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7・31不正選挙説誕生まで

2013年参議院議員選挙が終わった。

独立党が推しに推していた生活の党は改選ゼロ。
途中から応援することになった犬丸勝子氏も得票数12,683票、得票率0.2%にとどまった(得票数は5,762票から増えたが、パーセンテージで比較すると前回の衆院選2.9%なので後退にもとれる)。

今回は都議選後の独立党&リチャード氏の応援について紹介。

 

◆生活の党応援―接触篇

独立党の生活の党に対する支援は、これまで通り勝手連的に生活の党を応援にとどまり、やってもせいぜい講演会に候補者を呼ぶ程度なのではないかとおもっていたのだが、その予想よりもはるかに積極的に生活の党にかかわっていく姿勢を見せた。

生活の党の不正選挙対策の姿勢に不満があったのか何だかよくわからないが、都議会議員選挙の結果を受けて、リチャード氏は大変おかんむりで、『生活の党関係者の方へ』の記事で不満を書き綴っている。

この反応に私自身は意外さを感じた。
というのも、RKブログでは都議選のことはそれほど話題に上がらず、投票日が目前になるまで都議選に触れる記事などほとんどない状態だったのだ。

東京都議会議員選挙の日です。』の記事の文面も不正選挙への警戒の姿勢も見られない。
「皆さんも「下見」がてらに投票へ!」など、じつにのんびりしている。

リチャード氏は都議選では不正が行われないと楽観していたのかもしれない。
都議選前に行われた数々の地方選では、自公系候補が敗北したケースをいくつも紹介し、「地方選挙では不正選挙は行われない」と吹聴していたので、都議選は大丈夫(生活の党が勝つ)だろうとタカをくくっていたのだろうか。

しかし、本来RK理論において生活の党以外の政党はみな国賊なので、地方選挙で自公系候補が落選したとしても、生活の党か無所属の候補者が勝利しない限り勝利とは言えないはずある(生活の党推薦であると同時に、民主などからの推薦も受けている候補の場合はどう理解するべきなのか謎である)。
地方選挙で自公系政治家が落選するかわり、生活の党以外の政党の後押しを受けた政治家が当選しているケースは少なくなく、(厳密にRK理論に従うならば)楽観していいことなどなかったはずである。

結果を見てみれば、生活の党から出た公認候補3名は一人として当選せず、惨敗である。

ともあれ理不尽にも見えるが、生活の党の不正選挙対策に業を煮やしたリチャード氏は今回の参院選で生活の党へより積極的な協力をする意思を固めたようである。

6月24日。
午前中に『怒り心頭のRKは生活の党に直接談判をしたいので、党員・心情党員にお願い。』という記事をあげたリチャード氏は、夜には『独立党員諸君、7月4日(木)千葉に集まってください。』という記事をあげ、生活の党への支援活動に参加する人員を集め始めた。
船橋の講演会での発言(04/08 9:10~)によると、党員を通して姫井氏の連絡先を知り、24日に電話で話で会話。
25日にはじかに会って話をし、全面的に協力すると申し出たのだとか。

かつて国民新党に協力した際の動画において、リチャード氏が幹事長の下地幹郎氏に対して「40万票を提供できる」と豪語した際、下地氏の反応はそれほどでもなかった(さすがに真に受けなかったのだろう)が、選挙運動の手伝いを動員できるといったときには強い興味を示していた。
本当にあるかないかわからない(実際なかった)40万票より、何人かの人間が選挙運動を手伝えるという現実的な提案のほうが、ありがたいものだったに違いない。

姫井氏側の期待やリチャード氏側の提案も、その現実路線に落ち着いたのだろう。
リチャード氏は独立党員限定で50名という目標を提示して7月4日という平日に協力している人間を募りだした。

しかし、いくらなんでも平日に早々時間が空く人間もいない。
協力を要請する記事が上がったのは10日ほど時間的余裕のある時期だったのだが、それでもさすがに厳しかったのだろう、6月30日の記事『再掲:独立党員諸君、7月4日(木)千葉に集まってください。』では「心情党員の方でも身分証明いただければ参加できますので、ご応募ください」と参加条件を引き下げている。

これが功を奏したのか、7月4日当日には目標には届かなかったものの、40名という動員を実現したようである。

今回の選挙においてリチャード氏は主に姫井由美子氏と協力して太田かずみ氏の応援をしたわけだが、『生活の党比例区候補に対する支援』の記事によれば姫井氏以外にも、三宅雪子氏、広野ただし氏、東祥三氏らとコンタクトを取ったようである。

広野氏との顛末については不明であるが、三宅雪子氏については新宿の演説などに参加している。
東氏については、『日々坦々』というブログの7月2日の記事、『私が応援しようとしていた東祥三選挙事務所から降りた(排除された)理由』で東氏サイドから協力を断った経緯が書かれている。

しかし、7月5日にはリチャード氏のブログで『生活の党、比例区候補、東祥三さんの選挙支援活動』という記事も出ており、東氏の側で結局協力を受け入れることにした可能性もある。

 

◆生活の党応援―発動篇

もしもリチャード・コシミズ独立党に協力されるとしたら、ポスター貼りなど単純な作業でとどめておくというのが賢明だろうというのが私の考えである。

リチャード氏はこのところ「小沢先生と考えを一にするもの」などと自称していることがままある。
客観的に見ていれば、それはせいぜい反原発・反TPP・アジア重視の外交・憲法改正反対などといった領域にとどまるのだが、リチャード氏自身は「ユダヤ人が世界を支配し、部落・在日・同性愛者などがその支配体制に協力している」という陰謀史観までも小沢氏と共有できているという妄想に取りつかれている。
以前に紹介したリチャード氏の書籍、『12・16不正選挙』で小沢氏が未来の党と合流したのは不正選挙防止のためだったと書いていることからも、それは間違いない。

こういう考えの持ち主が、自分たちの政党の看板を背負って持論を展開するような事態は、絶対に避けるべきであった。

しかしながら、6月29日の三宅雪子氏の新宿街頭演説でリチャード氏はマイクを握り、応援演説に及んだのである。

6月29日 新宿駅西口ハルク前 リチャード・コシミズ氏街頭演説

動画のほか、『2013.6.29(土)新宿駅西口ハルク前RK街頭応援演説(4分32秒)文字起こし』の記事でも内容は確認できる。
内容としては「原子力発電所は核武装のため」や「仕事のない若者が軍隊に入るしかなくなる」など極端に思える発言も出てくるが、原発に関する発言は小沢氏自身の主張と大きく外れているわけではないようである。
「ある勢力」「裏社会」という単語が若干顔をのぞかせるが、これらはほんとに少しだけで、もし事情通ではない人がピンからキリまで聞いていても、これらの単語とその意味に気付くことはなかっただろう。
もっとも、関係者以外に聴き手がいたかは怪しいものである。

が、7月11日に柏駅前にて行われた応援演説では、太田かずみ氏の幟を持った姫井氏を伴って、リチャード・コシミズワールドを全開にして喋っている。

7月11日柏駅前 リチャードコシミズ氏街頭演説1回目
7月11日柏駅前 リチャードコシミズ氏街頭演説2回目

こちらの演説、特に「2回目」の動画では陰謀論を隠すことなくさらけ出している。

「私たちはみなさんにどうしても伝えたい4つの文字があります。『不』 『正』 『選』 『挙』です」
「”まさかこの文明国、世界で最も優秀な人間が集まった日本という国でそんな不正選挙なんて行われるわけがない”誰もがそう思います」
「日本人はそんな汚いことはません。ところが、外国人ならやります」
「アメリカが無理やりに自由民主党を勝たせた」

と、惜しげなく不正選挙陰謀論を展開している。

このほか「そのユダヤ金融資本の、たった1%の人たちがアメリカの政府を支配しています」「皆さんはバラク・オバマという色の黒い大統領を知っているでしょう」など差別的な思想を含んでいると取られても不思議ではない発言もしており(実際に含んでいるんだが)、この演説が生活の党とってマイナスにはなってもプラスになることはなかっただろう。

13.7.11の生活の党支援RK街頭演説は….』の記事によれば、この街頭演説の後に演説をするはずだった太田かずみ氏は来場をキャンセル。
また、12日に予定されていた講演会も欠席されることになったようである。

太田市の欠席を伝える記事でリチャード氏は「世の中の真の構造を、今日、目のあたりにしました」という文章が飛び出したうえ、『裏社会はRK独立党の動きにひどく焦っています。』の記事では「裏社会はRK独立党の動きにひどく焦っています。 なりふり構わず、動きを封じ込めようと「草」を総動員しています。」といった文が書かれている。

今回の演説が原因なのか決定打になったのかはわからないが、生活の党内部からリチャード氏たちの「協力」を問題視する声が上がり、それをリチャード氏が工作員による妨害と判断しただろうことは想像に難くない。

 

◆犬丸勝子氏の応援

犬丸勝子氏といえば、党ブログの記事『第429号法廷』『第429号法廷 その2』でも少々紹介した、不正選挙訴訟を行った人物のひとりである。
前回12月16日の衆議院選挙においては地元福岡から出馬したが、今回の参院選では東京で出馬していた。

その犬丸氏をリチャード氏が強く認識したのは『参院選東京選挙区立候補者の公示ポスターに「不正選挙NO!」』の記事のころ。
東京都選挙区のポスターに「不正選挙」の文字が書かれていたことがその要因であるという。
独立党関係者が不正選挙訴訟原告団にかかわっていたものの、リチャード氏は「裁判は専門家に任せる」と、タッチすることはなかったせいなのか、不正選挙訴訟までおこした犬丸氏の動向を不正選挙と書いた選挙ポスターを見るまで、ほとんど認識していなかったようである。

しかし最初は犬丸氏に対していくらか警戒をしていた。
それは犬丸氏サイドで出した告知(?)の画像に「リチャードコシミズ派の皆さん」と書かれていたことである。

リチャード氏は自分の名前が勝手に使われることをとても警戒している。
かつて小吹伸一氏が独立党を離れるきっかけになったのも、小吹氏が個人的な活動を独立党公認であるかのように紹介してしまったことであった。

犬丸氏側の文章にこのような表現がある経緯が存在する。
今回の選挙の、独立党がこれほど積極的に動くことを決定する前、独立党が様々な「不正選挙防止」のアイデアを巡らせていたことは『独立党の隠しきれない陰謀』の記事で紹介した。

その中に「開票作業に参加し、同じ筆跡で書かれている票を撮影しネットで公開する」というアイデアがあったのだが、当時生活の党との連携が決まっていなかったため、この計画を実行するためには独立党員はだれか候補者と独自にコンタクトを取って、開票立会人にしてもらわなければならなかったのである。
他方、犬丸氏は不正選挙を暴くために開票立会人を募集していた(『無所属の輪(福岡支部)立会人大募集』)。

ここで両者の利害が一致し、一部の独立党員が犬丸氏に個人的に協力する形になったのだ。
私自身、6月上旬に独立党関係者が犬丸氏に協力しているらしいことに気付き、犬丸氏本人にツイッター上メンションでそのことをうかがったことがある。





犬丸氏サイドが書いた「リチャードコシミズ派」というのは、それら個人の自由意思で協力していた人たちをさしたものだろう。

そういった事情をリチャード氏が汲まずに不信感を募らせれば、選挙期間中に犬丸氏が工作員認定を受けることさえあるかもしれない思っていたのだが、そこまでの事態には発展せず、リチャード氏と犬丸氏の協力体制は実現した。
ただ協力体制完成までに若干の犠牲はあったようで、それまで犬丸氏と協力していた中田潤氏(リチャード氏をかなり厳しく批判していた)が犬丸氏から距離を置くことになったりと、少々トラブルはあったようである(犬丸・独立党連携ができた後も、中田氏は犬丸氏だけは応援し続けている)。

本来であれば、「不正選挙」そのものを出馬の大きな動機にしていたうえに、政党による支援のない犬丸氏への協力こそ真っ先に行われるべきだったのだろうが、犬丸氏への協力は生活の党への協力に比べれば完全に遅いスタートになってしまった。

 

◆そして開票

ふたを開けてみれば開票前の世論調査から大きく外れることもなく、生活の党と太田氏は惨敗。
犬丸氏も得票率0.2%で落選という厳しい結果に終わった。

生活の党が全滅してしまったので、太田氏が落選した原因を「独立党に応援されたから」とすることはできないだろう。
独立党に応援されなかった候補者も落選したのだから。

お約束というかなんというか、現在独立党は不正選挙説を絶賛展開中。

山本太郎が当選してしまったため、昨年の選挙で不正選挙を訴えていた反原発系の人たちがこの不正選挙の流れに大挙して乗っかるかは微妙だが、生暖かく見守っていくのが吉である。

 


《参考記事》

東京都議会議員選挙の日です。
生活の党関係者の方へ
怒り心頭のRKは生活の党に直接談判をしたいので、党員・心情党員にお願い。
独立党員諸君、7月4日(木)千葉に集まってください。
再掲:独立党員諸君、7月4日(木)千葉に集まってください。
生活の党比例区候補に対する支援
生活の党、比例区候補、東祥三さんの選挙支援活動
2013.6.29(土)新宿駅西口ハルク前RK街頭応援演説(4分32秒)文字起こし
13.7.11の生活の党支援RK街頭演説は….
裏社会はRK独立党の動きにひどく焦っています。
参院選東京選挙区立候補者の公示ポスターに「不正選挙NO!」
(以上、richardkoshimizu’s blog より)

私が応援しようとしていた東祥三選挙事務所から降りた(排除された)理由』( 日々坦々より)

無所属の輪(福岡支部)立会人大募集』(選挙~庶民の票を期待する政治家はいない? より)

リチャード小説を読んで【番外編】:『12・16不正選挙』

今回は、リチャード・コシミズ著『12・16不正選挙』(以下、本書と略)を紹介。

これまで、『小説911』以降のリチャード・コシミズの著作を読んできたが、この本はその中で随一である。

リチャードコシミズの著作の中で最高のトンデモ本であるとさえ思う。
去年の2作はすごく退屈してしまっていたのだが、今作で不正選挙陰謀論を本にまとめられた形で読んでみると、実にバカバカしくてよいのである。

不正選挙説そのものは、過去記事『不正選挙2012』、『不正選挙諸説』などで取り上げてきたが、改めて本書に書かれている陰謀論にツッコミを入れるかたちで紹介していきたいと思う。

 

◆小説ではない

この本は小説ではない。

過去作では小説という形態をとり、事実とは無関係であるという断りを入れておくことで、内容に根拠がないことや政治家や要人、あるいは宗教団体や民族的・性的マイノリティに対する誹謗中傷の類をごまかしてきたところがあった。

しかし今作ではそういった「安全策」は施されていない。
フィクションであるという断りはないし、人名・党名を当て字で表現するごまかしもない。

ここ最近、独立党が多くの地方紙や雑誌に本書の広告を出していたが、その中で朝日新聞は掲載を断っている(『朝日新聞さんから「書籍広告掲載」を断られました。』)。
本書がこれまで通り小説を自称しているのなら、内容が根拠薄弱な話であっても掲載を断られることはないのではないかと思っていたのだが(とはいえ差別的な表現が引っ掛かる恐れがある)、今回のようにどストレートに書いていればそれは掲載を拒否する十分な理由になるだろう。

とまあ、とにかく小説ではないから今回の記事はあくまで「リチャード小説を読んで【番外編】」なのである。

 

◆不正選挙説-未来の党得票数

本書は、2012年12月16日の衆議院選挙で不正な行為が行われたということを主張している。

かの衆議院選挙では日本未来の党が圧倒的多数の44,600,000票(公式発表では3,423,915票)を獲得して第一党であったはずにも拘らず、ユダヤ金融資本の不正選挙工作によって票を書き換えられ、あるいは密かに票を遺棄されてしまったという。

4,460万票という数はとてつもない数である。
公式発表では衆議院選で第一党となった自民党得票数は約1,662万票なので、3倍近い票をとったことになる。
これを金融ユダヤ人とそれに与するマイノリティーが4,000万票を超える日本未来の党の獲得票をどうにかして減らしたということになる。

ではこの44,600,000という莫大な得票数は一体どこから出た数字なのかというと、以下のような計算式が示されている。

2009年衆院選の総票数70,581,658 x 75 / 69.28%(戦後最高の投票率)=2012年衆院選の総票数(推測)77,400,000 x アメブロ投票比率 72% x 80%(非ネット人口を考慮) = 44,600,000票
(197ページ)

意味が分かるだろうか?
最初これを見た時、私はこの羅列をどのように理解したらいいのかわからなかった。

「アメブロ投票比率」というのは、アメーバブログで非公式に誰かが行ったネットアンケートで導き出された未来の党の得票率である。これはこの数式のちょっと前に出てくることなので理解ができるのだが、最初の方のごちゃごちゃした計算が何を意味しているのかがやたらと複雑で非常にわかりにくい。

これは、「2009年衆院選の総票数70,581,658 x 75 / 69.28%(戦後最高の投票率)=2012年衆院選の総票数(推測)77,400,000」で区切るのが正しいようである(「=」の記号を数学的に正しい用法で理解しようとすると、この数式は「2009年衆院選の総票数=44,600,000票」となり、完全に理解不能になる)。
2012年衆院選の総投票数を推測するためにわざわざ2009年の総投票数を投票率で割って有権者数を計算し、それに投票率75%(実際には比例は59.31%)をかけているのだ。
無駄にややこしい
こうやって無駄な計算をして総投票数(推測)を出し、それに「本当の得票率」である72%をかけたうえ、「ネットをやってるのは有権者の8割くらい」という判断で80%で割って、44,600,000票という票数になったそうだ。

総務省のデータでは当日の有権者数は103,959,866なので、それに75%と72%を掛ければいい。
それだけで済む話を何をごちゃごちゃやっているんだか。

ここで使われている、リチャード氏の考える未来の党の得票率と現実の結果では実に67%も違っているが、この根拠となるのがネットの方が正しいという信念である。

まず挙げられているのがウォールストリートジャーナル日本版で行われたネットアンケートの結果を報じる記事
このアンケートの結果、63%が「未来の党に期待する」と答えたことを根拠にリチャード氏はこのように予測する。

実は、この外国紙の「未来の党に期待するが63%」が真実であり、読売の「期待しないが70%」が嘘まみれなのだ。裏社会は、日本の既存メディアの統制ばかり気を配り、外国系報道機関の日本支社の報道管制にまで手が回らなかったのだ。選挙後の諸所の情報を総合してみても、未来の党の本当の得票率は60%どころか70%に達していたともくされるのだ。
(37ページ)

また、先ほどの計算式ではアメブロのアンケート結果を利用していたが、このように書いている。

本当のところ、未来の党はどのくらいの票を獲得していたのか?12月23日に「アメブロ」でのネットアンケートの存在が報告される。「衆院選では何処に投票しましたか?」のアンケート結果は・・・「未来の党 72%」であった(13.1.9現在では75%)
http://pentatoys.com/qv/r/?id=2024
未来の党の比例区の得票率は、340万で共産よりも少ないことになっている。得票率は、5.69%だ。一方で選挙後のネットアンケートでは75%おそらく75%の方が、真実に近い数字であろう。

裏社会は未来の党の票を十分の一以下に改竄した!そう断言しても大きな誤認ではないだろう。
(196‐197ページ)

ネットでのアンケート結果と、世論調査や実際の得票率が一致しないからネットの方が正しくて世論調査や投票結果が間違っている、十分の一以下にされた!というのである。
十分の一以下にされたという割に、自らの試算では15倍くらいしちゃってるのはいいのか?

ちなみに次のようなエピソードも紹介されている。

ある有志の報告では、ご主人が所属するフラダンス同好会15人のうち、自民党に投票したのは堂々の0人。消費増税・脱原発の話題になり、①選挙に行ったのは、13名。つまり85%だ。②ほぼ全員が反増税・脱原発であり、投票先は未来の党は11名、共産党2名、みんな2名だったそうだ。未来の党支持率は70%=になる。
(197ページ =の位置は原文ママ)

フラダンス同好会の15名というささやかなサンプルを根拠に得票率を語ることも無理があるが、15名中13人しか投票に行ってないはずなのに、投票先の合計人数が15名なのはもっと無理である。

全体の投票率そのものが戦後最低であることにも疑義を申し立てているのだが、その根拠は「投票日に長蛇の列ができている投票所があった」という程度のもの。
長蛇の列が一時的なものかずっとそうだったのか、どこの投票所でもそうなっていたのかを証明しきれておらず、上記の怪しげな計算式で「本当の」投票率を75%に設定している根拠も特にない。

 

◆不正選挙説-未来の党の票はどうなったか

リチャード氏の考えよれば4460万票もあった未来の党の得票が340万票にまで減らされたということであるが、その差となる4120万票は一体どうなったのかということに関して、リチャード氏はいくつもの陰謀論を展開する。

選挙前日の12月15日、日本全国で「異臭騒ぎ」が報告された。八王子市・大阪府北部・東京都葛飾区・群馬県・静岡西部・横浜市青葉区・板橋区・埼玉・練馬・菊川・掛川・・・非常に広い地域で同様の「焦げ臭さ」が報告されている全国で一斉に「何か」を焼いた?「野焼き」が目立たない夜をねらって?ここからは推論である。

「期日前投票」のホンモノの票を裏社会総動員で焼却したとみる。(公営の焼却炉に運び込むのは発覚の危険があるので避けたのでは?)投票用紙は、ユポと呼ばれるPP(ポリプロピレン)製合成紙。燃せば、プラスチックを燃やした匂いがする。証拠隠滅であったのではないか?
(32-33ページ)

投票用紙を焼くとは豪快な話である。
しかも「公営の焼却炉に運び込むのは発覚の危険があるので避けたのでは?」などと書いているが、焼却炉が危険だからってそんじょそこらで焼いたりしたら、そっちの方がよほど目につくではないか。

たかだか物を焼いている匂いを嗅いだというだけで、そこで焼かれているものが投票用紙であると判断した根拠はでてこない。

 

このほか、「投票活動を呼び掛ける車があまり来なかったのは投票率を下げるため」とか「未来の党の候補者が小選挙区で獲得した票に比べて比例区で獲得した票が少ない」とか「ユポ紙の投票用紙はツルツルして鉛筆で書きにくいのになぜ使うのか」など(ユポ紙の投票用紙って表面サラサラしててすごく鉛筆で書きやすいんだけど……)細かい陰謀論いくつかが書かれているが、何より有名なのがムサシの票計数機の話である。

リチャード氏によると、株式会社ムサシの票の計数機には票を書き換える機能があるという。

レーザーアンプリンターである。基材から超短パルスレーザーでトナーを蒸発させて除去する。投票用紙から「未来の党」が消える。次にレーザープリンターで「自民党」と印刷して排出する。
(140ページ)

「投票改竄装置!」である。印字された用紙を、この機械を通すと別の印字に変わって出てくる。つまり、この機能をムサシの計数機械に内蔵させておけば、「鈴木一郎」と鉛筆で手書きされた表は、「近藤晴彦」に変わって排出されるのだ。
(142ページ)

ムサシの計数機には票に書かれた党名を判断して、票にかかれた政党名を消したり書いたりする機能があるのだという。
計数機とは票を数えるための機械のはずなのだが、読取分類機とアンプリンターとプリンターの機能までくっついているのだそうな。
それぞれの機能を持った機械は存在しているが(アンプリント技術はまだ開発中)、それらすべてを盛り込んだこの超複合機が実在することを確かめたものは誰もいない。

サル、タヌキ、虎、蛇という動物はこの世に存在しているが、「サルの頭とタヌキの胴体、虎の手足をもっていて尾が蛇になっている妖怪ヌエ」が実在していないのと同じである。

このほか、ペンシルプリンターの技術で書き換えた可能性もほのめかしてはいるのだが(144‐145ページ)、この技術に至ってはコンセプトだけでいまだ確立されてもいない。

はっきり言って「ムサシの票書換機」などというものは、ネッシーや宇宙人、ちいさいおっさんと同じくらいの代物なのだ。

 

◆不正選挙説-反論は陰謀

こんな無謀な説を唱えるリチャード氏の不正選挙説に対する反応はさまざまである。

「自民党らが不正を行った結果、大勝するはずだった未来の党が議席をほとんど取れなかった」という主張は、自民支持者から反発を、未来支持者から歓迎を受けやすいだろうことは想像に難くない。
リチャード氏のブログに攻撃的なコメントが書き込まれており、リチャード氏はそれらを「裏社会から脅しが」として紹介している。
当ブログではリチャード氏の面白ささえ伝えられれば十分なので、これらの余り利口とはいえないコメント郡についていちいち引用はしない。

リチャード氏はこれら鼻息の荒いコメントを「組織の中の武闘派」による書き込みと断定し、「この種の品も知性もない書き込みは逆に不正選挙の証拠と見做される」という。
この他にもガラの悪い留守電が2本きていたことを報告し「この恫喝電話は、12・16不正選挙に創価学会の裏部隊が関与していることを証明するようなもの」としている。

ガラの悪い、いちいち相手にしなくていい種類の電話だろうが、それが何で創価学会の関与を示しているのか一切不明である。 それと、少々暴力的で威勢のいいコメントを書き込む程度の人間を世間一般では「武闘派」とは言わない。

しかし、寄せられるコメントは何も物騒なものだけではない。
これを機会に創価学会を抜けましたといった、前向きに受け止められるコメントも寄せられているという。
特に私が面白いと思ったのは以下のものである。

「劣等感の塊で、いつも自分はダメだという気持ちがあり人の中に入っていくのもつらかったのですが、今はそこから抜け出すことが出来ました。ありがとうございます。」

ユダヤ金融資本との戦いの中で自分の殻を破り新しい自分の世界に躍り出た人も出てくる。私RKは陽気に彼を迎える。

「私RKも従来はとても弱い人間でした。でも、あなた同様にある日突如「吹っ切れて」以来、真正面を見据えて堂々と生きることが出来るようになりました。おめでとうございます。本物の人生があなたにもやってきたのです。ご活躍を!」
(109-110ページ)

なんだか自己啓発セミナーを思わせるような感動のやり取りだ。
コメントを残した彼はさらなる泥沼に足を踏み込んだだけなんだろうが、強く生きてほしい。

 

◆あふれる小沢一郎

とまあ、不正選挙陰謀論としての本書の面白さはここまでにして、この本で私が一番傑作に感じた部分を紹介。
なんといっても本書でいちばんトンデモなのは、リチャード氏が小沢一郎氏に対して抱く一方的な好意である。

リチャード氏によれば本書に書かれている裏社会の陰謀を、未来の党の小沢一郎氏も見抜いていたという。

選挙の神様、小沢さんの天才的な采配は今回も遺憾なく発揮された。選挙公示直前になって、国民の生活を解党し、未来の党に合流した。

「反原発」を旗印にした嘉田滋賀県知事を頭目に据えることによって、女性層の票を一気に取り込もうとしたのだと誰もが思った。そしてその策は功を奏したはずだ。

だが、小沢さんの深謀遠慮はその程度のレベルのものではなかった。小沢さんは、今回の衆院選挙で大規模不正が行われると読んでいた。
(45ページ)

そう、未来の党への合流は裏社会の謀略をかわすための物だったのだそうだ

こうして党名を変更することで、裏社会が準備していたニセの投票箱(何でも多量の自民党票と少量の国民の生活票で構成されていたものを準備していたらしい)は使えなくなってしまったのだという。
これによって裏社会は「稚拙な」手口に走らざるをえなくなり、多くの国民が不正選挙の存在に気付くきっかけになってしまったのだそうな。

そして2013年7月の参院選。不正選挙を糾弾する国民の強い意思は、政権を詐取した自民公明に、「再選挙」を要求するであろう。かくして、衆参同時選挙が行われることになれば、小沢さんの「生活の党」は大勝利を収める。多くの候補を擁立すれば、単独で政権を掌握できる可能性すらある。そこまで読んで、小沢さんは未来の党に合流したのではないか?であれば、ものすごい智謀家であると言える。RKもタジタジである。
(48ページ)

選挙の前からそのつもりであったとすら推測できるのだ。解党に際しての小沢さんと嘉田知事の笑顔がすべてを物語っている。有権者の大半には理解できなくても、やっぱり、小沢さんは当代随一の策士なのだ。
(162ページ)

RKもタジタジである」の記述には思わずふいてしまった。

上記の陰謀やらあるいは小沢氏による反計は、あくまでリチャード氏の脳内だけの話で、当然ながら小沢氏はそんなことを一言も言っていない。
小沢氏の未来の党の合流とその後の大敗をすべて自分のいいように解釈し、「智謀家」と讃え、勝手にタジタジになっているのだ。

引用文を読んで気づいた方もいるかと思うが、本書では小沢氏のことをほとんどの場合において「小沢さん」と“さん付け”で呼んでおり、強く親近感を持っていることがうかがえる。

相手を勝手に自分にとっての理想的な人間と決めつけ、信じ込み、それに沿うよう状況を解釈して一方的に強い好意を抱いている。
これが色恋沙汰ならストーカーといわれてもおかしくないだろう。

ただでさえ今の生活の党は存在感を示せておらず、7月の参院選で苦戦を強いられるだろうに、こんな変な人に変な期待をかけられていて実に気の毒なことである。
しかもリチャード氏は『独立党員諸君、7月4日(木)千葉に集まってください。』の記事で、ネットの中から一歩踏み出し、生活の党の議員を応援するつもりである事を表明している。

あまりかけてあげられる言葉はないが、せめていうなら「小沢逃げてー!」である。

 

……以上が当方の『12・16不正選挙』の紹介。
ここ2作の出来には非常に不満があったのだが、それを吹き飛ばしてくれる怪作に仕上がっている。
トンデモ本としての評価は★4つはつけたい。

これだったら、来年のトンデモ本大賞に候補作としてノミネートされてもおかしくないのではないだろうか。