し、地震を誘発する方式」と「リチャード氏が唱えている方式」について検証をしていく。

「爆弾で断層を破壊し、地震を誘発する方式」については、ASIOS著「検証 大震災の予言・陰謀論」の記事『東日本大震災は「地震兵器」により引き起こされた!?』にて検証がされている。

この方式は「たとえ核爆弾を仕掛けたとしても、その場所で予定通り(?)、マグニチュード9.0の巨大地震が起きるかどうか、というのはやってみなければわからない」不確実性が大きいものであり「地震は兵器としては最も使えない」と評価されている(13ページ)。

もちろん上述したように、件の機密文書ではどのような方式で地震を発生させるかについては詳しく書かれていないので、OSSが意図するところの人工地震兵器は「爆弾で断層を破壊し、地震を誘発する方式」ではなく、「リチャード氏が唱えている方式」のことである、といえなくもない。

だがリチャード氏の唱えている方式は輪をかけて非現実的な方式である。

リチャード氏が『3.11同時多発人工地震テロ』内で提唱している方式は当ブログの記事『リチャード小説を読んで:「3.11同時多発人工地震テロ」(2)』で軽く触れたし、「検証 大震災の予言・陰謀論」の『小説『GEQ』(柴田哲孝著)で描かれた世界は真実である?』の記事でかなり詳しく書かれているが、リチャード氏の引っ張ってきた故・山本寛氏の理論では「ブラックライト・プロセス」なる未知の物理現象によって、地震が発生しているとしている。

リチャード氏の地震兵器説は科学的に証明されてもいない理論をもとに構築されているのだ。

ちなみにリチャード氏の本の中では「ブラックライト・プロセス」については全く言及していない。

山本氏の本を読んでいないか、読んではいたが「ブラックライト・プロセス」については触れたくないかのどちらかであり、どちらの可能性もありうる。

ブラックライト・プロセスはアメリカのランデル・ミルズ博士(ただし医学博士)が提唱した概念であり、ミルズ博士はこのブラックライト・プロセスが代替エネルギーになるとしてBlackLight Power Inc.という会社を作り、出資者を募っているようだ。

もしもこの理論が真であるという話が人工地震説の流布とともに全国に広まってしまったら、リチャード氏が支持している荒田名誉教授の固体内核融合は色あせてしまうだろう。

国産の新エネルギー技術開発による日本のアドバンテージ獲得を夢想するリチャード氏にとって、彼が嫌っているアメリカ人の新エネルギー技術が広く知られるような事態(しかも現実に大地震が「ブラックライト・プロセス」の理論に基づいて起こされたとなれば、宣伝にもなってしまう)は受け入れがたいものであろう。そのために「ブラックライト・プロセス」への言及を避けた可能性がある。

また、今回の講演ではリチャード氏は別の「方式」にも言及しているが、こっちはいかにも胡散臭い

「大地震というのは、そうそう簡単には起こせるもんじゃないんです。いくら核を植え込んだって、核だけの力ではせいぜい震度5とか震度4しか起こせないんです。
核によってもっと大きな地震を励起すること、ができると3.11のようになる。
そのメカニズムというのは色々考えうるんですが、まあ、あの~、たとえばですね太陽の活動と連動していたりするんです。
つまり太陽フレアとかその辺が極端に強い時に限ってこういった核兵器によって、えー、プラズマ現象というものが発生して、それが、えー、地殻の中で大きな核融合を引き起こすと。
いうような、ちょっとまだまだ分からない部分はある。」
(講演05/09 12:53)

実際の動画を観てもらえばわかるが、「メカニズムというのはいろいろ考えうる」というわりに、その直後から恐ろしく歯切れが悪くなり、「まだまだわからない部分はある」と尻すぼみな調子で閉じる。

実際、ここで言っている太陽フレア云々の説明は全く意味不明である。

太陽フレアと大地震とをからめた話はどっかで聞いたことがあるなと思っていたら、当ブログの過去の記事『あんびりばぼ』(2009年12月)で触れていた。

たしかこの「太陽フレアが活発になる極大期の前後では大地震がおきる」という与太話は、2012年地球滅亡説の一つとしてテレビで放映され、映画「2012」の宣伝も兼ねていたように思う(というかむしろ宣伝目的?)。

太陽の極大期は約11年周期とかなり頻繁に訪れており、これに偶然一致する地震があったとしてもまったく不思議ではない(こういった主張では一致したケースばかり取り上げるが、一致しなかったケースがどれだけあるかを考えなくてはならない)。

NASAも「2010~2012年には太陽活動極大期になる見込みだが、地球はこれまでにも定期的にこの期間を経験している」として切って捨てている。

故・山本寛氏の理論にしろ、太陽フレアの話にしろ、いずれにしてもリチャード氏の人工地震説は科学的根拠のない、疑似科学である。

◆陰謀の継承者

こうしてリチャード氏の人工地震説に一通りの評価を下した後に改めて「日本本土に対する地震心理戦計画」に目を通すと面白いことに気づく。

彼の機密文書には以下のような一節がある。

1)雑誌 メディアを使用する基礎作業として、まず偽の日本の雑誌に載せた疑似科学記事をつくる。
この記事は、日本の科学者が書いたように装い、「連合軍の第一の目的は、さらに爆撃を激しくすることで、破局的な地震を起こすことにある」と結論づけさせる。
この記事は次に日本国内で潜在的におきそうな地震の引き金を引くことが、激しい爆撃、あるいはとくに原子爆弾という新しい兵器で可能であるのかについての議論を喚起する。
さらにこのニセ記事は、筆者を日本の地震学者にしておき、この目的実現が「可能である」か「できない」かのどちらかをいわせ、日本人の心が地震の恐怖でいっぱいになるようにする。
(『原爆による人工地震をにおわすB29散布ビラ発見』より 読みやすいよう適宜改行しました)

「日本の科学者が書いたように装」った「疑似科学記事」によって「破局的な地震を起こすことにあると結論づけさせ」「日本人の心が地震の恐怖でいっぱいになるようにする」。

故・山本寛氏は在野の研究家とでもいうべき人で、物理学や地震学の博士号を取得しているような専門家ではない。

その氏の書いた本を使い、科学界からは「擬似科学」と呼ばれるにふさわしい奇説でもって、(ごく一部ではあるが)日本人にアメリカが地震を起こしたと結論付けさせ恐怖をあおる。

リチャード氏は約70年前にOSSが計画した作戦を掘り起し、頼まれていもいないのに協力し実行しているといえるだろう。

 


《参考動画》
2012年やってくるのはユダ金の崩壊だ!

《参考記事》
1944-45年の米国による対日人工地震攻撃:「米國式地震を注目せよ」
原爆による人工地震をにおわすB29散布ビラ発見
伝単です。ご自由にご利用ください。
richardkoshimizu’s blogより)

アメリカによって捏造された人工地震説の証拠の一つを見つけた件
人工地震説の嘘とデマ:3.11人工地震テロ説・地震兵器説の証拠を検証より)

日本本土に対する地震心理戦計画
toCより)
※リチャード氏のブログに記載されたOSS機密文書の和訳文章については上記サイトの和訳と比較し、内容に隔たりがないことからおおむね正しい訳であると考え、引用しました。

《参考文献》

検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち”の情報は正しいか検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち”の情報は正しいか ASIOS アンドリュー・ウォールナー

RK人工地震説を元ネタにした記事を載せた本が出ていましたね。

自分の過去記事のタイトルをもじって書いたら長いタイトルになってしまいました。

ということで、リチャード氏の著書『3.11同時多発人工地震テロ』をもとにした記事を掲載した本が出版されていました。

コンビニで売られているペーパーバックスのムックで、暇つぶしに買って読み捨てられる運命にあるタイプの本です。

で、この本をリチャード氏が紹介したのが12月13日のブログ記事、『書籍「報道ミステリーTABOO」 (晋遊舎ムック) P.116~ 「3.11は人工地震テロ?」』なのですが、コンビニ探してみてもさっぱり見つからないわけです。

それもそのはずで、この本発行日こそ12月1日となっていますが、発売日は10月27日。
1か月以上も前に発売された本なんですね。
リチャード氏が1か月以上も発表を遅くしてしまったのは発行日と発売日を混同してしまったからかもしれません。

この手のコンビニのペーパーバックスはかなり入れ替わりが激しいだろうことは容易に想像できます。
コンビニの店頭で手に入れることはほぼ不可能に近いでしょう。

仕方ないのでほかをあたった結果、ブックオフにて400円で売られていたので買いました。

 

内容はといえば、それはもう『3.11同時多発人工地震テロ』をベースに書かれているので、いまさらこれらの説のツッコミだなんだを書く気はおきないのですが、どんな説が取り上げられていたかは挙げます。

  • クジラの集団座礁は地震兵器を仕掛ける潜水艦のソナーの仕業説
  • 太平洋戦争で地震兵器が使われていた説
  • 地震波形が自然ものじゃない説
  • 震源が10㎞は人工地震の証拠説
  • トモダチ作戦は体のいい軍事演習説
  • 核兵器の使用により黒い雲とかが出た説(原発事故は核兵器使用をごまかす目的説も若干言及あり)
  • 津波肺じゃなくて内部被ばく説
  • 原発建屋の爆発は核爆発説
  • 地震による建物の倒壊が少ないのは自然地震じゃないから説
  • 本当の狙いは東京で、海ほたるのあたりで核を使ってた説

トモダチ作戦が軍事演習目的って話は『3.11同時多発人工地震テロ』に書かれていなかったように記憶していますが、あとは載っていた話でした。

では、果たしてこの本が「廉価版 3.11同時多発人工地震テロ」と言えるのかというと、それは違う気がします。

『3.11同時多発人工地震テロ』で書かれていた「原子炉から燃料棒が抜き取られている」とか「計画停電は純粋水爆起動のための電力確保」とか「放射性物質に関するパニックやデモを暴徒化させる陰謀」など、けっこう強烈な説は掲載されていません。

また、この本の編集部の方針からか、「陰謀を働いたのは米軍」という話に収束させようとしており、「国際金融ユダヤ人」が主犯とか、創価学会員で構成された部隊が自衛隊にあるとか、気象庁や東電が陰謀に加担しているとか、そういった話はでてきません。

それどころか人工地震説を扱った章の冒頭のマンガのラストでは「※後年のルターは激しく反ユダヤ主義を唱えていました。一部ネットユーザーは「3・11はユダヤ資本家による陰謀である」などとしていますが、博士がルターを引用したのはそうした意図によるものではありません。(編集部)」という断りが描かれており、むしろユダヤ陰謀論に関しては否定しているほどです(だったらルターを引用しなきゃいいのにとも思いますけど)。

『3.11同時多発人工地震テロ』をネタ元にはしたものの、リチャード氏の過激な主張には与する気はないというのがおそらく編集部の本音ではないでしょうか。
同書にある「アポロ月着陸捏造論」各説の真相について解説した記事「NASAの陰謀だぁー!ってよく聞くけどホントなんすか?」ではASIOSの本城達也氏が文を書いています。
章末に「本原稿は、リチャード・コシミズ氏の著作「311同時多発人工地震テロ」を元に、編集部が作成いたしました。」なんて記載するくらいだったら、本城氏に依頼したように、リチャード氏に文章を書くよう依頼してもよかったでしょう。
もちろん編集部からの依頼をリチャード氏が断ったという可能性もありますので、なんともいえませんが。

 

ともあれ、この一報に大喜びの独立党員らはコメント欄で、この本をきっかけにリチャード・コシミズ陰謀論が広まる、あるいは広めるツールとして使えると大はしゃぎな様子。
たしかに550円で買える本は2000円で買える本よりは「布教用」に適しているとは思うんですけどね。
でも、コンビニで550円で売られている「ムー」的な記事満載のペーパーバックスを片手に「この本のこの記事は本当のことなんだよ」って熱っぽく説いた日には、「アイタタタ」って思われるのがオチだと思います。


《参考記事》
書籍「報道ミステリーTABOO」 (晋遊舎ムック) P.116~ 「3.11は人工地震テロ?」
richardkoshimizu’s blog より)

晋遊舎ムック 報道ミステリーTABOO(タブー) 紹介ページ(晋遊舎HP)
↑サイトの目次を見てもらえれば、この本の記事がどれだけ「アイタタタ」な感じかわかると思います。

西日本の諸君にも東日本にいるこのオッサンを知ってほしい

今回は動画3本『3.11同時多発テロ』『地震と政治経済』『311テロ:西日本の諸君にも東日本で起こされた卑劣な戦争行為を知ってほしい』(以下では『西日本の~』と略)について。

2本観たあたりでちょっとめげそうにもなったが、3本目はかなりおもしろかったのでまあよしとしよう。

人工地震説各論については『311同時多発人工地震テロ』に沿うものがほとんどなのでおおむね割愛。

講演中に飛び出した珍言・奇言をベースに紹介していこうと思う.。

◆日本語の問題

まずは日本語の問題。
日本人の、それも本を書いて売ってる人間なのに日本語に問題がある。

「『(前略)最初の巨大な破壊の後に、第2第3の巨大な破壊が連続して起こり、特殊な地震波になっていた。こうした複雑な破壊はきわめて稀としている。今回の地震の震源域は長さ500㎞、幅200㎞ときわめて広域、断層の破壊は5分以上続いたという』これ「きわめて稀」というのはどういうことかというと、「自然の地震としてはあり得ない」と言ってるんです、つまり
(『3.11同時多発テロ』01/10 10:03)

全然「つまり」じゃない。「きわめて稀」(≒0)と「ありえない」(=0)は別だぞ。

「津波だけなんです。今回の地震は津波だけなんです。津波に特化した地震なんです。そんなこと聞いたことありますか?津波しか起きない地震なんてありますか?」
(『西日本の~』01/11 5:04)

言ってる意味がよくわからない。
死者の多くが津波によるものであるということを言いたいらしいが、それにしても「津波しか起きない地震」って。
『3.11同時多発人工地震テロ』で飛び出したRKの珍妙なロジックもそうだったが、強引に納得させようとするがあまりに日本語が残念な感じになってしまっている。

西村修平の日本語には厳しかった割にいい加減なもんである。

◆4足のわらじ

もともと貿易関係の会社経営かつネットジャーナリストの2足のわらじ(?)だったが、「小説・魔界」をきっかけに小説を書き始め、『小説911』以降は妄想小説をブログで発表したりして作家(気取り)にもなっていた。

とはいえ前作、前々作とさっぱり売れている様子がなく、プロの作家を名乗るにはかなり厳しい状態であったが、今作はバカ売れし、書店の偉い人の腰が低くなったばっかりにリチャード氏の調子もうなぎのぼりである。

「大体がさ、自費出版でさちゃんとお金が儲かって、生きてける?
で、次の本も出せる?
そんなことやってんのリチャード・コシミズしかいないんだから。
他の人たちはみんな出版社にお願いして出してもらって、で印税もらって生きているんだから。
ま、印税だけでは食えないから、統一教会からもらう人もいっぱいいるらしいけども。
私の場合は統一教会からもらわない。
ま、ほかの自分の仕事もあるもんで。
苦しくなると時々神様が助けてくれて、ちょっと大きなプラスチック関係のビジネスをくれる
(『3.11同時多発テロ』06/10 3:30)

話の始まりと締めで内容が矛盾してるように思えるのは私だけだろうか?
天の助けによって本業が潤い、そのおかげで食っていけてるというのなら、物書きで「お金が儲かって生きてける」とはとても言えないだろう。
前作まで鳴かず飛ばずで、今作でも出版にあたって代金前払いや寄付を募っていたくせにずいぶんと偉くなったもんである。

そんな調子こいたリチャード氏であるが、ここにきて新たなる肩書きを追加するつもりらしい。

「地震の専門家が出てきて『この地震の原理はこういうことです』と『どのプレートが動いて云々』という話が一切出てこない。
出てくるわけないんですよこれ!自然地震じゃないんだから!
人工地震の専門家の先生でも呼んでこなかったら誰も解説できないよ。そんなのどこにいる!?
ここにいるよ、ここに!
(自分を指さす)
でもここにいるこいつを呼んじゃったらおしまいでしょ、テレビ局」
(『西日本の~』03/11 2:43)

いきなり人工地震の専門家である。地震学の学士号すら持ってないのに(青山学院大学経済学部卒)。
まあ「美容研究家」とか「占い研究家」とか、「研究家」という肩書ならどんな人間でも名乗ることがOKなので、「人工地震研究家」あたりが妥当だろうか。

◆放射線の話

正直放射線についてリチャード氏の言うこと全てが出鱈目だとは考えていない。
普段いうことは大体においてむちゃくちゃだが、「低線量被曝に過剰におびえる必要はない」という主張に関しては間違っていないと思う。

ただしそこだけである。
その後に続く「低線量被ばくの危険を煽るのは暴徒化を狙う陰謀」だとか「海で放射能が検出されたのは海底で核が使われた証拠」とか、あっという間にアッチの世界へトリップしてしまう。

特にひどかったのは311の話からちょっと脱線してアポロ月着陸捏造説の話をした時である。

「宇宙の中は宇宙線、X線で満ち満ちているから、そこへ出て行ったらば焼け焦げて死んでしまいますよ
(『地震と政治経済』 03/08 2:44)

アポロの月着陸についてはいろんな「疑惑」が唱えられており、そのなかに放射線被ばくに関する話は聞いたことがあるが、「宇宙線で人が焼け死ぬ」という珍説は初めて聞いた。

原発からの放射能漏れについてよく調べ、降下物の量の比較など行い、それなりにまっとうな結論を出してるように思えたのに、別の話題に言った途端に放射線に関する知識なぞ次元の狭間に吸い込まれてしまったかのような豹変ぶり。

「一瞬だけまともになる」逆ナベアツ状態だ。

ちなみにアポロ11号の乗組員が月旅行の往復で浴びた放射線量は、海抜0mに住む人が浴びる放射線量の約3年分であったという。
数日間で3年分とは結構な量を受けてそうな印象だが、そもそも1年間にうけるの自然放射線量がいかに少ないかは、今回の原発事故をうけてメディアなどが報じたとおりであり、その3倍の量でも健康に特に影響はないことは明らかである。

◆カンタン核融合

「原子力発電所で事故が起こった」

この話をとりあえず聞いたとき、他の予備知識を与えられていない状態で、あなたはどのような原因を想定するだろうか?

ずさんな管理による人災? 地震や津波などの災害? それとも何者かによる破壊工作?

それに対するリチャード・コシミズ氏の意見は以下のとおりである。

「原発というのは不完全な装置なんです。どう不完全かというと、みなさんよく聞くと思うんですが、「どこかで冷却水の装置が停止した」とか、「破裂した」とか「配管がなんか穴が開いた」だとか、いうニュースをよーく何度も何度も聞くと思いませんか?
東大の工学部出た最高の頭脳の連中が集まって、一生懸命やってるのになんでダメなんですか? 京都大学の一番頭のいい人たちがいってやってるんじゃないの?関西電力で。なんでうまくいかないの?
そこには、まだ解明されない未知の反応が起きてるからなんです。
それは何かというと、核融合が起きちゃってるんですよ! 原発で。
だからこんなぶっとい肉厚の配管がねじ曲がれて穴が開くんです。
核融合の小さな爆発があっちでもこっちでもおきてるから、原発はいつも事故だらけなんです
(『西日本の~』 05/11 0:11)

この話を聞いた時にはさすがに爆笑した。
まあしょっちゅう笑わせてもらってはいるんだが、これは特級である。

人工地震兵器説のメカニズムの説明で「マントルの熱(最高でも3000度くらい)と水深10㎞の水圧(約1000気圧)によって熱核融合が起きやすくなる」という超いい加減な話を採用したあたりから、核融合に関するハードルがどうにかなってしまったんだろうか?
いや、荒田教授の固体内常温核融合など支持しているし、もともと高くないのかもしれない。

そんなに簡単に核融合が起こせるんなら、とっくに核融合炉が実現できてそうなもんだ。
原発で核融合反応が起きて爆発したというのにそのことに気づかないなら、それこそ無能というやつである。

※原発で核融合が起きているという(突飛な)アイデアだが、どうやらリチャード氏オリジナルではないようである。
今回の人工地震説の元ネタとなった「海底の核融合が地震を起こす」という説を提唱していた山本寛氏の著書『仮説-巨大地震は水素核融合で起きる』をさっとななめ読みしたところ、浜岡原発の配管破断事故について書いた文章に同じような内容の記述があった。
リチャード氏の奇説はこの本に影響を受けたものだろう。

◆信用の問題

最後に紹介するのはこんな発言。

「これはジャーナリストとしてかなり厳しい仕事なんですよ。もし外れたら大変です。もし外れたら、私が今まで十何年間やってきたジャーナリストとしての信用は失墜するわけです。それわかったうえで私は断言したんです
(『西日本の~』 01/11 5:44)

ここでいっている「これ」とはもちろん「311人工地震説」のこと。
動画の序盤だったが、思わず「わかってねーじゃん!」とツッコんでしまった。

大半の人間にとって、リチャード氏にはジャーナリストとしての信用なんてものはもともと無いのだ。

これまでの工作員認定騒動やら阿修羅掲示板や右翼団体とのトラブル、差別的発言などを見てきた自分にとっては、「ネットジャーナリスト リチャード・コシミズ」はおろか「輿水 正」の個人としての信用もとっくにゼロである。

とにかく三本の動画を通してデタラメな話が多すぎる。
過去に当ブログでも指摘した「3連続の地層破壊を報告した気象庁発表がなかったことにされている」(「なかったことにされた」という事実が確認されていない)とか、「中・ロの救助隊がさっさと追い返された」(1週間の救助活動を終了して帰国しただけ)とか、「海外のニュースでは原発建屋の水素爆発に三連発の爆発音が付いていた」(YOUTUBEにアップされたものだけ)とか、いまだに平然としゃべっている。
他にも「海外での地震の余波の話を聞かない」(ハワイに3m超の津波が発生しているし、カリフォルニアやインドネシアでは死亡者も出ている)とか、「神戸の地震の時にも『ちきゅう』がいた」(『ちきゅう』が起工されたのは2001年。阪神大震災の6年後だよ!!)とかなどなど、きちんとした裏付けもせずにただただ自分に都合の悪い事実を無視して好き放題言ってるだけである。

この人を言うことをとりあえず信じるというのは極めて無謀な行為としか言いようがない。

独立党員や心情党員という立場の人間たちが「B層の人たちは自分で考えるということをしない」などというが、ウォッチャーやアンチの立場にいる人間からすれば、彼らこそ考えているとは思えない状態だ。

この互いに相手に対して「ものを考えているとは思えない」と感じている奇妙な光景の原因にはこの「信用」の問題があるのではないかと思う。

お互いに自分で考えているのだが、その材料が違う。

ウォッチャーやアンチにとって、リチャード・コシミズ氏の発信する情報は無知によるウソや恣意的な解釈に汚染された情報として忌避したり、疑ってかからなくてはならない情報である(自分としては毎回まずは疑ってかかる)。

だが、独立党員や心情党員は彼の情報を全面的に信用してしまっている。
彼の情報が正しいという前提で理解し、咀嚼し、それを基に世の中について考えている。

だからリチャード氏の持つ世界観に従った解釈しかできないし、非独立党員(『ゴイム』『B層』と呼びたいなら呼べばいい)と全く違う結論に至るのだ。

リチャードコシミズ氏の出す情報があやまっていないかをチェックしない。
精査せずに丸呑みにして、そこから考え出している。

考えるということを放棄してはいないのかもしれないが、疑ったり調べるということを放棄している。

疑うことを禁止し、とにかく信じる事から始めることを「信仰」という。

こんな状態だから「カルト」だの「教祖」だの言われてしまうのだ。


《参考動画》
3.11同時多発テロ
地震と政治経済
311テロ:西日本の諸君にも東日本で起こされた卑劣な戦争行為を知ってほしい

《参考文献》

アポロ月着陸捏造説(ムーンホークス説)における放射線についての知識はこの本から。
インターネット上では「Skeptic’s Wiki」や「ASIOS」の記事を参照してください。

国会図書館にあったのでささっと流し読みした程度です。
ただこの本で著者が持ち上げてたブラックライトプロセスというのはなんだか胡散臭い。Wikipedia(英語版)によると疑似科学扱いされているようですね。

《参考記事》
地震の津波、世界中で被害をもたらす』(日テレニュース24より)

リチャード小説を読んで:「3.11同時多発人工地震テロ」(2)

前回は小説としての「3.11同時多発人工地震テロ」の小説としてのツッコミどころを書いたので、今回は陰謀論としてのツッコミどころを書いていく。

◆二重に架空を重ねた上に成り立つ人工地震説

タイトルの通り、人工地震がこの本のメインになるが、説得力は今一つ。

本書の中では人工地震を起こす方法については「推測しています」とか疑問形でRKが語ることが多く、「具体的に3つの地震をどうやって起こしたのかは、まだよくわかっていません」とさえ言っている。

未遂に終わった分を含めると膨大な回数行われたはずの人工地震が起こされた現場を一つとして押えてないのだから、当たり前といえば当たり前ではある。

しかしそんなことを言っててもせんないので、リチャードコシミズ人工地震説をまとめてみる。
75~78ページの記述を中心に、他のページの描写なども参考にして組み立ててみた。

深海掘削船で10㎞海底を掘る 。掘削船のドリルで深さが足りないときは、バンカーバスターを多数打ち込んで掘る

潜水艦で孔の底に核兵器(水爆、都市部に近いところでは純粋水爆)を設置し、爆発させる

爆破の影響でマントル層まで亀裂が走る

亀裂に水がしみていく(10時間とかかかる)

するとマントル層で核融合反応が起きやすくなる(あるいは起きる)

大地震

この仕組みの重大な欠陥は「マントル層での核融合反応が地震となる」という理論(以降、提唱者である故 山本寛氏の名前から山本理論と表記)が科学的に証明されていないことだ。
そもそもリチャード氏自身、山本理論を「まだまだ一般に認められたものではない」(78ページ)と書いている。
「まだまだ」と書いているがおそらく将来的にも認められることはないと思う。

純粋水爆を含めた膨大な数の核兵器運用と山本理論、証明出来ていないものを二重に使うことで人工地震説は成り立っている。

それはつまり、この人工地震説が現実とかけ離れた妄想の領域を出ないということだ。

また、人工地震兵器というものが2011年3月11日より日本で使用されていたと考えると、実用性の面で非常に難があることも、「人工地震説」に説得力がない一因である。

余震の回数を考えると、人工地震というのは恐ろしく成功確率が低い。

本書の中でも人工地震の多くが失敗に終わっているということは書かれている。

こんなものがはたして軍事技術と呼べるのだろうか。
人工地震は1940年代に確立された「陳腐な旧式の大量破壊兵器」らしいが、こんな下手な鉄砲を数撃って当てなきゃならないような戦法を採用するなど非合理の塊だ。

本書では1944年12月の「東南海地震」、1945年1月「三河地震」を人工地震による攻撃であったとのほめかしているが、現在のこの非効率な「人工地震」のありさまから考えると、1944年12月から翌1945年1月までの期間に例年に比べて非常に多く余震があったということだろうか?

そもそも第二次大戦中にアメリカにそんな攻撃ができたとしたら、地震攻撃のことをわざわざ隠す必要はないだろう。
地震兵器を種に日本に降伏を迫ることができただろうし、共産主義圏を牽制することもできただろう(リチャードコシミズ理論によればWWⅡも共産主義もユダヤ人の陰謀らしいのでどうとでもなってしまうのだろうが)。

また本書で書かれている内容が事実なら国内に数百発を超える核兵器があったことになる点や、核爆弾を東北・関東中で埋めて回らなくてはならない準備作業に関して目撃情報等がない点など、人工地震説の問題点はほったらかしである。

◆気象庁がデータを隠したという話

この本に限らず、リチャード氏のブログや講演でもみられるが、気象庁が地震発生について行った記者会見の情報を後に隠ぺいしたと主張をしている。

隠ぺいされたとされるのは3月13日の記者会見で発表された「地盤の巨大な破壊が3つ連続して発生した」という情報のこと。
これが隠ぺいされ、一つの大きな地震だったということにされてしまっているというのだ。

「…〈前略〉… 気象庁が地震後数日の公式の会見で、ありえない地震だみたいな発言を残したのは、まずかったんでしょうか。人よっては人工地震を想起しますからね。
この記者会見の記事、早々とネット上から消されてしまいまして。裏社会さんには不都合な話だったんでしょうね。まあ、こっちは魚拓でもキャッシュでも対策はあるので構いませんけど。笑」

そして以後、「最初の破壊の後に、第2、第3の巨大な破壊が連続して起こり」といった当初の話は消え去り、ただ一回の普通の地震だったことに書き換えられているのだ。

資料・・地震情報(震源・震度に関する情報)
平成23年3月11日14時53分 気象庁発表
きょう11日14時46分ころ地震がありました。
震源地は、三陸沖(北緯38.0度、東経142.9度、牡鹿半島の東南東130㎞付近)で、震源の深さは約10㎞、地震の規模(マグニチュード)は7.9と推定されます。
〈後略〉
(72~73ページ)

文章からすると、書き換えた後の公式情報というのが「資料」として提示されている情報、ということになるのだろうか。

だとするとこれは相当におかしい。
見ればわかるとおり、引用されている情報は地震発生から7分後の速報段階の情報である。
マグニチュードが7.9で震源の深さは10㎞。
明らかに現時点での東北関東大地震の常識とは食い違っている。
今「テレビや新聞からしか地震の情報を得ていない人」に聞いてもマグニチュードが7.9だという人はおそらく非常に珍しいだろう。勝手に世間の常識を取り違えたか、引用すべき情報を間違えたか、あるいは勘違いをしているとしか言いようがない。

そもそも「地盤の巨大な破壊が3つ連続して発生した」という気象庁の発表は、隠ぺいも撤回もされていない。

気象庁HPには「報道発表資料」のページがあり、マスコミ向けに発表した情報はここで閲覧することができる。
今回の地震に関する様々な発表は「「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について」というタイトルが付けられ、発表された順に「第○報」と明記されている(5月27日現在で第45報まで発表されている)。[1]

この中で扱われている情報は余震に関するものが多いが、メカニズムついての発表も存在している。
「地盤の巨大な破壊が3つ連続して発生した」というメカニズムについては第15報(3月13日)と第28報(3月25日)において触れられており、その後の第45報(5月27日)までの間にそれらを撤回するようなメカニズムについての発表など一切存在しない。

最近では東大の井出哲准教授らのチームが断層破壊のメカニズムについて「深部→浅いところ→また深部」という順序で起こったと「3つの破壊」について解析を発表している。[2]

何も隠ぺいなどされていないのだ。

どうしてこの情報が隠ぺいされたなどと思ったのか、理解に苦しむ。

◆頼りない顔ぶれ

本書では説の補強材料として様々なコメントや文書が引用されているわけだが、どうにも独立党ブログのコメントに偏りすぎている。
コメント欄でいくら「人工的な臭いがする」とか「自然現象だと説明するレベルはとうに超えている」とかいった書き込みがあっても、それは結局のところ発表された情報に対する個々人の感想に過ぎず、「あっそう」としか言いようがない。

また、山本理論の主張に当たり、リチャード氏は同様の説を支持しているであろう人物として柴田哲孝氏の名前を挙げ、民主党議員 風間直樹氏の提出した質問主意書を紹介しているが、これもどうにも頼りない。

75ページ、135~136ページの阪神大震災人工地震説で紹介される柴田氏は作家。
下山事件を扱ったノンフィクション作品なども書いているようだが、阪神大震災陰謀論をテーマにした作品「GEQ」はフィクションとノンフィクションの要素が混じった小説である。[3]
135~136ページの文章を読む限り、阪神大震災人工地震説を成立させるために、山本理論を利用しているだけのように思える。
これではリチャード氏と同様、山本理論が事実でないかぎり、人工地震説は成立しないと言ってるようなものだ。

91~92ページにわたって紹介されている参議院質問主意書だが、単に山本理論を事実だと信じ込んでいる国会議員がいる、という話にしかならない。遺憾ながら。

質問主意書では、中越地震の震源地が二酸化炭素貯留地点から20キロという点からだったということで地震と二酸化炭素の封入を関連付けて質問しているが、これに対する福田総理の回答は貯留地点と地震を起こした地層に連続性はないので無関係、というものだった。[4]
風間議員は山本理論に基づいて地震と封入実験を関連付けて質問しているが、福田総理はプレート理論に基づいて回答しており、なんだかむなしいやり取りである。

この質問主意書を書いた風間直樹議員は第168回参議院災害対策特別委員会で、山本理論に言及した際、ホッカイロが温まる原理を核融合で説明するという珍プレイもやらかしている。[5]

◆犯人に関する証拠らしいものは無し

この本を最後まで読んでも、結局人工地震を起こしたのがユダヤ人である、ということは特に証明されていない。

でてくるのはせいぜい、イスラエルの医師団と仏大統領サルコジ氏(母親がギリシア系ユダヤ人。祖父の代にカトリックに改宗)が来日したことと、福島原発のセキュリティシステムにイスラエル系企業のマグナBSP社が関わっていたことくらいで、人工地震が金融ユダヤ人の指示のもと「世界ゴロツキ共同組合」によっておこされたと主張する根拠というものはない。

当然、文中に出てくる米軍や自衛隊に特定の宗教団体の信者によって構成された部隊があるという主張も証明されていないし、東京電力や気象庁、マスコミが陰謀にかかわっているという主張も証明されていない。

204ページから始まる「311テロリストがつくった缶政権」、「金融ユ●ヤの世界支配」(←本書では「ユダヤ人」は徹底して伏せ字で書かれている。18禁?)、「「311」同時多発テロ」、「世界ゴロツキ協同組合日本支部」までの4章の間で書かれている「世界の指導者層にはユダヤ人、隠れユダヤ人とその手先が大勢潜んでいて、過去の不幸な歴史の陰でユダヤ人が暗躍してきたにちがいない」という主張を真に受け、「だから今度の地震もゴルゴムユダヤ人の仕業だな!」とでも考えない限り、この本をいくら読んでもどのような根拠をもって人工地震を起こしたのがユダヤ人だとRKが考えているのかはわからない。

◆そのほかの主張について

計画停電陰謀説 (87~88ページ,149~155ページ)
計画停電は陰謀だという主張。
87,88ページでは、東京電力の原発17基が止まっても停電したことはないのに、今回福島の原発がダメになったから停電する、というのはおかしいという根拠を示している。

電力の供給量が足りなくなったのは、何も止まってしまったのが福島原発だけだからではない。ほかにも火力発電所の発電機が多数停止していたためである。[6]
計画停電が必要な理由に火力発電所がいくつか停止したことが挙げられていることについては、149ページでは触れてる。
しかし、火力発電が止まったことに関して特に反論は書いておらず、東電と政府の発表が唐突におこなわれたとか、テレビで解説がなかったなどと書いている程度である。

計画停電の電力を純粋水爆の起爆に使ったとも書いているが、過去の純粋水爆は常温核融合で起爆装置を動かしたと主張していたのに、今回は一般の電源で起爆していることに関して説明はない。

福島原発の建屋が吹き飛ぶ映像消音陰謀説 (58ページ,108ページ)
福島原発の3号機が水素爆発を起こした際の映像に日本のニュースでは爆発音が入ってなかったのに、YOUTUBEにアップロードされている海外のニュース映像[7]には3つの爆発音がついている、というもの。

同様の動画のコメント欄に反論が書かれているが「20㎞以上離れた位置からの映像なのに時間差がほとんどない」のはあきらかにおかしい。 音速から考えれば1分以上の時間差があるはずだ。
また、20㎞も離れたところまで音が届くほどの爆発なら、3号建屋の破壊だけですまないのではないだろうか。

「音つき」が確認できるのもYOUTUBEにアップされたものだけで、動画の元になったSkyNEWSの記事で確認できる動画には爆発音はついていない。[8]

緊急地震速報が外れるのは人工地震だから説(157~159ページ)
緊急地震速報が外れるのは、核実験(人工地震)はP波が強くS波が弱いため、地震速報システムが強いP波を感知して速報を出しても揺れを感じるような強いS波が来ないためである、という主張。

緊急地震速報が外れることについては、気象庁が見解を発表している。[9]

3月11日に発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の発生後、同月12日03時59分頃の長野県北部の地震や同月15日22時31分頃の静岡県東部の地震など広域にわたって地震が多発しています。
このため、ほぼ同時に発生した複数の地震からのデータを適切に分離して処理できず、適切に緊急地震速報(予報及び警報)の発表ができない事例が発生しています。
改善方法については検討を進めていますが、直ちに対応することは困難な状況です。
(『緊急地震速報について』気象庁HP)

ほぼ同時に発生した複数の小さい地震の波を一つの大きい地震だとシステムが勘違いしてしまう、ということである。

ただ、この陰謀論についてはいちばん出来が良かったと思う。

怪しい黒い雲(85~86ページ、161~162ページ、184~191ページ、198~203ページ)
東京湾で純粋水爆が使用された際の熱によって海ほたる上空に黒い雲が出た、その後ねっとりとした根着生の灰色の雨が降り、雨にうたれた人間がその後、呼吸器や喉の不調の症状を訴えているという話。

雨に降られた後の咳って、ただの風邪ではないのか。

陰謀はユダヤの暦と一致する説(307~309ページ)
「ユダヤ裏社会は、ユダヤ教の暦や数字のごろ合わせにひどく拘る。」(307ページ)という主張である。

本書では2003年のイラク戦争の前祝いとしてピュリム(purim)の祭礼を行っていたとし、今回の地震もピュリムが最終戦争のタイミングとなりうるのだとか。

今年は3月20日がピュリムなのだそうだが、とくになにもおこっていない。地震そのものは9日も前だ。
イラク戦争にも「前祝い」と書いてあることからわかるとおり、ピュリムの当日に何かが起こったわけではない。

これで「ひどく拘る」と言われても困る。

それではこれまでに行われてきた陰謀の日付にはそういった暦との連動していたのだろうか?

911同時多発テロ、スマトラ沖大地震、バリ島ディスコ爆破事件、連邦ビル爆破事件。
過去にさかのぼれば明治維新や日露戦争、真珠湾攻撃など、リチャード氏がユダヤの陰謀によるものとする事件は山ほどある。
その中でどれほどの事件がユダヤ教の暦と連動しているのだろうか?

何でもいいからとにかく今回の地震とユダヤ人と関係づけたいという根性が見え見えである。

中・ロの救助隊を追い返したのに、ユダヤ人は受け入れているという説(113~114ページ,348~350ページ)
中国とロシアの救助隊が追い返されたのに、イスラエルの医師団や仏大統領サルコジ氏が日本に受け入れられたのは陰謀だ、という説。

引用記事を見る限り、中国とロシアの救助隊が追い返されたとは言えず、救助の任務を終えて帰国しただけにしか見えない。[10][11]
中国の救援隊は13日、ロシアの救助隊は15日から日本に入っており、どちらの帰国も日本での任務開始から1週間経過してからの任務終了である。[12][13]
救助活動は災害発生から短い時間が勝負なので、救助隊としての仕事は終わったと判断したための帰国だろう。

イスラエルの医師団やサルコジ氏は救助隊とはやることが別なのだから、時間的に日本入りがそれより後になっても不思議はない。

医師団は救助活動目的ではなく、避難所に人たちの健康管理に携わるために来たのだろうし、サルコジ氏はあくまで外交政策の一環だろう。

それぞれ役目が違うものを並べて比べてみており、まったく無意味な行為である。

人工噴火陰謀説(101~102ページ、286~306ページ)

地震だけでなく火山の活動もユダヤの陰謀という話。
本書からは外れるが、最近では台風もその仲間入りを果たしそうな勢いで、天変地異何でもござれのユダヤ陰謀論の気配。

とりあえず本書では、人工地震のほかに人工噴火も主張していて、核爆弾で地震波だけでなく噴火も起こせるのだという。

証拠として挙げられているのが鹿児島のソラマメから放射性物質がついていたという話[14]と、富士山の周囲の地震である。

鹿児島から放射性物質がついていたから、新燃岳で核兵器による人工噴火が行われていたという。

しかし鹿児島で核兵器が使われていたら、ソラマメだけではなく鹿児島のもっと多くのものから放射性物質が検出されていておかしくないはずだが、そういう報告が一切ないことと、ソラマメに付着していたセシウムとヨウ素はそれぞれ非常に微量で、核兵器を使用した結果の付着ならばもっと多量についててよさそうなものだという点がこの主張の弱いところである。

富士山については富士山を囲む形で地震が起きたことや「定点反復人工地震」が根拠とされている。
定点反復地震については「精度の高いデータで見てみる「定点反復人工地震」」で検証したとおり、速報段階の精度の低いデータを羅列しているから同緯度・同経度になっているだけで、実際にはそんなことはない、ということ。

富士山を囲む地震については、ブログ上で「正方形になっているのが人工地震の明確な証拠」[15]としていたが、本書ではこれについてはトーンダウンしている。

勿論、地震計の配置が正方形になっているから、震源の正方形が富士山を囲んでいるように見えるだけのことだ。だが、富士山が四方から攻撃されているのは間違いないのだ。
(291ページ)

過去の当ブログの記事「素人として、またいくらか書く気になったので」において「四角形になるのは当たり前」とは書いたが、それは「地震計の配置が正方形になっているから」ではない(地震計の配置なんて知らない)。
北緯35.3度、東経138.7度を基準に、緯度が0.1度高い座標と、経度が0.1度高い座標、緯度と経度が0.1度ずつ高い座標の4つ点があればそれが四角く見えるのは当然と書いたのだ。

ここの記事を読んだのか、他の誰かから言われたのか知らないが、軌道修正したもの、ズレていることには変わりがない。

放射性物質パニック扇動説(49~58ページ,108~112ページ,163~171ページ、245~246ページ、266ページ)
放射性物質が原発から漏出しているという報道は、国民の不安を煽り、パニックを引き起こし、日本に強権政府を樹立させるための陰謀である、という説である。

「震災後のパニックを拡大して暴徒化させ→混乱に乗じて311テロリスト・CIAにとっての邪魔者の抹殺→暴動鎮圧名目の統制国家化→中国との対立→極東戦争」(50ページ)というのがその企みらしいのだが、何とも飛躍が派手で、「いけない!ルナ先生」のようだ。

当然ながら「震災後のパニックを拡大して暴徒化」の状態にすらならなかった。

「反原発デモを暴徒化」というパターンもあるらしいが、頭の部分が違うだけで後はほとんど同じというワンパターンな代物。

確かに今回の地震後まもなくの報道では、国の安全基準を周知させないまま「自然の〇倍」といった表現を使ったことや、シーベルトの単位を揃えずに発表し、放射能への不安を煽ってしまっていた側面があったと思う。
また福島から来た人を泊めようとしなかった宿泊施設や、スクリーニング検査を受けるよう強要してしまった自治体(のちに撤回)など、誤った態度を取ってしまった人たちもいた。[16][17]

しかし、そういう報道や人々を煽っている/煽られていると言っている独立党はといえば、「人工地震だ」「核兵器だ」「体内被曝だ」と騒いでいるんだからより始末が悪い。

放射能パニックの陰謀は存在したかどうかは検証不可能な結果に終わったが、リチャードコシミズ氏と独立党が核兵器だ金融ユダヤ人の陰謀だと世間を煽ろうと試みていたのは間違いない事実である。

以上、とりあえず本書の気づいた点について書いてみた。

前回の分と今回の分、合わせてみた感じたところは「トンデモ本というよりは単に誤りの多い本」という感じで面白味は少なかった。
ところどころで楽しませてくれる珍フレーズはあったものの、その量は多いとは言えない。

また、似たような内容のエピソードが本書の幾つもの箇所で分散して書かれており、まとまりが悪く、内容を見直す作業は相当に骨の折れる仕事だった。

作数を重ねるたびに、リチャード氏のオリジナルな主張の割合は増えてゆき、その分詰めが甘く、できのいい話は目に見えて減っている。特に気象庁発表に関する勘違いはひどかった……。

今回の当方のこの仕事を「アラ探し」と言われることがあってもそれは仕方ないが、重箱の隅をつつくような真似をした覚えはない。なにしろほとんどデタラメなのだから。

アマゾンで高評価を下している人物は大分多いようだが(批判の数もそれなりにあることから、過去作に比べて売れていることがよくわかる)、ちゃんと読んだのだろうか?

まっとうな本としての評価は5段階評価で最低★1つ、トンデモ本としての評価もあまりさえないので★2つといったところか。

事実や真実が書かれている本を期待する人にはお勧めできたものではないし、トンデモ本的な面白さを期待している人にもあまりお勧めできない。


《参考文献》

《参考記事》
1. 気象庁 報道発表資料ページ (気象庁ホームページ)
2. 断層破壊「深部→浅い場所→また深部」 東大チーム解析 (5月20日 asahi.com 記事)

3. GEQ(小説) (Wikipedia)
4. 二酸化炭素貯留実験に関する質問主意書 (参議院ホームページ)
5. 第168回国会 災害対策特別委員会 第3号 (参議院会議録情報)

6. 宮城県地震における当社設備への影響について (東京電力ホームページ プレスリリース)

7. Fukushima I Nuclear Power Plant Reactor 3 explosion on March 14, 2011 (YouTube)
8. Japan Timeline: How The Disaster Unfolded (3月15日 Sky NEWS 記事)

9. 緊急地震速報について (気象庁ホームページ)

10. 中国救援隊が帰国 (3月20日 産経ニュース 記事)
11. ロシア救助隊 日本での被災者救援作業を完了 (3月22日 The Voice of Russia 記事)
12. 中国救助隊が被災地到着 (3月14日 産経ニュース 記事)
13. ロシア救助隊 日本の災害現場で作業開始 (3月15日 The Voice of Russia 記事)

14. 日本からのソラマメに放射性物質 台湾当局発表 (3月20日 47NEWS 記事)
15. 富士山を囲む正方形の「震源」。人工地震の明確な証拠です。 (3月18日 richardkoshimizu’s blog 記事)

16. 宿泊施設 「除染していない」と福島からの宿泊客を拒否する (4月6日 NEWSポストセブン 記事)
17. つくば市の放射能スクリーニング検査「転入者の不安和らげるため」 (4月23日 レスポンス 記事)

リチャード小説を読んで:「3.11同時多発人工地震テロ」

4月20日の販売開始からおよそ一か月遅れとなったが、「3.11同時多発人工地震テロ」を入手し、読了した。

感想としては「控えめに言っても珍作」といったところか。

今回の本も前作、前々作に続いて(自称)小説である。
まずは小説としてこの本のツッコミどころを紹介する。

 

◆あいかわらずのスタンス

リチャード氏によれば「敵の次の対応を予想して先回りして警告します。ですから表現の自由度の高い小説の形をとる必要があるのです」ということで、小説なのだそうだ。
本の中に出てくる敵の「未来における計画」や「過去における実現を阻止できた計画」については十分な根拠に基づいておらず、筆者の想像の範囲を出ないのであしからず、という宣言だと自分は理解している。

また、あいかわらず「本書の内容を事実と関係づけて考えるのは読者の自由」という旨の文言が付記されている。
「根拠に乏しいからフィクションという体裁をとっているけど、事実として受け止めてほしい」ともとれるし、「事実じゃなかったと判明しても、信じたあなたの責任」と丸投げしてるようにも取れる。
こういうスタンスで本を出し続けていくことが「ジャーナリスト」にとってプラスに働くとは思えないんだが、今後も続けるのだろうか?

 

◆変わらない伝統の読みにくさ

読みにくさ、については前の2作とあまり変わっていない。
本文をぶった切って差し込まれる長ったらしい「資料」のおかげで物語(ないけど)の流れが寸断されてしまうという悪癖は健在だ。
資料と本文でフォントをかえるようにしたため、これまでのような混同がなくなったのはよかったが、引用したコメントについてはフォントを変えているときと変えていないときがあったため、途中で引用のフォントと本文のフォントがどっちがどうだかわからなくなってしまった。

 

◆がんばった、でもダメだった

小説っぽく書こうとがんばった!しかし頓挫した。
そんなリチャード氏の「作家」としての失速振りをうかがい知る事が出来るのが本書の特徴の一つである。

本の出だしは地震についての薀蓄を少し語り、地震にまつわる物語のスタートとして悪くなかったと思う。
序盤は災害や亀山モデルのプラズマテレビで震災の様子を眺めるロッケンフェラーの描写が細かくされており、巧拙のほどはともかくとして、世間並みの小説のスタイルを堅持しようという努力がうかがえた。

しかしそれも60ページくらいまで。
「(5)地震兵器」からは地の文とRKが会話をしだしてしまい、このあとはリチャード小説らしい説明セリフのみで構成されているといってもいい物語(?)が始まる。

一度この波をどうにかはねのけようとしたのか、83ページ「(6)トモダチ作戦」はいきなり「そのころ、太平洋上のある米艦船の一室では」なんて出だしで始まるんだが、それまでの過程で「そのころ」が一体いつのことなのか読んでるこっちにはさっぱりわからない状態である。
そしてその一室でローエンシュタインとモルデカイという二人の人物が会話をする様子が描かれていくのだが、やはりここでもコケた

ふたりの会話が始まる84ページでは「ローエンシュタインが寝不足の目を瞬かせながら口を開く」、「モルデカイが口を挟む」といった具合に書かれていたのだが、次のページからはローエンシュタインのセリフの前には「ロ・・」、モルデカイのセリフの前には「モ・・」という形で話者を区別するスタイルに特に断りもいれずに変更している。
小説というよりは台本のようだ。

それ以降は会話のキャッチボールメインで延々と人工地震について説明がラストまで続いていく。

ただ今回は地の文よりもジャーナリストRKの説明セリフが多く、RKと地の文との会話では地の文の出す質問にRKが答えるという上下関係が見られた。
主役の面目躍如である。どうでもいいけど

 

◆馬鹿っぽいセリフ、再び

過去2作についても紹介した馬鹿っぽいセリフ。
今回もところどころで登場人物たちがバカっぽさを醸し出している。

裏社会の面々は相も変わらず「とほほ」「嗚呼、参った」「あはは」「だめだこりゃ」など語尾をとり混ぜながら、三下っぽいせりふで我々を楽しませてくれることに余念がない。

「やっぱりな。俺たちどこまで狡猾なんだ」(126ページ)というセリフには特にしびれてしまった。
こんな小者っぽいセリフを吐くやつが世界を思い通りにしようとしてるというのだから、どうにかできそうな気持も湧いてくる。

しかし、「1台のPCだけで戦争を戦い、立派に勝利することができる。人類初の戦闘方法」(9ページ)の実践者、われらが主人公RKの口から飛び出したロジックも侮れない。

「地震兵器は存在します。核実験が行われると必ず地震波が発生します。つまり地震が起きます。ゆえに地震兵器は存在します。」
(60ページ)

うーん、何が「ゆえに」なんだかさっぱりだ。やはり日本の夜明けは遠いのかもしれない。

 

◆それが自慢なのはわかったから!!

今回の本は前作以上に内容の繰り返しが多かった。

「過去の人工地震・津波の計画」の話や「デモを暴徒化する計画」や「S価学会の60兆円」「定点反復人工地震」などの話がRK、地の文、裏社会のメンバーなど話し手を変える形で繰り返し出てくるのが印象に残る。

それらはリチャード氏が読者に強く訴えたいために繰り返して伝えてきているのかもしれないが、読んでいると「あれ、これってさっきも出てなかった?」と感じてしまう(このあたりは個人差があるだろう)。

そして最も多く繰り返してリチャード氏が我々に訴えかけていたのは「RKブログは1日に4万~5万アクセスを誇る人気ブログである」ということである。これが4,5回出てきた。

「ちまちました人生送るなよ。豪傑が生まれなきゃ、日本は再生しないよ。」なんてタイトルの講演をやってる人なのだが……ある意味正直ではある。

 

◆良くなった点もある

良くなった点。
それは宣伝ページが激減したことである。
前作では78ページ(355ページ~432ページ。過去の記事でページ数を77と書いていたが78の間違い)あったが、今回は367ページ~383ページの17ページ分。

本書の成し遂げたもっとも大きな功績だと思う。

 

◆ラスト

今回の本は説明セリフの応酬が延々と続く形で盛り上がりもアオリもなく、「さて、小説はこのあたりで一旦終わりにしよう」(365ページ)ということで打ち切られる。
なので、特にツッコむところもない。

いや、普通の小説はこんな終わり方しないので、そのことをツッコむべきなのかもしれないが、説明セリフが延々と続いているせいで「物語が途中で打ち切られた」という感想すらわかない。
「あ、おわりか。これで」と思ってしまった。

とりあえず、小説としての「311同時多発人工地震テロ」についてのツッコミどころの紹介はここまでとする。
陰謀論としての主張にツッコみを入れるのはまた次回。

《参考文献》

素人として、またいくらか書く気になったので

この記事では専門的な知識を抜きに、常識的な知識(+インターネット検索で調べられて、理解できたこと)の範囲でリチャード氏のツッコミどころにツッコんでおくものである。なぜなら専門知識は持っていないから。

◆四角が人工地震の証?

リチャード氏は『富士山を囲む正方形の「震源」。人工地震の明確な証拠です。』において、ブログによせられたコメントより、4つの地震の震源の座標を合わせると富士山を囲んだ正方形になると書いている。

書かれた座標は以下の4つ

静岡東部
35.3 138.7
35.3 138.8
山梨南部
35.4 138.7
35.4 138.8

これはもう「四角くなって当たり前だ」としか言いようがない。
緯度と経度がきっかり±0.1度ずつズレた4つの点があれば、それは四角形になって当たり前である。
メルカトル図法の世界地図では20度くらいの間隔で緯線と経線が格子状に引かれているが、それを0.1度間隔のサイズまで小さくしただけと考えればいいことだ。

では、この緯度と経度を基にした座標はどのくらいの誤差が含まれているか、ここに注目してみる。

件の記事に書かれた震源の座標は見ての通り緯度と経度を小数点以下1桁までの値。
つまり、小数点以下2桁以降の数値は切り捨てるか四捨五入しているということになる。
これは相当にアバウトな数値である。

たとえば小数点以下2桁目で四捨五入しているとする。
すると震源の座標が「35.3 138.7」ならば、「北緯35.2500000000000~35.3499999999999 東経138.6500000000000~138.7499999999999の範囲内のどこか」で地震が起きたということになる(『地球探検の旅』を利用すると、GoogleMapsでは緯度・経度が小数点以下13桁くらいまで出てくる)。
この誤差の範囲はどのくらいの広さかというと、「東西約9㎞×南北約11㎞」(日本のあたりだと経度は0.1度につき約9㎞、緯度は世界中どこでも0.1度につき約11㎞の間隔がある)。
面積にして約99平方㎞という相当広い範囲だ。
すなわち「35.3 138.7」を中心とした約99平方㎞の四角形の範囲内のどこで地震が起きても、データ上は「35.3 138.7」で発生したことになると考えるべきだ。

視覚で理解したければ、リチャード氏が提示した4つの震源の地図を見ればいい。
あの4つの震源を結んでできる四角形(正方形ではない)の広さが、それぞれの震源の持つ誤差の範囲なのである。

残りの3つの震源も同様に実際の震源とデータ上の震源にはかなりの差があると考えられる。
実際の震源4つの位置を調べて結んでみても、直角のみで構成された「人為的に見える」正方形や長方形にならない可能性が非常に高いだろう。

かなり大雑把に処理されたデータ上の値を4つ拾ってきて「これは絶対に自然の地震ではありません」だの「悪魔の正体見えたりぃ!」だの高らかに叫んでも恥ずかしいだけである。

 

◆過去の計画

リチャード氏は過去にあった二つの計画を持ち出してきて、今回の地震が人工地震であると主張している。

一つは1957年に核兵器による人工地震を使って地球内部について探ろうとした計画の話。
もう一つは「プロジェクト・シール」と呼ばれた爆発物によって津波を引き起こそうという実験。

1957年の人工地震は、地震そのものを兵器として使うようなものではない。
リチャード氏自身が引用してきた新聞記事にも学術的なものと書かれている。
調べてみると1957年にはネバダだけで29回にものぼる核実験が行われており、そういった核実験で発生する震動(つまり人工地震)を利用して地球の内部を探ろうというものではないのだろうか。
この「核兵器による人工地震」は攻撃目的ではないのは明らかだ(ただしその核実験は、核爆弾を運用するための貴重な知見をもたらしただろう。「地球の内部を探る」がオマケにすぎない可能性はある)。

プロジェクト・シールはニュージーランド、ファンガパラオア(Whangaparaoa)沖で行われた実験で、爆発物を使って津波を起こそうというもの。
多くの日本語のサイトで引用されている新潮45の記事では「30mの津波の発生に成功した」と語られているらしいのだが、Wikipedia英語版の記事やそこからリンクされている記事などを読むとそこまで目覚ましい成果を上げたような記述は見られない。新潮45の記事は大げさに書かれている可能性がある。

リチャード氏や他の人工地震説支持者はこれらのエピソードを「東北関東大震災が人工地震であった」という主張の補強材料として挙げているつもりのようだが、残念ながらそうはならない。

「東北関東大震災が人工的に引き起こされた地震である」ということを証明するよう求められているのであって、「この世に人工地震と呼ばれるものが存在する」ことを証明しろなどとは求められていないのだ。

過去の地震攻撃計画書や津波爆弾実験、人工地震の話をいくら持ち出してきても、東北関東大震災そのものが人工的に引き起こされたものであるということを少しも証明できないのである。

 

◆気象庁まで陰謀に

もともと、「金融ユダヤ人のしわざ」で始まった陰謀論も、今や東京電力と気象庁のふたつの組織も加えられることとなった。

東京電力が加えられた理由は、計画停電が純粋水爆の起爆に利用されているという、これまでの純粋水爆の設定を覆す陰謀論が出たためである。
純粋水爆の起爆が常温核融合からレーザー起爆式に変更された説明は特になく、リチャード氏に「計画停電になんて面倒だ、もっと好きに電気を使わせろ、そうだ!陰謀ってことにして反対しよう!」という思いつきがあったんじゃないのかと邪推したくなる。
計画停電が4・5月には実施されない情報を受け、「311地震テロ:東電、計画停電がネタばれしたので、原則廃止。」などと言っているが、4月に入っても大きい余震は既に起きているし、これからも頻発するだろう。
それらについてはあくまで「自然由来」としてシラを切るつもりなのだろうか。

そして最近では気象庁も陰謀組織に加担していることになってしまった。
理由はリチャード氏の自説を否定するデータを提示しているからである。

3月11日14時46分の大地震は最初の発表の段階ではマグニチュード7.9、震源の深さ10㎞であった。
この深さ10㎞に注目したリチャード氏は地球深部探査船「ちきゅう」が掘ったと主張していたが、現在では震源の深さは24㎞であったと判明している(マグニチュードは9.0に修正)。

これによってリチャード氏の「311人工地震説」は成立しなくなってしまった。
3月11日の地震以後の余震について唱えられていた「定点反復人工地震説」も精度の高いデータに更新された結果、同じ場所で繰り返し地震が起きたとは到底言えなくなってしまったことは、前回の記事で紹介したとおりである。

精度の低い段階のデータに飛びついて、常識と大きくかけ離れたセンセーショナルな説をぶち上げたものの、最新データの公開によって自説が維持できなくなくなってしまったため、陰謀認定しているに過ぎない。
地震が発生した直後には正直なデータを申告していたのに、あとになってあからさまなウソのデータを出すなんてあるだろうか?
ウソをつくつもりなら最初から震源の深さも震源の位置もデタラメな値を出してそのままにしておけばいいだけの話ではないか。
自分が誤っていたことを認められず、都合が悪い話を全部陰謀のせいにしてしまっている。
陰謀論者の悪癖ここに極まれりである。

自分の説を否定するデータ修正を行った気象庁をどうにか見下してやりたい気持ちで前後不覚になったのだろうか、4月13日付のリチャード氏のブログ記事『大キショーチョー:『自然地震M8なら100KM深度。311地震は人工ゆえ24KM(実は10KM?)』』では、「M8の地震では岩盤のずれが100㎞の範囲に及ぶ」という気象庁の説明を「M8の地震は震源の深さ100㎞でおきる」と豪快に誤読し、「M9.0で深さ24キロ(後で訂正された数字)っていうのは?はい、人工地震だからです。」などと上から目線で大ボケをかましている。
恥の上塗りもいいところである。

 

◆最後に、危険な遊びに警告を

天災というものは至極理不尽な偶然である。

もちろん地震と津波の発生にはメカニズムが存在して、天災が起こったのは必然であったことがのちの研究で明らかにされるのだとはおもう。

しかし、人の生死には偶然があったのだと思う。

地震が起きた時、津波が押し寄せた時にその人がどこにいたかという偶然で明暗が分けられた。

この理不尽な偶然によって多くの人間が命を落としたし、生きながらえたとしても仕事や財産や住む場所、大切な人間をなくした人間の数はその何十倍もいるだろう。

2011年3月11日14時46分。
この時間を境に多くの人間が具体的で強い悲しみ・絶望・喪失感・不安・怒りを抱くことになってしまった。
これらはいずれもやり場のない感情だ。

しかし、リチャード氏やほかの陰謀論者たち主張は、これらやり場のない感情をやり場のある感情へと矯正しようとするものである。

とても危険な行為だ。

ありもしない罪状で他者をやり場のない感情のはけ口にしようと誘っているのだから。

もうすでに陰謀論の世界に肩までに浸かってしまっている人間より、今回の震災を機に陰謀論者の言うような「世界の真の姿」があるのかもしれない、と思いはじめている人に警告しておきたい。

陰謀史観とも呼ばれるその「世界の真の姿」を事実として受け入れるということは、陰謀を企んだとされる人間を罪人とみなして憎悪の対象にすることでもある。

「世界の真の姿」が的外れなものであった時、あなたは愚かな人と周りに嗤われるだけでなく、陰謀論者の共犯という加害者であったということにもなるのだ。


《参考記事》
富士山を囲む正方形の「震源」。人工地震の明確な証拠です。
人工地震情報、ありがとうございます。
311地震テロ初心者の方へ
新刊序文より:人工地震兵器は陳腐で旧式の大量破壊兵器
あなたの頭の方が心配ですよ。現実を見てください。
311地震テロ:東電、計画停電がネタばれしたので、原則廃止。
大キショーチョー:『自然地震M8なら100KM深度。311地震は人工ゆえ24KM(実は10KM?)』
richardkoshimizu’s blogより)

経度・緯度の指定によるGoogle Earth/Google Maps/地図の起動』(「地球探検の旅」HPより)

核実験の一覧
プラムボブ作戦
Project Sael
(Wikipediaより 『Project Seal』は英語版ページ)

"Tsunami bomb NZ’s devastating war secret"
"Devastating tsunami bomb viable, say experts"
(New Zealand Herald, Eugene Bingham氏の記事より)

地震について』(気象庁HPより)